湖水地方 the Lake District のあるカンブリア沿岸の港町、ホワイトヘイブン Whitehaven、続きです。

 

 

出発前に行き先について少し調べますが、原則として細かい予定を立てたり写真をたくさん見るのは避け、行き当たりばったりが私たちの旅行のモットーです。

 

ホワイトヘイブンは17、18世紀英国の最も重要な貿易港のひとつで、18世紀の街並みが残っていること、観光地として名高い町ではないのも少しは知っていました。

 

 

 

 

 

行ってみて、びっくり!

 

 

18世紀のジョージアン様式の建築物の残り方がハンパではなくものすごかったのです!

あまりの眼福に涙ぐむところでした。

 

 

…と言っても、港に続くハイストリート(目抜き通りである商業地)に足を踏み入れて最初の店舗がまさかの空き家。

しかも2,022年に倒産した「Top Shop」の看板がかかった、荒れ放題の店内が丸見えでした。

 

閉店以来、4年間も空き家のまま…

 

寂れかかった町のようでした。

 

保存指定建築なので取り壊せない空き家教会☟売りに出されています。

 
 

ものすごい密度のジョージアン建築群です。

 

 

同じくジョージアン様式の都市計画で有名なバース、ロンドンのように高さもデザインも建材も同じ建物がズラーっと並ぶ統一されて整った街並みとは大違いでデコボコ不揃いでかわいい感じです。

 

棟続きの住宅が家ごとに塗り分けられています!

 

 

ホテルに帰ったあと検索してみましたが、観光サイトではこの超絶価値のある「18世紀の街並み」についてほとんど触れられていません。

 

私ほど建築物に熱狂しない夫でさえ、「どうなっているんだ、この町は?」といぶかし気でした。

 

 

この、ものすごく価値のある街並みを見物に来る人はあまりいないようです。

街並みで「町おこし」の気概もあまりなさそうです。

 

ああ、もったいない。

 

 

 

grid-iron street 、あるいは grid-layout とよばれる格子状に道路が交差する整然とした都市計画を、1,680年に全ヨーロッパで最初に実現した都市(規模的には「町」ですが)のひとつだそうです!

 

 

その完成度も、全ヨーロッパでもピカイチ!

 

知る人ぞ知る事実、ホワイトヘイブンの「都市計画」がアメリカのニューヨークに影響を与えたそうです!

アメリカの東海岸の数多くの町がそれに続きました!

 

 

保存状態も高水準です。

 

 

ただし、1,960年代まではけっこうな数の17,18世紀の建造物が取り壊されています。

 

 

ストップをかけたのは、考古歴史学協会 the Council for British Archeology and Histry による1,964年の、栄えある Gem Town(至宝の町)認定。

以後、好き勝手な取り壊しや開発はできなくなりました。

 

全英国でその称号を持つ町はたったの51です。

国際的に名高い観光地では バース、エディンバラ、オックスフォード、ケインブリッジ、ソールスベリ、ヨーク が含まれています。

 

 
港が寂れ、町がしょぼたれてきた19世紀の中頃までには町ぐるみ取り壊して「モダンな」街並みに改造する経済力を失っていたことが街並み保存につながり、幸いだったようです。
 
そのかわり、開発に規制がかかるまでの19世紀、20世紀初頭や、アールデコ(1,920~30年代)などの建築様式がジョージアン様式の街並みににポツリポツリと混ざっていいかんじに調和しています。
 
 
ホワイトヘイブンは「Hidden Gem (秘宝)」として、愛好家に知られるようです。
 
 
 
商店街がオンラインショップに押されて苦戦しているのはどこの町でも同じです。
それでも、集中的に古い建築物が残るエリアがあれば街並みを生かした町おこしを計画する町が多いはずです。
 
小規模な景観保存地域がある、ここストックポートでは人よせにかなり力を入れています。
 
古い建物を修復し1,960、70年代の中途半端に古くてモダンな建物を取り壊し、19世紀風の嘘つき建築を新築して古い街並みを整えています。
 
ビンテージの古着や家具、北欧雑貨を扱うオシャレな店や、食材やインテリアにこだわるカフェなどを誘致して、地元やマンチェスターなど近隣のおしゃれな人たちを惹きつける街づくりに「それなりに」成功しています。
 
観光地には、地域の名産や記念に買って帰りたくなるインテリア小物やアクセサリーなどを売る「ギフト・ショップ」が必ずあるものです。
 
ホワイトヘイブンにはこういった店も個性的なカフェも私が見るかぎり全くありませんでした。
 
 
オンラインショップと競合しないネイルサロンや理/美容室、チャリティ・ショップは他の町同様、健闘しているようです。
ベープ・ショップ(電子タバコ屋)もいくつかありました。
 
 
空き店舗がずらりの哀愁たっぷりの美しい裏通り…
 
…の夫が興味を持ったモデル・ショップ(プラモデル屋、☟の右端)に入りました。
 
古い絨毯の匂いが充満する店内には中途半端な品ぞろえの手芸品売り場もあり、かわいいリボンを2本、1mずつ買いました。
 
日本人が大好きな「ガリバー旅行記」…
 
の作者、ジョナサン・スイフトがホワイトヘイブンに住んでいたとか。
 
壁画が面した小さな空き地にはベンチが並び、ちょっとした憩いの広場のつもりなのに、市の指定の大きなゴミ箱置き場になっていました。
 
観光地として頑張る気力がない?
 
 
Gem Town称号の取得以後、実はかなり観光地化を頑張った時期があったそうです。
 
 
取り壊しや修復に関する規制は非常に厳しく、公的な修復基金も投入されているので、経済効果のあるなしにかかわらず今でも街並み保存には本気で取り組まざるを得ないようです。
 
Gem Town 認定以後、(不正直なストックポートのような)ニセ時代建築を建てることも規制されています。
 
 
貿易港も、1,980年代に炭鉱も閉鎖したホワイトヘイブンの主な産業は15㎞離れた、柏崎原子力発電所に次いで世界第二位の規模のセラフィルド原子力発電所 Sellafield Nuclear Sitesです。
 
住人の多くが雇用されているというセラフィルドは2,110年に稼働停止予定です。
 
同時期に全英国の原子力発電所が廃炉になるはずですが、安全に閉鎖するには100年計画の慎重さが求められます。
廃炉のためだけに大勢の人々を雇用し続けています。
 
合衆国初代大統領のジョージ・ワシントンのお祖母さんが洗礼を受けた教会だそうです☟