マンチェスターで…

 

☝1960年建造の美しいモダン建築の駅舎で知られるマンチェスター・オックスフォード・ロード駅前から撮ったマンチェスターの風景です

以下、オックスフォード・ロードから、HOME 近辺の写真を散りばめてみました。

 

日本で大評判の映画「国宝」を見てきました!

 

 

英語題もズバリ、Kokuho。

 

 

映画館、ギャラリー、小劇場、イベント施設にカフェ・バー、レストランが入った複合アート/文化施設、HOME で観ました。

 

 

 

HOME の前に立つドイツの社会思想家、エンゲルスのコンクリート像☟

 

HOMEの前身、2,015年に閉館された複合アート施設、コーナー・ハウスの映画館部分です☟

オックスフォード・ロード駅の下に位置するこの1,920年代の映画館の建物の取り壊しを阻止しようと、地元ファンががんばっています。

留学時代、毎週末映画を見ていた涙が出るほど懐かしい思い出のスポットです。

 

 

日本の伝統芸能に興味がない夫が、ひさしぶりの映画館デートに大乗り気で付き合ってくれました。

 

私は日本の友達が送ってくれた文庫本の原作をずいぶん前に読んでいました。

長い原作小説、歌舞伎がテーマで上映時間が3時間、長くて重い映画と決めつけて覚悟して鑑賞にのぞみました。

 

しかもHOMEで上映されるということはすでに、一般の商業ベースでは採算が取りにくい「アートハウス系」映画であるというイメージを強めています。

 

が、思いのほか娯楽性が高く、簡潔に上手くまとまっていましたし美しい映像とわかりやすいストーリーラインで時間を忘れ楽しめました。

 

 

 

 

夫が「歌舞伎の素晴らしさを理解した」と欧米人のお手本的感想を述べました。

嬉しかったです!

 

劇中劇「曾根崎心中」の決めゼリフらしい「この世の名残、夜も名残り…」(の英訳)を暗記した夫は、歌舞伎のセリフがシェークスピアのように慣用句として日常会話に引用されることはあるのかと聞いてきました。

 

夫は歌舞伎を見る人は日本にもあまりいないことは承知です。

 

英国でも、演劇に造詣が深いとか英文学専攻とかならいざ知らず、シェークスピアのお芝居を通しで観たり戯曲を読み通す人はそれほどいないはずです。

それでも、「終わりよければすべてよし All's well that ends well 」のような慣用句や、教養をひけらかせる名セリフを引用

する機会は山ほどあり、国民的劇作家、ウィリアム・シェークスピアが英語圏の文化に与えた影響ははかり知れません。

 

 

オックスフォード・ロード駅の木材のパネルを多用した美しい形態の駅舎☟

 

歌舞伎も、そんなDNA レベルで日本人の民族の文化に深く根差した影響力があると「国宝」を観て思ったようです。

 

私が知らないだけかもしれませんが、一般人にとって歌舞伎文化ってそんなに現代日本の日常生活に浸透していませんよね?

 

セリフの英訳とは別に、丁寧に表示されるあらすじや解説の英語字幕が舞台シーンごとに出てきました。

日本人のくせに歌舞伎のストーリーを知らない私には重宝しました!

 

日本ではこの映画がきっかけで歌舞伎を見に行く人が増えたそうですね。

 

 

 

日本の誇るべき伝統文化が主題の日本映画が「海外で絶賛」されているという日本のメディアの報道を聞くと嬉しい気持ちは抑えきれませんが…

 

実は、日本で評判がバツグンに高かったわりには、英国での一般ウケは(今のところ)今ひとつのように思えます。

日本で日本人が思っているほど国外での(少なくとも私がいる英国での)周知度は高くないはずです。

 

アート志向の一定の層などには強烈に高い支持を得ているのかもしれません。

そういう人たちの熱心な称賛の声は海外での関心が嬉しい日本人の耳に届きやすいのでしょう。

 

 

 

 

HOMEの、30席ほどの一番小さい上映施設で、私たちの他には観客が4人だけでした。

平日の上映は1日に2回。私が行ったその日は午後1回だけの上映でした。

 

 

日本人女性5人と連れだってロンドン郊外の映画館で鑑賞したというイングランド南部に住む日本人の友人も、ガラガラだったと教えてくれました。

週末にボランティアで会った、日本に2回行ったことがあるオタク文化通の英国人は映画の存在を知りませんでした。

 

 

 

週末は満員御礼かも、と思ったら、HOMEでは先週の週末前に終了していました。

たった2週間の公開でした。

 

ハリウッドの人気作からマイナーな外国語映画まで上映する、マンチェスター・シティセンターの複合スクリーン映画館を含め、現在「国宝」を上映しているのはイングランド北西部全域で、たったの3施設です。


 

 

アニメやロムコム(=ラブコメディ、Netflix で見られます)など日本のドラマが大好きで、求職中で家にいる娘に一緒に見ないか声をかけたのですが、「歌舞伎、上映時間3時間」にひるんだようで来ませんでした。

 

 

いかにも「アート系映画です」とでも言いたげな、赤い長襦袢姿で忽然と屋上に立つ主人公のイメージの英国版の「国宝」ポスター(2番目の写真参照)が独特だと思いませんか?

「国宝」は芸術性の高いエンターテイメント映画なのに!「カブキ、上映時間3時間」にひるむ「アート志向」ではない、ー般的な観客をびびらせる効果バツグンです。

 

なぜもっとずっと一般人ウケのする、華やかな舞台衣装の役者2人のイメージをポスターに使わなかったのかしら?

 

 

日本公開後、比較的すぐ公開されたフランスでは紙吹雪の舞う舞台の鷺娘の美しいイメージをポスターに使ったはずです。(その頃、私のインスタグラムになぜかフランス語の広告がたびたび入ってきていました)

 

 

 

 

世界中で 日本に興味を持つ人たちがかつてないほど増えています。

円安の今、日本に旅行する人も多いですし。

 

その人たちの興味の対象は、かつてはサムライ、ニンジャ、ショーグン、ゲイシャ、スキヤキその他だったのが、今ではマンガ、アニメ、メイド、ネコカフェ、ラーメン、マッチャー(抹茶シェイク)、等々、新たな一般人受けジャンルが加わり「日本好き」のすそ野が広がったのです。

インターネットやソーシャルメディアでとっつきやすいサブカルチャーやB級グルメの情報が簡単にアクセスできるようになった背景もありますものね。

 

でも昔も今も、伝統芸能や古典美術など文化的なジャンルに興味を持つ一般的な「日本好き」は少数派です。

 

日本人でも持て余す「禅」などについて話したがるみょうに造詣が深すぎる日本通はいつでも一定数いますが。