ちょっと前に「奇麗事について-暴力を振るう人間が唱える愛と平和」とのタイトルの記事で、愛と平和を訴えていたジョン・レノンが性格に問題があったという話を書きましたが、それで思い出したことがありますので、こうしたいわば言行不一致の例をもう少し紹介しましょう。

 

まず、ジャン=ジャック・ルソーです。

 

ルソーは18世紀に活躍したフランスの哲学者、政治哲学者、作曲家で、教育論が有名です。

 

そして、このルソーは教育について高邁な思想を説きながら、なんと妻  テレーズとの間に生まれた5人の子供をすべて捨てているんですね。

 

しかも、彼は、「はじめはほんのなぐさみにするつもりでテレーズに接近した。けっして彼女をすてないが、結婚する気もないことを前もってはっきり知らせたうえで関係をもったといい、またテレーズは『ママンのかわり』だったと」白状しています。

 

本当に最低の人間でしょう。

 

ルソーの言い訳を書いておくと、「自分は親にはなれないと思った。自分には子どもを育てるなどということはできない。少なくともその用意はできていない。仮に自分のようなものに育てられたとしたら、子どもは決して幸せに育つことはないだろう。子どもはいずれは必ず自分を憎むことになる。自分のような親に育てられるくらいなら、その子は施設で育った方がよほど不幸は少ないに違いない。自分のとった行動はそういう意味で最善だった」といっています。

 

ただ、当時のパリでは捨て子が普通だったそうです。

 

また、捨て子といっても、路地裏やゴミ箱に捨てるわけではなく、教会や養育院の前に置き去りにしていたとのことです。

 

ついでに、ルソーの最後の言葉を引用しましょう。

 

「気を落とさないようにしなさい。見てごらん、空はなんときれいに澄んでいるのだろう。私はあそこへ行くんだよ」

 

なかなかいいでしょう。

 

しかし、子供は捨てるし、女性を尊重しない。

 

ルソーはかなり複雑な性格だったんですね。

 

次は、石川啄木の話をご紹介しましょう。

 

いうまでもなく明治時代に活躍した歌人・詩人で、「はたらけど はたらけど猶わが生活楽にならざり ぢつと手を見る」の短歌を知らない人はまずいないんじゃないかな。

 

この彼がなかなかのクズだったのです。

 

まず、旧制中学時代は試験でカンニング三昧、しかも16歳で退学になります。

 

そして、18歳のときに後の妻  節子と婚約。

 

しかし、結婚式をすっぽかし、5日後に現れます。

 

その後、新聞記者になるんですが、遅刻や欠勤は当たり前のとんでもない勤務態度でした。

 

さらに、単身で釧路に移住し地元の新聞社で働くものの、妻子への仕送りはほとんどなし。

 

奥さんは身の回りのものは全て質に入れ、借金するようになっていましたが、啄木はそんなことお構いなしに毎晩飲み歩いていたとのことです。

 

その後、啄木は節子と東京に移住しますが、作品が出版社に認められず、浅草の繁華街で連日遊び、現実逃避するようになります。

 

結局、節子は啄木の所業に耐えかね家を出ました。

 

啄木は周りの人たちに借金しまくっていたのですが、もっとも有名なのは金田一京介(少年探偵のお祖父さんではありませんよ。そのモデルになった言語学者です)との関係でしょう。

 

啄木は、一時、金田一と同じ下宿先に部屋を借りていました。

 

しかし金田一は、小説は売れず、安定収入のない啄木に自分のものを質屋に売り、金を貸していたのです。

 

それでも啄木は部屋の家賃を滞納し、いよいよ大家から追い出されそうになったときに、金田一は自らの蔵書を売り払い、その金で自分と啄木の下宿先を確保したとのことです。

 

金田一は啄木の才能にほれ込んでいたのでしょうね(薔薇関係もあったのかな)。

 

「はたらけど はたらけど・・・」を始めとする彼の短歌や詩を読んで、石川啄木を清貧の孤高の人だと思ってた方が多いと思いますが、本当の姿はこんなものです。

 

以上、いわゆる偉人の裏面をご紹介しましたが。ルソーにしても石川啄木にしても、人間として最悪であるとしても、その才能や功績が否定されるわけではありません。

 

というか、破滅型の天才というか、こういうハチャメチャな人物だからこそ、偉大な作品を生み出すといえるかも知れませんね。

 

では

 

 

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