こんにちは、土井英司です。

 

昨日、BBMで村上世彰さんの話題作、『いま君に伝えたいお金の話』をご紹介しました。

 

 

子どもに向けて書いたお金の本ですが、本書のなかに、天職に関する記述を見つけました。

 

<伝えたいことがふたつあります。ひとつは、できることなら、好きなことを仕事にすると人生が楽しくなるということ。もうひとつは仕事を考えるうえで、お金の問題を軽視してはいけないということ>

 

 

「好きなことを仕事にすると人生が楽しくなる」

 

好きなことを仕事にしている土井としては、まったくその通りだと断言できますが、これにちょっとだけ補足したいと思います。

 

それは、<その仕事に、「幸せ」と言える瞬間がどれぐらいあるか>。

 

 

たとえば、土井は書評家として活動していますが、そのプロセスのすべてが好きなわけではありません。正直、書くのは苦痛ですし、どうやって表現すべきか、いつも悩んでいます。

 

でも、読むことに関しては違います。人に伝えたいと思うほど素晴らしい文章やコンセプトに出会った時は、ものすごい幸福な気持ちになりますし、これに関しては、長年続けているからといって飽きることはありません。

 

 

『グッド・フライト、グッド・ナイト』というパイロットの本にも、こんな記述を見つけました。

 

<またパイロットになった夢でも見ていたのだろうか? いや、夢じゃない。今日もエアバスでヨーロッパの国々を飛びまわるのだ。そう思うたびに、パイロットになりたての頃と同じ胸の高鳴りを覚えた>

 

<ときおり、そんなに長い時間、コックピットにいて飽きませんか、と質問されることもある。飽きたことは一度もない。もちろん、疲れることはあるし、高速で家から遠ざかっている最中に、これが家に向かっているならどんなにいいかと思うこともある。それでも、私にとってパイロットに勝る職業などない。地上に、空の時間と交換してもいいような時間があるとは思えない>

 

 

イグニッションキーを回す時のように、スイッチが入る瞬間、そして仕事のプロセスのなかにフロー状態になれる瞬間があれば、それは天職だと思う。

 

逆に、それがないなら、仕事を変えるのも、一つの手ではないかと思います。

 

 

仮に、天職に出会っていても、人間は惑わされることがあります。その典型例がお金へのこだわりであり、あなたを天職から遠ざけるものです。

 

村上世彰さんは、こう指摘します。

 

<モノの本質を見ずに、こうして「値段」だけで物事やその価値を判断してしまうと、お金に縛られた生き方になります。なんでも高いモノのほうがいい、稼げるだけ稼ぐのがいい、とお金だけを追いかけてしまうと、値段にも収入にも上には上がありますから、どこまで走ってもゴールできないマラソンをしているような人生になってしまいます>

 

 

先日、とある分野の専門家にこんな質問をしました。

 

「もし、一生困らないだけのお金があったら、今の仕事を続ける?」

「続けないと思う。講演や執筆で稼ぎたい」

 

 

われわれプロが本当に書いて欲しいと思うのは、こんな方ではなく、天職から得る喜びを、読者に伝えられる方です。引退の道具として出版を考える人間ではありません。

 

人生の貴重な時間を、カネを得る手段だけに費やすことのないように。

 

 

今日も、良い仕事をしましょう。