こんにちは、土井英司です。

 

今日のメルマガ「ビジネスブックマラソン」では、『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』(山崎圭一・著 SBクリエイティブ)をご紹介しました。

 

本当に素晴らしい本なので、ぜひ読んでみてください。受験生にも有用です。

 

先日訪れたギリシャでは、ミケーネ文明の遺跡を訪れました。せっかくなのでここで、土井なりのクレタ文明とミケーネ文明の違いを説明してみようと思います。

 

よく言われるのは、クレタは交易で栄えた自由な海洋文明で、城壁を持たない。ミケーネは強固な城壁を持った、ということです。

 

ミケーネの遺跡に行くと、山の上に建つ、威風堂々としたアクロポリスが目につきます。われわれの多くは、こうした巨大建造物を見ると無条件に感動するのですが、これは要するに、情報を得るために作ったのだと思うのです。敵が来たらすぐに見える、攻めて来ても守れる。

 

※よく見ると、ミケーネの遺跡が。隣の山のほうが高い

 

※有名な獅子の門

 

※地下水槽の入り口。中は真っ暗です

 

ミケーネ遺跡の横には、2つ、アクロポリスよりも大きな山があるのですが、なぜ彼らはこの山にアクロポリスを作らなかったのか? おそらくそれは、水が得られるかどうかの違いだったのではないかと思います。

 

じつは、ミケーネ遺跡には、巨大な地下水槽があり、彼らはここから水を汲んでいたのではないかと推察されています。

(現在でも水があります)

 

アテネのアクロポリスも同様で、一番高いのはリカビトス山ですが、ここは水が取れない。だから現在の山にアクロポリスが築かれたのです。

 

つまり、そこまでの不便を強いられても、彼らは情報と身の安全を取ったということ。その根底には、おそらく恐怖があったと思われます。

 

クレタは、交易で栄えたところですから、自ずと情報が集まる。カネを媒介にするから、みんなが合理性に従って動く。でも、ミケーネはおそらく違ったのでしょう。彼らは自分で敵の情報を取りに行く必要があったでしょうし、広大なペロポネソス半島で物資を得るには、敵に取らせておいて奪った方が効率が良かったのだと思います。

(情報や物資を人々に取らせておいて集める、グーグルやアマゾンと同じ戦略ですよね)

 

ミケーネは、クレタ文明の崩壊で逃げてきた人たちが作った国でもありますから、その根本には「恐怖」があったと思うのです。そして、恐怖は周りに伝染するから、みんなが疑心暗鬼になる。

 

ミケーネ文明は、今と一緒でモバイル文化であり、人々は財産を宝石や剣、ゴールドなど、持ち運びしやすい形で所有し、いつでも逃げられるようにしていました。

 

現在の情報化社会は、一見クレタ文明のような平和なイメージですが、実際には奪い合いと疑心暗鬼のミケーネ文明的な色を帯びていると思っています。

 

そんな世界では、送られてくる情報をただ受動的に受け止めているだけでは、足りない。自分なりの情報アクロポリスを構築し、見通しが良くしておく必要があるのだと思います。

 

とまあ、完全な私見ですが、ちょっと思うことを書いてみました。ご参考まで。