会いたい人がいて、やっと会えた時。

そこそこ繋がりのある飲み会で、大勢の人に会ったとき。

 

「あ~!!」と再会を喜んだまでは良いものの、聞きたかったことがすぐに言葉として出てこない。

例えるならば、突然の訪問者にお茶菓子を出すことになり、開けようとした戸棚の全てに鍵がかかっているような状態である。私が慌てふためいている間に客間は賑わい、次の話題へと切り替わっている。そして、気づけば2軒目に移動が始まる。ようやく1つ目の鍵を外した私は、先陣を切った者から周回遅れで走っている。

 

大げさかもしれないが、周囲の話のスピード感についていけないことがよくある。

行きつく先は無言の境地である。

偶然だとは思うが、今まで居合わせた方々は先輩、後輩含め皆キレッキレすぎて目を見張る。

私が返しを考えている間に、ツッコミのナイフが核心に突き刺さっている。

新しい話題の芽にもすぐさま飛びついて、早口で話に花を咲かせる。

突然、前で喋るよう促された人が、明らかに台本など用意していない様子なのに、ある程度の尺を話して最後まできっちりまとめあげた瞬間。

 

もはや頭の構造が違うのではないかと思う。

世の中では、それを「頭の回転が速い」と言う人がいる。

そのテンポでうまく喋れない私は、彼らにとってさぞイラつかせる存在になっているだろう。

自分は何かが欠陥した人間なのだろうと一人で考えて、いつまでも引きずっている。

先日、私は話したい人に偶然会える機会があった。体調を気遣う一言をかけたいところだった。言いたい、と携帯にメモまでしていたのに出てこない。例にならって戸棚の鍵を開けようとしていたら、むしろ相手に体調を心配されてしまった。

いつもいつも思っている先を越されている。

家に帰ってから、時間差で聞きたかったことが浮かび、メモが長くなって文章になる。夜が更けていく。

冷静になると、どんどん濃縮されるのは不思議だ。

 

喋るのが遅い、早いで頭の回転を決めつけられるのか。

 

皆さんは、ウーマンラッシュアワー村本とDAIGOのデスマッチを想像できるだろうか。

ここでの意味は、喋りのデスマッチだ。

2人は喋るスピードが最も対極にあると思う。

村本はマシンガントークで四方八方に攻め続け、DAIGOは僅かな間を狙って破壊力抜群の爆弾を落とし込むイメージ。

私は村本の話す内容が日本語に聞こえなくなることが多々あり、長期記憶ができずに抜け落ちていってしまいがちである。

※2回以上聞いたら理解できます

DAIGOは普通以上にスローペースなので、何を話すのか期待して注目したくなる。さらには、考えられた組み合わせのアルファベット3文字が裏切らないので謎の安心感がある。デスマッチの勝敗なんて決められないのかもしれない。インパクトは喋りの量では全く決まらないのだ。きっと、マシンガントークの相手でも、そうでなくても「頭の回転」という表現は使えるはずである。

 

持って生まれた性質は変えられないと感じる。

急がずに熟考するタイプと、とてつもなく素早い思考回路を持つタイプに遺伝子が分かれているのだろう。

補完し合い、棲み分けをして人類は繁栄してきたはずだ。それぞれの得意分野がある。

早いテンポで喋らずにはいられず、高速で何事もジャッジしている人が、必ずしも正しい判断をする訳ではないと最近気づいたので、焦らずに生きたいと思う。

伝えたいことがその時つたわらなくても、鍵が壊れていても、次こそは。