「三つ子の魂百まで」と言うけれど。
たしかに。幼い頃の環境は、将来ずっと影響するかもしれません。
どの家庭にも独自のルールがあると思います。
僕が子どもの頃、夏休みは祖父母の家に預けられるのが「決まり」でした。
長い夏休み期間中ずっとです。
どうして、うちだけ田舎に行かなくちゃならないのか。
どうして夏休みに友達と遊ぶことができないのか。
周りの家庭と違うルールが不思議でした。
今思えば、4人の子育てが大変だった父母にとっても「夏休み」が必要だったのかもしれません……。
父方の実家も、母方の実家も、どちらも車で1~2時間の距離にある田舎。
当時は、地の果ての遠い世界のように思えました。
他の3人の姉妹たちは、父方の祖母の家に預けられました。
僕だけが1人で母方の祖父母宅に預けられました。
だから、毎年夏休みは一人ぼっち。
祖父母の家の近所の子供たちと遊ぶこともありませんでした。
そもそも喋る言葉が(同じ県なのに)違うし、「都会の子が来た」という目で見られます。
人見知りで内向的だった僕の夏休みは、一人で過ごす日々でした。
広い畳の部屋を寝転がったり、高い天井の木目模様を眺めて空想したり。
長い縁側の廊下でミニカーを走らせたり。
昼間は漫画を読んだり、テレビのワイドショーで怪談を見て怖がったり。
祖父母の家のトイレは離れにありました。
居間から細くて長い廊下を渡って行くトイレまでの距離が長かったこと
裸電気だけの狭くて長い密室のような廊下。
オレンジ色の光に包まれて歩くうち、異次元の世界に迷い込みそうな錯覚に陥りました。
「タイムトンネル」だと想像して歩いたこともありました。
父母の目がなく、自由に伸び伸びと過ごす夏休み。
朝は好きなだけ眠り、好きな時間に起床。
夕方、新聞の夕刊が届いた後に起きたこともあります。……自由すぎる
当然の結果として、一人遊びが上手になりました。
一人用のオリジナルゲームを考案したり、紙で人形を作って物語を創作したり。
このように毎年1ヶ月半の夏休みを過ごすと、他の「普通の」子供と違う出来栄えになるのは仕方がないでしょうね。
良くも悪くも。(デメリットが多い気がするけど……)
現在。
既に祖父母は他界し、祖父母の家は取り壊され新築マンションに変わりました。
周りの景色も田舎から少し都会へと姿が変わりました。
もう、思い出の欠片も見つけられないほどの変貌です。
でも、心の中の風景は、いつまでも同じ。
あの長い夏休み。
僕の心の原風景。