00183 | エルム ジキル オフィシャルブログ「暴君ジキルによるシリアルキラーの作り方講座」Powered by Ameba

00183

頭が割れるように痛い。

随分と長いこと眠っていたようだ。

今はいったい何時だ?

デジタル時計を手探りで探した。

見当たらない。それも当然か。

よくよく考えれば後頭部に何時もの枕の感触もなければ、

ブランケットすらかけていない。

つまりは布団ではない場所で僕は寝ていると言う事だ。

深酔いする程、飲んだのだろうか?

そもそもここは自分の家なのだろうか?

床は冷たいコンクリートの感触。

だが決して屋外ではない。

自分の部屋を頭の中で描いてみるがその様な場所は思い当たらない。

一体どこで寝ているんだ?

ポケットに手をやると携帯すらもないじゃないか。

どこかで落としたか?

まいったな…この前、機種変してスマートフォンにしたばかりだ。

操作にやっと慣れてきたとは言えバックアップも取っていない。

まあ最悪の場合は前の携帯から電話帳を移せば良いか?

嗚呼、面倒臭いし、このまま二度寝をしたい…

なんてのん気な事を言ってる場合ではない。

一生懸命に脳をフル回転させたいところなのだが

いかんせん気だるさが打ち勝ってしまっている。

確か昨日は金曜だったはず。

そこまでは思い出せた。

次の日が休みだと言う事もあって飲みに行った事も思い出せた。

だが…誰と?誰と飲みに行ったのかと言う記憶が欠落している。

まあ今は誰と飲みに行った事よりもスマートフォンを探して

家に帰って寝る。それが先決だ。

いくら初夏とは言えども薄ら寒い。

このままでは風邪を引きかねない。

とは言っても生まれてこの方ほとんど風邪を引いた事もなければ

インフルエンザにかかった事もなく小学校から皆勤賞だった事が自慢なのである。

おっと…自慢話しをしている場合じゃないか…。

しかしさっきから喉がからからに渇いている。

とにかくここがどこだかわからないけど外に出て自動販売機…

そんな事を考えながらもまだ僕は動けずにいた。

よほど飲んだのだろうか?

しかし記憶にあるのは親しいはずの誰かと乾杯を交わした瞬間のぼやけた映像だけである。

本当に飲んだのだろうか?

それすらも怪しい。

しかしこの状況を考えると飲み過ぎてどこかに屋内に侵入して勝手に寝ていた事になる。

つまりは刑法130条前段に規定される住居不法侵入罪に問われる可能性がある…

それは社会人としてはダメージが大きい…。

とにかく体を動かそう。

知らない天井ばかりを見つめていた僕はこの瞬間はじめて重い腰をあげたのである。

暗闇…そうここは月明かりすらも入ってこない暗闇である。

きっと深海ってこんな風に真っ暗なのかな?

なんて事を考えながら辺りを見回していた。

少しづつ暗闇に目が慣れてきた。

この現象は暗順応って言うんだ。

なんて知識をひけらかしている辺りまだどこか心に余裕はあるのだろう。

さてさてスマートフォンは落ちていないかな?

足元に障害物がないか靴で探ろうとした時である…

衝撃の事実…靴を履いていないのである。

これには驚いた。いくら酒に飲まれたかも知れないとは言え

靴を脱ぐなんて言う経験はなかった。

あまりにも酔い過ぎて自分の家を間違えてなのか

屋外で服を脱いで寝てしまってるサラリーマンを見た事はあるが

まさか僕はこの屋内に入るときに靴でも脱いであがったのだろうか?

ある意味で礼儀正しいやつだなと自嘲していたが…

待てよ…入り口はどこにあるのだろうか?

窓すらも見当たらないこの屋内。

先ほどは初夏とは言えども薄ら寒いと形容したのだが…

どこかジメっとした空気…

それも湿気とは違う…異質とでも言えば良いのだろうか?

この部屋全体に行き渡るジメっとした空気に僕は気がついた

よくよく考えてみるとこの部屋の広さってどの位なのだろうか?

暗闇に暗順応した僕の視界に一切壁と言う物が見当たらないのである。

まいったな…ここは廃墟か何かか?

段々と冷静を取り戻してきた僕は服の汚れが気になってきた…

とは言っても服の汚れが鮮明にわかるほど暗順応はしていない。

とにかく出口を探して自動販売機でミネラルウォーターと…

出るときに靴があれば靴を…

そしてコンビニでライトを買ってきてこの屋内でスマートフォンを捜索する事が今やるべき事である。

心の中では、このジメっとした空気が不気味で外に出たらもう直ぐにでも家に帰ってシャワーを浴びて眠りたいところである。

さて出口、出口と…探している間に壁を見つける事が出来た。

このまま壁伝いに行けばどこかドアにぶち当たるだろう。

運がよければ窓を見つける事が出来るかもしれない。

今はただカーテンに隠れて探せないだけだ…きっと。

そんな事を考えながら壁伝いに歩いていく。

まだ足元くらいしか見えない僕の視界に映るところどころにある

障害物と思わしきものを避けながら進んでいくと

その時である…

暗闇の静寂を切り裂いて成人男性の声が聞こえてきた。

その声の主ははっきりと僕を認識した上で僕に話しかけてきているのである。

一体何時からここに?もしかして随分前からここにいたのだろうか?

今まで声をかけてこなかった理由は?もしかして見張られていた?

そして「新入り…?」

この僕が…新入り…と言うのはどう言う事なのだろうか?

まさかホームレスの根城に入り込んでしまいお仲間とでも思われているのであろうか?

「あの…すみませんけど僕は新入りではありません…。ここに長居する気もないですし…」

「いや、お前さんは新入りで間違いない…あっはっはっはっは。」

気でもふれているのだろうか?ジメっとした空気が不気味だと思っていたが、この男の出現のせいで更に不気味さが増してきている。

もう出来れば今すぐにでも飛び出してしまいたい。

そうだ、この男ならもしかしたらスマートフォンの事を知っているかもしれない…聞いてみるか。

「あの…スマートフォンを落としてしまったんですけど…この辺りで見かけませんでした?」

「さあね?俺が知ってるのはお前さんが新入りって言う事だけだ。」

「あのですね…僕は新入りになったつもりはありませんし、スマートフォンさえ見つければ長居せずに帰りますから…それにお前さんじゃなくて僕には名前が…」

あれ?おかしい…おかしい…

僕の名前は?思い出せない…どうして?

自分の名前を思い出せない事のショックと言うのは体験した者にしかわからないだろう

自分が誰なのかわからない恐怖

自分は自分なはずのにまるで他人の様で本当にこの体は自分なのだろうか?そんな事を考えてしまう

鏡に向かって「お前は誰だ?」と問いかけ続けると精神崩壊するなんて言うけど…こんな感じなのだろうか

「おい…お前さん…お前さん…」

なんてデリカシーのないやつだ

こちとら自分の名前すら思い出せなくて発狂しそうだって言うのに…

「おい…新入り…お前さん自分の名前がわからないんだろ?」

え?…なんでこいつ俺がいま自分の名前を思い出せずにいることがわかるんだ?

「なんでこいつ俺がいま自分の名前を思い出せずにいることがわかるんだ?って顔してるな…」

「…ふぇ?」

驚きのあまりにまともな言葉すら発せなかった

「なんでかって?簡単な事さ…お前さんじゃなくて僕には名前が…で止まったらその位の想像は容易だ…こんなの警察や探偵じゃなくたって気付く事だ」

確かにこいつの言う通りかも知れない…いま冷静さを欠いてどうするんだ…それにこいつが以前よりここにいるのなら出口だってわかるはず…

「あの…スマートフォンはもう良いんで…出口ってどこにあるか教えてもらえませんか?」

「出口…嗚呼…すぐそこにあるぞ…だが」

後の言葉を聞く前に僕はお礼を言って一目散に出口と思われる方向に向かった

あった!ドアノブのような物を掴んだ僕は一気に回した

しかし右に回せど左に回せど空回るばかりである。

閉錠でもしたのだろうか?

僕が閉錠したとは思えないが…

あの男が後から入ってきて閉めたのか?なんのため?

そうなるとホームレスではなくこの部屋の所有者とでも言うのだろうか?

「あの、すいません…閉錠されちゃってるんですけど…鍵とかありますか?それかどこかで開閉する仕掛けでもあるんですか?」

「お前さん…だから新人って言っただろう?」

「はい?」

焦りが苛立ちに変わってきているが我慢しないといけない…

「あの…鍵とか開閉する何か仕掛けの様な物ってあるんですか?」

「そんなのないね…あっはっはっはっはっは。」

こんな男に聞いたのがそもそもの間違いだっただろうか?

「いやいやまたご冗談を…だって鍵もなくて開閉する仕掛けもないならどうやって出入りするんですか?」

「だからお前さんは新入りなんだって言ってるだろ?あっはっはっは。出入りなんてはなから出来ないんだよ…」

さっきからなんなんだろうか?新入りだから出入りが出来ない?先ず僕はこんなところに新入りとして入った覚えがない。

さっさと出てミネラルウォーターを…いやもう飲み物なんてどうでも良い…ここからとにかく出たい。

「あれですか?貴方はここのボスか何かで勝手にねぐらにはいってきた僕が気に入らないから、からかってやろう…そう言う魂胆ですね?先ほどから言ってますが僕はスマートフォンが見つかれば直ぐにでも出て行きますから…お邪魔してすいません。ですからドアの開け方を教えていただけませんかね?」

苛立ちを抑えながらも丁寧に伝えた。それも全てこの部屋から脱出するためである。

「お前さんも懲りないねぇ…同じ質問を何回もするなんて…しつこい男は女の子に嫌われるぞ…あっはっはっはっはっは」

「いい加減にして下さいよ!こっちがさっきから下手に出てるからってなんだあんたは!ドアの開け方さえ教えてくれればすぐ出てくって言ってんでしょうが!!!」

もう僕の苛立ちは限界だった。この男の人を食ったような態度も僕の苛立ちを加速させる原因だ。

「おい新入り…立場をわきまえな…お前さんはここから自分の意思で出入りする事なんて出来ないし出来たとしても、その時は死を意味する。」

…死?何を言ってるんだ?この男の言ってる意味がわからない。狂っているのか?そうだ。狂っているんだ。きっと何か心を病んでしまってる可哀想な人なんだ。

「大丈夫ですよ。僕は死ぬ事なんて怖くないですから。じゃ、とにかくドアの開け方教えてくれます?」

とりあえずこいつの遊びに付き合ってやるふりをしてドアの開け方をなんとしてでも聞き出してやる。

「お前さん死ぬのが怖くないと?そりゃ大したもんだ。だけどな。人間いざ死ぬってなるとな…恐怖におののくんだよ…泣いて叫んですがるんだ…俺は何人も見てきた…死ぬ前の人間を…だから断言する…お前は死を前に後悔する。」

やはり頭が少しイカれているのか…妄言を吐き始めた。常軌を逸してるとしか思えない。

「じゃあ僕がドアの向こうに行って死ななかったらどうしますか?」

「それはお前さんの好きにすれば良いさ…ただし出れたとしても…その瞬間に…頭が吹き飛ぶけどな」

SFでも見過ぎたのだろうか…?もはや荒唐無稽の極みである

「お前さん気付いてないようだから教えてやろう…先ずそのヘッドギアと首についているやつ…その二つがどう言う構造になってるかまでは知らないがニコイチだ…」

ヘッドギア?首についてるやつ?僕は頭に手を延ばした…確かに頭には何かヘッドギアの様なものがついてるし、そこからチューブの様な物が出ていて一部は首輪みたいなのに繋がっている…一体なんだこれは?

「俺が思うに脳波だったりを計測してるんじゃないかと思うぞ…ちなみにドアの向こうに行ったやつは何人かいるが勝手に飛び出したやつはみんな廊下で首なし死体になってたぜ…あっはっはっはっはっは」

この男が言ってる事は本当なのだろうか?

「あんたがこの変なヘッドギア?と首輪みたいなのつけたのか?」

「いや、それは違うね。」

いまこうして話していて気がついたが先ほどからこの男は真面目に話しているだけでは?勝手に僕が狂ってると決め付けただけで…そうなると…もしや

「あの…じゃあこの部屋から生きて抜け出すにはどうしたら…?」

「それは俺にもわからないしわかってたら俺も…そしてここにいるみんなもそうしているだろうな」

…みんな?他にもいるって言う事なのか…!?しかし辺りを見回しても見当たらない…これだけ長い事この部屋にいると言うのにここまで暗順応しないなんて…やはりこの部屋は何かがおかしい…おかしすぎる

「お前さん…目が覚めた時に頭が痛かっただろう?それはそのヘッドギアをつける為の外科手術の麻酔が切れたからさ…それに記憶障害もあっただろう?ここにいる全員が体験していることだからな」

え?外科手術?何を言ってるんだ?

「無理に取ろうとしない事だな…お前さんは知らないから無理はないが昔そのヘッドギアを取るために必死に痛みに耐えて取ったやつがいた…だが結果は無残なもんだった…直接脳にチューブがついてるもんで…そいつのヘッドギアが取れた瞬間に頭から大量の血を吹き出して死んじまったぜ…」

絶句である…無理矢理この部屋を出れたとしてもヘッドギアと首のやつが爆破して死ぬ…この部屋の中で取ろうにも脳に直接ついているだなんて…どうしたら良いのだろうか?

「あの…ちょっとここから逃げ出す事は置いておいて…みなさんは食事とか睡眠とかどうしているんですか?」

「食事ならドアの向こうのやつが運んでくれるよ。睡眠に関しては夜になると、ござとタオルケットがくる。それで寝る。お前さんもだから今日からその生活だ。」

「その生活を一体いつまで?」

「さあね。そんなの俺達が知ったこっちゃない。ドアの向こうの神様が決めることじゃねーかな。あっはっはっはっは。」

完全に困った…でも自分の名前も覚えてない上にヘッドギアに首輪がついている状態では外での生活は…いや諦めたらだめだ。どんな時でも前向きに考えろ。

「あの…ドアが開く時って何か決まった時間帯とかあるんですか?」

「時間に関してはここにいる全員が何時なのかもわからない。携帯とかの類は全て多分だけど没収されている。ただ定期的にこの中から誰かが連れて行かれる。そいつがどこに連れて行かれているのかわからない。確実なのは誰一人として帰ってきてないってこと。」

…なるほど…。話しを聞く限りではその連れて行かれる時にドアの向こうのやつの隙間を縫って脱走したやつが何人がいるって事だな。しかし何人かいるのにドアの向こうのやつって言うのは逃げ出さないように何か工夫をしてるとも思えない。先ず誰か脱走して困るようなら次に生かすはず。だがそれをしないって事はドアの向こうは更にドアがあって閉錠されているか…もしくはドアを出た瞬間に爆発する事を知っているから、あえて止めないのか…どちらにせよドアの向こうの人って言うのはここにいる僕を含めての生き死にには興味を持っていないって事か。ただそれでも生きて出られると困る何かがあって爆死させるのだろうか?とにかく連れて行かれたその先が一体どうなっているのか…。

ガチャン…

ドアが開く音…やはりあの男の言った通りでこちらから開閉する仕掛けではなく外から閉錠されているようだ…一体どんなやつなんだ…ドアの向こうの人って言うのは…良く見えない…真っ白い…防護服の様な物を着ているように見える…

「番号ゼロサンロクナナ…行くぞ」

「了解…じゃお前さん…俺は一足先にドアの向こうの世界とやらに行ってくるわ。きっと素晴らしい世界なんだろうな。あっはっはっはっはっは。良いか?俺は後悔しねー絶対に!絶対にな!ひゃはははははは!」

やっぱり気が狂っているのか?いやきっと平常心を保つので一杯なんだろう…正直なところ憐れである。しかしここは良く観察しておかないといけない。

白い防護服を着たドアの向こうの人が何やら首輪の鍵らしき物を取り出した。これは…もしかしたら鍵を他にも持ってるんじゃ?咄嗟の判断。そして脳が考えると同時に僕の体は躍動していた。体当たりをして馬乗りになり必死に殴った。とにかく気絶させるか戦意を失わせないと。

「ごふっ」

その言葉とともに白い防護服を着たドアの向こうの人は動かなくなった。ヘルメットのような物越しに頭を地面に何度も叩き付けたから軽い脳震盪を起こしたのだろう。僕には記憶がほとんどないが咄嗟にこれだけ動いて相手をうちのめすなんて…結構やんちゃだったのだろうか。

「お前さん…なかなか良い腕っ節じゃん?でも…お前の分の首の鍵を持っているかはわからないぜ…前にもこう言う事が何度か…」

「あった!なんか鍵らしいものが!」

「珍しい事もあるもんだ…大体連れて行くやつの分の鍵しか持ってないのに今日に限って…」

なるほど合点がいった。普通に考えれば白い防護服を着たドアの向こうの人のやつを倒してみんなで出れば良いのに、ここにいる見えないみんなって言うのは襲い掛かる気配すらなかったし、この男だってそうだった。

「お前の分の鍵だったか?どうだ?入りそうか?」

「すいません。ちょっと鍵穴が見えないんで、ここであってますか?」

「そうだな…そこが鍵穴だな。」

「ガチャン…開いた…」

「さて新入りのお前さん…お前さんはここで待ってても良いんだが俺と行くか?この先に危険が待ち受けてるかも知れないが」

「行きますよ。僕はこんなところにいたくないですよ。」

「じゃあ俺はここにいるみんなに別れを告げてくるから待ってろよ」

そう言うと男は何人かに別れの言葉を伝えて行った。しかしそれはまるで男の独り言のようだった。一体誰に話しかけているとでも言うのか。やはりこの男の妄言なのではないだろうか?そんな事を考えながら目をこらして良く見ると寝そべっている人影がちらほらと見えた。確かに人らしき者がいる。だけど全員疲れているのか?みんなまったく動く気配どころか声を発する様子がない。近付いてみると…

「…っ。」

声を失った。死体だった。そう。彼が言ってたみんなは全員死体だった。

「よし…行くか!」

この人は一体何時からこの死体達と暮らしていたのだろう?この死体達は一体何故死んだんだろう?本当にこの男と一緒に行っても良いのか?そんな事を考えたが僕には行くと言う選択肢しかなかった。

「あいつらの事は後回しだ…とにかく、お前はこの防護服を着ろ」

言われるがままに僕はドアの向こうの人の白い防護服を脱がして着てみた。とにかく今は急ごう。もしかしたら不審に思われて他のやつが来るかも知れない。

「さっきの死体…まあ話せば長くなる。だから無事に出れたときにでも教えてやる。俺はお前さんの事を知らないし、お前さんも俺の事は知らない。でも最低限信じて協力しないとここからは出れない。」

僕は無言で頷いた。確かに言う通りなのだから。例えばこいつがさっきの死体達の直接の原因だとしても…そう殺人犯であったとしても、ここでは逃げ出す事が最優先なのだから。

ドアを開けた。爆発はしなかった。やはりあの鍵が重要なのだろう。廊下は左右に分かれている。薄暗い明かりだけを頼りに左右を選ばないと行けない…。

「どうする?」

「お前さん…どうするもなにも行動学の見地からも人は迷ったり未知の道を選ぶ時には無意識に左を選択するケースが多いらしいから右を選んだ方が良いに決まってるさ」

「博識なんですね…」

「お前さん…今のは漫画の受け入れだよ。本当はドアの向こうのやつらが毎回左側から歩いてくる。って事は可能性的に左にはドアの向こうの人がわんさかいる可能性が大きいって事だよ。」

「なるほど…」

「急ぐぞ…」

またしても無言で頷き数10m程歩いたところだろうか…ドアがあった。僕は防護服のポケットを探した。鍵が幾つかついてる鉄の輪を見つけた。何個か試したところやっとドアが開いた。ドアを開けて走り出そうとすると…眩いくらいの光に包まれた。意識が遠のいていく…。

目が覚めると僕はベッドにいた。まさか夢落ち…ではなさそうだ…。頭にはまだヘッドギアがついたままなのが確認できたからだ。腕には点滴がつけられている。病院?どうやら僕は病院にいるようだ。

「お目覚めかね?」