昨日の文章を書いていて思い出したことがありますので、今日取り上げます。

 

外国で事件等に巻き込まれたときは、大使館に連絡して、通訳を用意してもらえば良いといった話を聞きますが、ことはそう簡単ではありません。

 

ます大使館が通訳を用意しても、警察が認めてくれるかどうかはわからないのです。

 

警察が良く知らない通訳や、逮捕者側に都合の良い通訳を忌避される可能性があります。

 

また、大使館員は言葉ができても、普通は通訳はしません。

 

責任を取るのが嫌だからです。

 

それで警察が通訳を手配するのですが、当然ながらあまり需要がない言語には、常勤の通訳はいない。

 

ですからどんな通訳が来るかは運任せということになります。

 

ただ、後で書くように料金の関係であまり上手い通訳は期待できません。

 

それに、警察もそれほど通訳の質にそれほど注意しませんからね。

 

ついでですので、昨日も少し触れた私の個人的な経験を書きます。

 

通訳の質ではなく警察のいい加減さの話しです。

 

私が翻訳・通訳会社を経営していた時のことです。

 

ある日、パリ警視庁から電話がありました。

 

誰でもそうだと思いますが、たとえ後ろ暗いことがなくても、突然警察から電話がかかってくればドキッとします。

 

まあ、実際には日本人の並行輸入業者の取調べの通訳をしてくれとの依頼で、別に断る理由もないので引き受けました。

 

ただ、私自身は空いてなかったので、別の社員に担当させました。

 

日本ではどうか知りませんが、フランスでは依頼を引き受けた際には発注書にサインをしてもらうことになっています。

 

そしてこの書類には作業条件、特に料金が明記されています。

 

私は担当の社員にちゃんと責任者のサインを貰うように念を押しました。

 

しかし、彼は仕事の次の日に事務所に出てくると、担当の予審判事(自らも捜査をする判事)は忙しいからと、受け取っただけでサインはしてくれなかったと言うんです。

 

そしてろくに休みもなしに12時間も働かされた上、食事は自前だったと付け加えました。

 

私は発注書はなかったものの、通常の料金を適用した請求書(基本料金+超過勤務手当)を作成し送りました。

 

しばらく何の連絡もなかったのですが、2カ月ほどたった後、その予審判事から手紙が来ました。

 

司法関係の通訳作業は公定料金が定められていてそれ以上払えないとのことです。

 

そして、それが請求額の3分の1以下なんです。

 

しかも、12時間も働かせて、手当は何もつかないと言っています。

 

予審判事が発注書を読まなかったはずはないので、私の会社の料金は知っていたはずです。

 

それなのに知らない顔をして働かせ、あとでこんな手紙を送ってくるんですね。

 

発注書にサインをしなかったのもわざとでしょう。

 

証拠になりますから。

 

要するに完全な確信犯です。

 

私は頭にきて弁護士に相談しましたが、国家権力相手に喧嘩して勝てるわけないだろうと言われました。

 

どうしようもありません。

 

泣き寝入りするしかない。

 

しかし、後で同業者に聞くと私よりも高い料金を取っている通訳でも警察の仕事は進んで引き受けるとのことでした。

 

何かあった時のコネにするためですね。

 

そんな考えかたもあるのかとは思いましたが、その後、何回かあった依頼はすべて断りました。

 

幸いなことにその後コネがあったらよかったと思うような羽目には一度も陥りませんでしたから、後悔はしていません。

 

まあ、フランスに限らず、どこの警察でも信用できないと思った方がいいですね。

 

では。