2019年4月16日、私と友人は真夏のような日差しが照り返すアスファルトを歩いていた。面白そうな場所を見つけるのが天才的に上手な友人。その絶妙なチョイスで実現した散歩。散歩というより、小旅行である。平日のお昼時、派手な異文化の薫る土地を歩き続けている。古い家々の間には、ピンク色の壁に緑色の笠木やら木枠でしっかりとふちどられた建物や、黄色と緑色で痛いほど目に焼き付く店が、ところどころ顔を出していた。日陰の一切ない一本道を歩く。寒さを案じて長袖で来たばかりに、やがて行き場のなくなった汗が染みてくる。一軒家の絨毯が広がる中で、等間隔の電柱だけが理性を保っているように思えた。無限に続く電柱の向こうに、本当に川はあるのだろうか。見上げた青空は、自分たちのほとんどを飲み込みそうだった。さながら水を求める旅人だった。

 

 最初に駅に降り立った時は、車の走る音以外聞こえてこない、作り物のような町という印象を受けた。

 

しかし

 

 

私たちはブラジルに来たのだ。

 

 

2時間程電車に揺られて・・・!

 

 

おわかりいただけただろうか。

これがブラジルである。

思った以上に鮮やかな色彩に、体中の細胞が一斉に目が覚ます。

漫☆画太郎みたいなノリで「ごはん☆バー」という看板の登場である。

何で笑ってるんだろう・・・

カオスな次元に飛ばされて来たようだ。

 

 いったいここは何なのだろうか。


 

1980年代、日本がバブル景気を迎える頃に日本の工場は人手不足に陥り、日系人の労働が解禁されたそうだ。

入管法の改正を皮切りに、大量のブラジル人の波が群馬県の大泉町にやってきたのである。

ここに訪れる直前まで、日本人の中でわずかなブラジル人が控えめに文化を継承している・・・という勝手なイメージを持っていたが、現実は大きく異なった。人と会って喋るまで、わかった気になってはならないと後に悟ることになる(ガチ)。

 

 

道中で Bella Dona という、地元の洋服屋兼雑貨屋さんを発見した。

異国情緒を感じる・・・と思い、すかさず携帯のカメラでこの写真を撮る。

だがその瞬間、中から強そうなブラジル人女性が出てきて

「写真撮らないで!!」

と言ってきたのである。

それだけ言い放った後、店の中に入っていった。

 

 

 

えっ

 

 

 

 

こわ

 

 

 

 

だめなの!!!?????

 

 

 

 

 

 

 

てか人いたんだ・・・

 

 

衝撃でしばらく思考停止したが、今はインスタ映えの時代だし、宣伝効果もあるのだし全然良いじゃん・・・と思った。

おそらく、この女性は自分が撮られたと勘違いしたようだ。

屋外に常時設置してあるものについては自由に写真を利用することができるって著作権法に書いてある。

無駄なプレッシャーで念押しで調べたわ・・・笑

そして諦めずに店に入った。

店内には薄手の下着のような服やシャンプー等が並んでいた。値札はどこもかしこもポルトガル語で書かれていて

読むことができない。日本人がこの地で暮らしていくことは容易いことと思えないのだが、実際どうなのだろう。

視線を感じる。

巨体の女性2名に明らかに睨まれた。

一見さんお断り・・・?

 

と思いつつ、外のテラス席を通り過ぎたら、座っているおじいさんと若い女性に突然手を振られた。

この町への謎は深まるばかりである。

 

 

 
その後は、「レストラン ブラジル」へ
直球のネーミングである。誰が何と言おうと100%ブラジル感が溢れている。

 

 

 

ドアを開けると先客はなく、私たちだけだった。

壁掛けのテレビから、ボサノバがゆるやかに流れている。

テレビの中のステージでは、小田和正似の声でブラジル人歌手が歌っていた。

小田和正はブラジル受けするだろうね、売れそうだね、と私たちは妙な確信を得た。

 

私はずっと店員さんが、芸人のくまだまさしに見えて仕方がなかった。

顔立ちがなんとなく似ていただけである。

 しばらくして、ここに住むとみられる外国人のお客さんが、何組か店内に入ってきた。

その度にくまだまさしは流暢なポルトガル語を操り、店内に異国の風を吹かせる。

 

私たちは本当に、戻れないほど遠くに来てしまったように思えた。

 

 

 

 

しゅらすこ!!素材の味!!!それが絶妙に美味!!!

 

 
スーパー 休業日 終了

 

 

 

振り返ると向かいのスーパーが営業していた。

 

キオスク

 

否、キオスケ・ブラジル・・・

 

 

海外の色とりどりのお菓子たち。

 

このスーパーではないが、駅前の小さな食料品店にある冷凍食品のコーナーで、足ひれのようなものが袋越しに見えた。

 

あひるの足売ってたよ!!

 

普段見かける鶏もも肉等のせいで感覚がマヒしていたのだと思う。足の束を見た時に、突然罪悪感が襲ってきた。

人間だけが良い思いをしているような、拭える訳ないモヤる事実を突きつけられて、傷心する。

それでも、ももの延長にある部位だからなのか、だんだん美味しそうに見えてきた。無駄にしない意識は寧ろ敬意を払いたいほどである。

 

 

 

 

その後、大泉町では有名なパン屋さんの TOMI に向かう。

モデルルーム・・・?

 

 入口に入ると、ショーケースにはココナッツの粉をまぶしたパンや、青と紫のゼリーが杏仁豆腐の中に浮かんでいるようなデザート、お惣菜が各種並んでいる。ハンバーガーやホットドックも手作りしていて、店内で食べられるようだ。

奥の調理場では、がっしりした夫婦と思しきブラジル人が声を掛け合って作業している。

 一方、カウンター越しに接客してくれたのは、あまりにもこの町と雰囲気の異なる青年であった。

この町に来てから初めて日本人に出会ったかもしれない。

安心した傍ら、この人は一体何者なのだろうという思いが込み上げてきてしまい、私たちは目が離せなかった。

華奢なスタイル。ぱっつん前髪からのぞく笑顔と、両耳にかけられた短い髪を止めるヘアピン。

パンを袋詰めするところからお釣りを渡すところまで爽やかで、にこやかな人だった。

どこもおかしくなんかない。

それなのに、声に出さなくとも、私と友人は同じものを強烈に感じたらしい。

彼は、そこはかとなく中性的な雰囲気だったのだ。心臓をじかに触られるような、呼吸を忘れるインパクトがあった。

作りこまれていない上品さと共存する儚さのようなものを感じたかもしれない。

彼はどのような経緯で、この店でブラジル人と働いているのだろうか。

仮に夫婦の子であり、日系ブラジル人だとすれば家業を手伝っているのだろうか。

性別がたった2つしかない日本から離脱したかったのだろうか。

例えばタイは性別は18種類あるから、より性に解放的な場所を求めて思い悩み今に至る?

帰りの電車でインスタ、その他のSNSを必死に探したが、彼についての有力な手がかりは得られなかった。

できるならば、もう一度会いたい。

勝手な妄想してごめん。

 

最後に

「利根川でパンが食べたいのですが、ここからどのくらいですか?」

と聞いたら

「ここから5、6分ですよ」

との返事が来た。

そこで冒頭のシーンである。

 

水を求めた旅人になっていたが

妙な予感がしてGPSを見ると・・・・

 

 

徒歩34分?!

 

 

あっ・・・

 

 

 

(車で)5、6分かーい!

 

 

そうだ ここは群馬だった

 

 

道中、警察が私たちをじっと見ていたらしい。

気づいたよ。誰一人、この町をまともに歩いている人がいないことに笑

目立ちまくっている。

 

 

パン持ち込み可能な場所を探したら、まねきねこ見つけてめちゃくちゃ安心した・・・

海外で見つけたマイホームタウン

 

 

 

まねきねこのドライブインって初めて見たよ!!!!

 

 

 

ここで、ブラジルの MAS QUE NADA を歌って〆る友人。

最高かよ!!!!

いや、ひとつもわかんねえええええ

でもCMとかで聴いたことある!

※You Tubeにあります。

 

今回の小旅行は昨日、今日、明日が分断されたような気分になる旅だった。

気分転換の域を超えて、夢の中のようだった。。

全体的にキャラが濃すぎる。

息苦しかった昨日までの記憶が全て漂白されて、日本人の誰一人いない異国に辿り着いた感じだ。

途中見つけた小学校を見て、体育でサンバやらされるのかなあ、とか考えた。

一発芸で本場のクオリティでサンバをお届けできそう。

 

 

堅苦しくなくて、自由っていいよね。