今日は、昨日に微妙に続く感じで、通訳の話をします。

 

通訳にはいくつかの種類があります。みなさんが良く聞くのは同時通訳でしょう。その他に逐次通訳があります。これは同時に訳すか、話者と交互に訳すかといった通訳のやり方で分けています。

 

それから会議通訳、商談通訳といった分け方もあります(これは読んで字のごとしです)。あと放送同時通訳なんてものもありますが、これは同時通訳風ではあっても、事前に聞いて翻訳をしたものを読んでいるので、純粋な意味での通訳とは言えません。

 

昔、ネットニュースのコラムで、放送同時通訳が最高峰ですべての通訳の憧れだなんて書いたありましたがとんでもない。一流の通訳はやらないでしょう。新人の仕事かな。

 

一般に同時通訳が一番難しいと思われているようですが、実は上に書いた話者の話をノートにメモしてから、順次訳していく逐次通訳のほうが難しいんですね。

 

よくテレビなんかで、日本の首相と外国の首脳が椅子に座って話をしている時に、それぞれの斜め後ろに座って何かノートに書いている人がいるでしょう。あれは会談の記録を取っているのではなくて、通訳がメモを取っているんです。

 

こういうときは、正確性に問題があるために同時通訳はしません。それから、通訳は必ず話者の母国語から相手の国の言葉に訳します。普通に考えるのとは逆ですね。

 

つまり、日本の首相がアメリカの大統領と会談する場合には、首相が話す時には日本側の通訳がこれを英語にし、大統領の話はその専属の通訳が英語から日本語にするわけです。相手の発言を聞いた通訳がそれを首相なり大統領なりに訳して聞かせるのではないんです。そうしないと誤訳が生じた時に責任の問題がややこしくなるからです。

 

ちょっとわかりにくかったかも知れませんが、世間的に誤解されていると思ったので一応書いてみました。

 

余談ですが、こうした国家首脳間の会談で、問題発言があると通訳の責任にされることがあります。かなり昔のことですが、中曽根さんが総理大臣の時に有名な事件がありました。すべて、通訳の訳間違いのせいにされていましたね。

 

ただし、相手方の言葉にそれれぞれの通訳が訳すなんてことは正式の首脳会談やかなり重要な交渉(民間レベルでもあります)の時だけです。通常は費用のこともありますから、通訳は1人で両方の方向に訳します(逐次の場合)。

 

ところで、上に正確性が大事と書きましたが、通訳で重要なのは言葉をネイティブ並に流暢に話せることではありません。

 

確かに、最近は日本語の物凄く上手い外国人が沢山います。私の若い時と比べると本当に驚くばかりです。しかし、私の知っている大統領に同行するようなトップクラスの通訳(フランス語日本語)は、いわゆるバイリンガルではありません。ただし、頭の回転が速く、語彙が豊かで話が明快です。

 

重要なビジネスや外交の場では、高いレベルの言葉を話せなければいけません。いわゆる帰国子女は良くて大学の新卒、下手すれば中高生程度の英語または日本語で、とても使い物にはならないでしょう。

 

ついでに書くと、知っている人はわかるでしょうが、同時通訳はかなり聞きづらいですね。本当に上手い人でも隔靴掻痒感は拭えません。

 

かなり前にテレビである対談を見た番組では、一方がアメリカ人なので、同時通訳が入りました。やはり聞きにくい。通訳のタイミングが遅いし、話がなんとなくずれているような気もします。比較的テーマが難しかったと言うこともあるんでしょうが(とは言え、極度に専門的な用語が飛び交ったというわけではありません)。

 

同時通訳には正確性に問題があると書きましたが、一般的に良くて70 %、下手すると30 %くらいしか伝わらないと言われています。

 

そういえば、私が昔、生で聞いた文学討論会でも(フランス人と日本人の作家が参加していました)、同時通訳がもの凄く苦労していましたが、果ては、言っていないことを通訳が勝手に口走ったために、発言者が怒ったことがありました。 討論会はめちゃくちゃ。話が完全に食い違い、結局、通訳が謝りました。一応、一流とされている人だったんですが。

 

まあ、人のことは言えませんね。私も同時通訳をしていて、上手く行く時は話者と一体化するんですが、駄目な時はまったく駄目。それに調子が良い状態も長く続かないなんてこともありました(物凄く疲れるんです)。

 

なんだかいつも通りまとまりがありませんが、今日はこれで終わりにします。

 

では。