こんにちは、土井英司です。

仕事がら、「ヒットの法則」について聞かれることがあるのですが、「ビジネスブックマラソン」で過去に紹介した本に良いヒントがあったので、ご紹介します。

カリスマイラストレーター、寄藤文平さんによる『絵と言葉の一研究』(美術出版社)という本です。

寄藤さんは、30万部を超えた『海馬』で装丁家デビューして以来、『ウンココロ』、『年収200万円からの貯金生活宣言』など、ヒットを連発してきた人物。フリーペーパー「R25」の表紙や、「大人たばこ養成講座」などでご存じの方もいらっしゃるかもしれませんね。

『絵と言葉の一研究』は、そんな寄藤文平氏の頭のなかを、絵と言葉を使って解説した、じつに学びの多い本ですが、この本のなかに、気になる記述がありました。

<絵を使ってインフォメーションを作る。当時は、それが新しかった>

<一般的に、多くのイラストは「絵画」の延長として考えられていた。イラストを「情報」として作るイラストレーターは、ものすごく少なかった>

こうしてみると、寄藤文平氏のイラストというのは、イノベーションであったということがよくわかります。

戦略論の権威、リチャード・P・ルメルト氏の『良い戦略、悪い戦略』に、こんな記述がありました。

「未踏の高地を手に入れる一つの方法は、自前のイノベーションによって作り出してしまうことである」

画期的に売れるものは、既存の商品と同じ指標で測られる「良い商品」ではなく、イノベーションによって創られ、まったく新たな指標で評価されるものだということがよくわかります。

かつて歯磨き粉が「虫歯予防」だった時代に「歯が白いこと」をウリにしたサンギ、「素材の良さ」をウリにした「俺のイタリアン」「いきなり!ステーキ」、「手軽」と「上質」の2軸で勝負したセブンカフェ…。

良い商品は、やっぱり画期的なコンセプトを含んでいるものなのです。

ちなみに、「実践ビジネス英語」の杉田敏先生に先日聞いた話ですが、杉田先生が「やさしいビジネス英語」の講師に採用された当時は、「ビジネス英語」自体が珍しいコンセプトだったようですね。それが、時代を超えて、「女性+ビジネス英語」がウケて、関谷英里子さんが「入門ビジネス英語」に抜擢された。

時代が変われば、必要となるコンセプトも変わる。

ヒット商品のヒントは、やはり時代を見ることで見つかるのだと思います。