新しいアイデア

 

「また自分の案が通らなかった・・・。」

 

こんなことを思っている方はいらっしゃるでしょうか。

 

会社で働いていると、自分では一生懸命考えたつもりの企画やアイデアが、先輩や上司にあっさりと却下されてしまうことがあります。

 

自分では、かつてないほど画期的なアイデアだと思って意気揚々と提案したのに、会議で過半数の賛成を得られなかったために採用されない、ということもあります。

 

新しいことをしようとする人は、他人から求められなくても、自分で率先して考える人が多いように思います。

 

「こうしたら、もっといい製品になるのではないか」

 

「こっちの仕組みにしたほうが、社内の仕事は円滑に進むのではないか」

 

誰に言われなくても、「よりよいもの」を目指して、あれやこれやとつい考えてしまう。

 

きっと、そういう人が、時代を作る製品やサービスを生み出すのでしょう。

 

ただ、会社の中では、それを実際にやろうとした場合、たいていは、先輩や上司の賛成が必要になります。

 

そこで、個別に相談したり、会議の場で意見を求めたりすると、そのアイデアが受け入れられずに終わることも、よくあるのではないでしょうか。

 

「どうしてこのアイデアの良さがわからないのか?」

 

「一度試してみて、それでダメならしょうがないけど、試すこともなく、勝手にダメとかいわないでほしい」

 

こんなことを思ってしまうこともありますよね。

 

そして、そんなことがあまりに続くと、自分のアイデアに自信がなくなってくることもあるのではないでしょうか。

 

「どうせ自分が考えたアイデアなんて、周りに受け入れられないし、考えるだけ無駄だから、これからは言われたことだけやっていこう。」

 

私も、10年間のサラリーマン生活の中で、「こうしたほうがよい」と思ったことは、なるべく提案してきたつもりです。

 

しかし、それらが採用に至った回数よりも、却下されたことのほうが、圧倒的に多かったような気がします。

 

自分としては、それをやれば、会社の利益になると思っての提案で、当然受け入れられるだろう、と思っていたのに・・・。

 

あまりに採用されないことが続くと、「これだけ立て続けに却下されるということは、自分には新しいことを考える力がないのだろう。そういうことに向いていないのだろう。今後は、言われたことだけ粛々とこなしていくことにしよう」などと思ってしまうこともありました。

 

 

「大ヒット」とは何か

 

そんなある日、ふと、「世の中で大ヒットする製品やサービスとは、どんなものなのだろう?」と考えたときがありました。

 

大ヒットした後には、それが私たちの生活に浸透し過ぎていて、それが売れたのは当然だと思えるようなもの。

 

それらは果たして、企画段階から、社内で積極的に先輩や上司の賛成を得ることができていたのだろうか?こんなことを思うようになりました。

 

そもそも、「大ヒット」する、とは、一体どのくらい世の中で受け入れられたものをいうのでしょうか?

 

例えば、本で考えてみます。

 

書店に行くと5万部から10万部売れた本には、「5万部突破!」とか、「祝!10万部」とかいうポップが付いている本があったりします。

 

もしも100万部なんて売れたら、つまり、ミリオンセラーになったら、テレビ、新聞、雑誌等、様々なメディアでその本が取り上げられます。それに関連する本も出されたり、特集が組まれたりもします。それだけ、ミリオンセラーとは、ものすごいものなのだとわかります。これはまさに大ヒットと言ってよいでしょう。

 

しかし、100万部ということは、日本の人口が13000万人だということを考えると、その本を買ったのは、13000万分の100万人、つまり、130人に一人、ということになります。

 

130人に一人の人に受け入れられたものを、「大ヒット」と呼ぶわけです。

 

過半数の賛成には程遠いですよね。

 

実際、私はミリオンセラーになった本を買ったことが何度かあります。そのとき私は、自分の周りの人のほとんどは、その本を読んでいるのだろう、と思っていました。

 

そこで、会社の人数人と飲みに行ったときに、その本の話をしたのですが、その本を読んでいたのは、私だけでした。

 

それも大しておかしなことではないでしょう。ミリオンセラーといっても、130人に一人しか買っていないのだから、数人の会社の同僚の中で、自分しかそれを買っていないとしても、当然と言えば当然です。

 

しかしその時は、「ミリオンセラー=誰もが読んでいる本」、と思っていたので、どうして自分しか読んでいないのか?と大まじめに驚いてしまいました。

 

これは、映画でも、音楽でも、同じことが言えます。

 

どんなに世間で大ヒットしたとされているものでも、自分の周りにいる半分以上の人が実際にそれを見に行ったとか、購入した、といったことは、まずありません。大ヒットしたとされる番組も、5人に一人程度しかみていないものなのです。

 

 

「今日却下されたアイデア」

 

このことに気づいてから、私は、自分のアイデアが却下されても、さほど気にならなくなりました。自分のアイデアが先輩や上司といった、わずか数人に採用されなかったからと言って、そのアイデアが全くダメなアイデアだったということにはならないと思えるようになったからです。

 

会社の中では、アイデアそのものよりも、アイデアの通し方が大事になる場面が多いように思います。誰の了解を事前に得て置くべきか、といったことも大事でしょうし、また、先輩や上司が了解しやすいような説明の仕方というスキルも大事だと思います。

 

ただ、一番大事なのは、やはり、「こうしたら、よりよくなるはず!」と思って新しいことを考えようとすることだと思います。そういう気持ちがない限り、そもそも新しいことを思いつき、かつそれを実行に移そうなんて思うことはできないからです。

 

会社の中で何度も自分の案が却下されると、その「新しいこと、よりよくなるようなアイデア」を考える気力を削がれることがあると思います。不必要な誹謗を受けることもあるかもしれません。

 

しかし、ミリオンセラーですら、世間の130人に一人に受け入れられたにすぎないのです。自分の周りの数人に賛成してもらえなかったくらいで、自分のアイデアが間違っていたとか、大したことないとか、あるいは、自分には新しいことを考える力なんてないんだ、なんて思わなくてよいのではないでしょうか。

 

 

 

今日、あっさり却下されたあなたのアイデアは、もしかしたら、ミリオンセラー級の大ヒットの種かもしれません。