00153 | エルム ジキル オフィシャルブログ「暴君ジキルによるシリアルキラーの作り方講座」Powered by Ameba

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マッドハッター症候群

彼に話しは通じない頭のネジが外れた
年がら年中お祭り騒ぎの
気が狂ってる帽子屋with三月ウサギとヤマネ
彼は話しを聞いてない訳ではなくて何時でも
直ぐに忘れてしまう
自分の発言すらも覚えてないので
噛み合わず成立しない会話

「書き物机とカラス…なぜ似てるのでしょう?」
彼の口癖で答えを教えてはくれません
※本人すら覚えていない様です…

繰り返す同じ0~59秒間
チクタクチクタク秒針だけが動いてた
「忘れる機能は永久の犠牲なんだ」
「蓄積されずに消えてく
メモリーって悲しくないの?」

少しばかり黙ると
彼は大事な何かを思い出せそうな顔してたのだけど
時間が経つと直ぐに忘れてしまい元の木阿弥
不意に大声あげて彼は
「歓迎会の準備をしなくちゃ」と言うから
「誰の?」と聞く
「あの子が好きな濃い目の紅茶と
お茶請けはショートブレッド」
※どうやら忘れない様にメモをしているらしい

「書き物机とカラス…なぜ似てるのでしょう?」
何故か悲しそうな彼のクチの動き
「あ・い・う」の形

彼の時計はもう二度と
6時から進む事はないそうです
静かな空間で秒針だけが
うるさい位に響いていました
「忘れる事は悲しいけれど
君に会う為には仕方がなかったんだ
でも願いは叶った…
さあ君の手で僕の時計を止めておくれ」

さよなら時計を止めた帽子屋さん
出会ったばかりで悲しいはずないのに
何故か涙が止まらずに溢れてきて
チクチク胸が痛くてなってきて苦しいよ

彼の遺品から見つかったメモ帳
日付は100年以上前だった
「約束したから死なずに待ってるよ
生まれ変わった君に会う為…。」

私は全てを思い出して後悔しました
動かなくなった彼を抱き締めて
今日も子守唄を歌うのですが
記憶が0~59秒しか持たないので
いま目の前にいる貴方が誰なのか全く解りません。