ひさしぶりに行ったネコの保護センター、 Stopford Cat Rescue Centre で私たちを出迎えたのは...

 

ショック!曇天の冬空にはためく英国旗、ユニオン・フラッグ!

 

8月以来、ユニオン・フラッグ(連合王国旗=英国旗)、白地に赤い十字のセント・ジョージス・クロス(イングランド国旗)をところかまわずあげまくる「国旗掲揚作戦 Operation Raise the Colours 」が、私のボランティア先にまで魔の手をのばしていたとは....!

 

 

愛国心から自国の旗を掲げる無邪気な行動に見えるこの「旗揚げ運動」の不穏な背景について書いたストックポート日報の記事です☟

 

 

「英国は英国人のもの、移民は出て行け」と言う、移民排斥を訴える国粋主義的な極右メッセージです。

 

表面上は「融合やグローバリゼーションが進む現在、国民としての誇りや国のアイデンティティを取り戻そう」という、おだやかな賛同しやすいメッセージを装っています。

 

電信柱などに揚がる(あるいは手すりなどに下がる)国旗が、国中いろいろな場所で目につきます。

 

 

戦勝記念日や、戴冠記念日など愛国的なお祝いの時に飾られるユニオン・フラッグや、サッカーの国際試合でおなじみのセント・ジョージス・クロスはしょっちゅう目にしてきましたが、今までぜーんぜん気になりませんでした。

 

むしろ、ほほ笑ましく思っていたぐらいです。

 

今回の「旗揚げ運動」の首謀者は、ネオナチを含む複数の極右団体、移民排斥運動、反イスラム主義の推進者です。

 

反イスラム主義団体の筆頭は、かつて「白人至上主義」をポリシーにあげていたため、さすがに法的に解散を迫られ便宜上「反イスラム」を名乗り始めたおそるべき人種差別団体、イングランド防衛同盟(EDL)も含まれます。

 

英国籍のない私ですら親しみを持っていた連合国旗とイングランド旗が、今では「英国は英国人のもの(移民来るな!)」の悲しい意味で使われているのです。

 

この「旗揚げ運動」以来、一般人が嬉々として挙げる英国旗やイングランド旗を見て英国人ではない私は居心地が悪くなります。

夫や、リベラルな左寄り思想の人が大多数の私の英国人の友人たちはハズカシい思いを表明しています。

 

 

 

ほがらかに「どういうつもりでこの旗を?」と問い詰めた夫に、強烈なネコ愛が私の心に沁みる、このネコ保護センターの運営女性(70代)は、

「けっきょくは私たち、みんな英国民よね、英国民が自分たちの旗をあげて何が悪いの?」

とにこやかに返答しました。

 

「あのー、私は英国民じゃないんだけど。それにこの旗は私の旗でもないし」

と言った私に

「じゃあ、あなたも自分の国の旗を持ってきてあげなさいよ!ね、いいアイデアでしょう?」と言った彼女は無邪気なのか、頭が悪いのか、はたまた、狡猾なのか...私には判断がつきかねました。

 

私は日の丸の旗を持ってきて揚げるつもりはありません!(持ってないし)

 

 

その人とはうまくやってきました。

今回も、日本の100円均一ショップで買ったネコの耳付きおちょこをお土産にあげたらとても喜んでくれました。

 

その日、夫と2人、ネコをかまうボランティアを楽しみました。

 

...仲良くしていた人と「政見」が違うってわかったら寂しいですね。

「政見」どころの話ではないかもしれません。

 

もちろん、その人が Raise the Colours の発起団体のひとつ EDLのような「白人至上主義者」ではないのは絶対にたしかです。

 

でも「英国人以外は出ていけ」と思っている確率が高いです。

 

 

そのキャンペーンの人たちにとっての英国人の定義も問題ですね、非白人の英国籍取得者も含むか否か...?

 

 

「旗揚げ」に反対の人たちの多くも、無差別に難民申請者をうけいれるのは無理があるとわかっています。

 

とてもたくさんいるという、観光ビザなどで入国して居続ける不法滞在者にはさすがに寛容ではいられません。

 

難民認定を受けたり、移民として市民権を得たりして合法的に定住している人の中にも、故国の価値観や過激な宗教観などを無理やり押し通そうとする人たちもいるようで、秩序ある民主主義国の英国社会で軋轢を生んでいます...

 

それでも、他文化への寛容さで異なる民族を融合させた社会が(ほぼ)実現している英国は、すべての人々にとって居心地のいい社会だったはずなのです。

 

今は、違う...

 

以下、写真はうちのネコ

 

移民問題で社会が分断しています!

 

「ブレクシット賛否」の時のように...

 

合衆国のトランプ大統領支持か嫌悪か、また日本の高市新首相を支持するか否か...も同様ですね。

うっかりしたことは言えません。

 

政見や信条が違う人たちとも仲良くすることは基本的に可能ですよね。

政見や信条の話題を避けておつきあいを続けることだってできるはずです。

お互い大人なのですし。

 

母ネコ、リヴィーは年のせいかたまに舌をのぞかせています

 

でも、堂々と政見や信条の違いを表明されたら、それはかなり難しくなります。

英国の「旗揚げ」はそれどころか、完全に特定の人々を敵に回す、不敵な宣戦布告行為ですっ!!

 

それ以後、2週間、ネコのボランティアには行っていません。

 

ユニオン・フラッグがはためいている所に行くのが気が滅入る...と言うより、雨ふりとか夫が寒いと愚痴ったり、師走でいろいろあるためでもあるのですが。

 

 

 

ネコには罪はない。

 

*連合国旗を「ユニオン・ジャック」と呼ぶのは誤りです。

「ユニオン・ジャック」は船舶に掲げられている時だけ使う、もともとは海軍で使った連合国旗の愛称だそうです。