6月も終わりに近づく頃、私は緊張しながら洋菓子店の前で待っていた。
冷たい雨の雫がいくつも携帯の画面を滑り落ち、拭いては鞄にしまうことを慌ただしく繰り返している。通知が来ない不安感は、画面に反射した曇り空に照らし出されていた。
場所を間違えたのだろうか?
手の感覚が薄れて来た時、待ち合わせしていた人物がやって来た。
その人物は「みんな合流しているみたいだ」と言って、スタスタと歩き、私を少し先の定食屋に連れて行く。
そこで、今回一緒に参加するメンバーを私に会わせた。男性5、6人だっただろうか。
メンバーは私を見た瞬間、唖然とした。
「えっ女性!?」
心臓を氷水に押し付けられる感覚がした。
完全アウェイの空気だ。
待ち合わせの例の人物も、メンバーを事前によく確認していなかったらしい。
その瞬間、私は戦場カメラマンばりの鋼メンタルを決め込むしかない、と心に言い聞かせた。
無になろう。或いは生々しい事実だけを伝えるルポライターになりきろう、などと目まぐるしく思考する。今まで社会人の様々な集いに参加し、異なる趣味の友達を作ろうとしてきたが、ここまで味方のいない状況に追い込まれることはあまり無かったかもしれない。だから、今回はその意味でも、出だしから大いに社会勉強になった。「バーレスク東京は女性でも楽しめる場所」「前は女性と来た」などと例の人物は話していたが、待ち合わせのこの空気、まるで男湯に来てしまったようではないか。雲行きが怪しすぎる。
まずい雰囲気だと思い、「私から自己紹介します!」と、威勢良く名前を聞く。その後は話で何とか笑ってくれたから、少し緊張がほぐれた。自分のためでもある。
(もうブログのテーマ「配慮」にしたいわ・・・愚痴ってごめんね??寧ろ向こうが気遣っても良いぐらいなんだけれど、誰が来るか、素性も全くわからない状態で人と会わせる博打は良くないと思う。誘うなら全力で仲介してくれたらと思う)。
そんなことより、私はバーレスク東京に潜入しに来たのだ。
このメンバーを見に来ている訳ではない。
しかし、場所が場所なだけに会場内ではさらに疎外感を感じるのではないか。
ぬるい風が舐める坂道を上っていく。
談笑するメンバーを横目に、恐怖心で心臓の鼓動が止まらなかった。
会場に入ったら関係なくなると信じよう。
気を取り直して、建物に直行する。
オカマバーを通り抜けた先に、行列のできている黒い建物を見つけた。
バーレスク東京は、六本木にあるショー・クラブだ。
結論から言おう。
めちゃくちゃ楽しい場所だった。
東京にいるなら行った方が良いと思う(抵抗がなければ!)。
思ったより全然敷居高くなかった。客層もチャラ男とかそこまでいなくてびっくりした。最前列でサイリウム何本も振り回している人たちオタクっぽかった。女性アイドルのライブの雰囲気に少し似ているかもしれない。
ここでは際どい衣装を着た女性たちが、派手な演出に合わせて歌やダンスを披露し、
非現実的な世界へいざなってくれる。
ポールダンス初めて見たんだけど、凄すぎてサーカス見てる感覚になる!!
フィギュアスケートのシットスピンみたい。プロだ・・・!
ポールダンス勢がアクロバティックすぎる。
私「えっ凄い!!」しか連呼してない。
あとえろい。これやるためにスタイルキープしたり
鬼練習してるんだろうなああっていうのが実際見てると伝わってきた。
見ると痩せようって思う動画。
演出では、激しく衣装チェンジしてくるので飽きない。
やばいめっちゃ露出してるじゃん!!って思いながらガン見。
手を振ったら振り返してくれる時もあるのできゅんとする。
この後、衝撃的だったのが女性客のみステージに上がるということ。
物凄い盛り上がりの中、上がったところ女性客は全体の2割程度はいた。
大道具が出てきて、音楽に合わせて歌ったり手拍子したりしていた。
これだけ書くとカオスだが、人生で体感したことがないであろう舞台演出に包まれたので
ぜひ体験してみることをおすすめする。その他、ランダムに誰かがステージに上げられることもあるので、バーレスク東京は全員参加型のショーなのである。
観客席から笑顔でサイリウムを振られることは、こんなにも気持ち良いことなのかと感動すら覚えた。
ダンサーの皆さんは、開演前・終演後に全ての観客席を周る。
その時、観客が推しメンにあげるのが独自チップのRION(リオン)。
RIONは10枚組で1000円。
開演前に受付で買える。
私は初めてで制度をよく分かっておらず、購入は控えたが、なんと隣にいた人から1枚譲ってもらえた。感謝!
終演後、席にいたら最初に出たポールダンスのお姉さんが来た!
近くで見たら小顔すぎたし美人だった。
RIONを渡す。
女性客だと明らかに親近感を持たれるようで、向こうからハグしてくれる。
普通に喋りやすい。
正直すごい優遇されている気がした。
ほたるさん、清楚系でモデルみたいに背が高かった!
なんだろう、妙に親近感を感じた。好きです。
お姉さんすごいことになってる。
急にブログにパリピ感出てきたな!!!
いや結構写真撮ってるよね・・・笑
美人しかいなくて、これはリピートしたくなるよねえって思った。
公演は1時間だけど、あまりに濃密な時間だ。
満足度がとても高い。
単独潜入よりもグループで来た方が楽しめそうである。
ステージに上げられた時、考えていることがあった。
会場に入る前に「こういうのに興味あるの?」とメンバーに聞かれたことだ。
引いているか、理解できないといったニュアンスが漂っていたのを思い出す。
素直に答えることに一瞬、躊躇した。
私も、(女の子がえろい女の子を見に行きたいって構図が本気で訳分からないよな)と答えを出せずにいる。そして、それは2:8の比率(見たい:見たくない)くらい存在している気がする。いや、もっと少ないかもしれない。レズビアンではない気がするけど、何となく、今まで生きてきて見たいのが少数派なのは感じている。
ステージで、隣で私と肩を組んでいた子が「あー!本当可愛い!」とダンサーに積極的に話しかけていた。羨望の眼差し以外の何物でもないと感じる。自分にはできないことをやっていることへの尊敬の念や、違う世界線だったら、といった想像を巡らせているのだろうか。
この子も、私も。
もっと言えば、ダンサーも全員先輩に憧れてこの世界に入ってきたのではないか。
そう考えたら、一瞬でも同じ気持ちでいる人間が地で繋がっていることに安心した。
同じステージ上にいた人たちは、日々相当抑圧して過ごしているに違いない。
受け入れられるような持って行き場がないから、ここに集まっているのだと思う。
無関心の振りをすることが、処世術だったりするが、生きるって難しい。
抵抗がなければ、
六本木に来た時はおすすめ。