―Those commuter's.
予想以上に自転車通勤をする方が多い様だ。
先日は帰宅を前に空腹感が在るのは判っていた。
いつもの様に帰宅を伝える電話でも、
『馬力が足りんから、遅いよ?』
と伝えていた。
普段より抑え気味で帰ろうと、帰宅の途についた。
店を締め終えた時刻が比較的早く、道中には人の姿が多い様に思えた。
たびたび自転車通勤者と思わしき姿を目にしていたが、その日は少し違っていた。
店を出て外苑西通りから新宿通りへ、四谷~市ヶ谷へ抜け靖国通りへ出て、九段下を過ぎるとサーベロチームのジャージを纏った(かく言うワタシはディスカバリーを)サイクリストがワタシを交わして行った。
同方向に走る彼をかわし、先を進んでいたが、どうも暫く一緒に走りそうな気がして、信号待ちで振り返り、話しかけてみた。
『こんばんは、どちらまでお帰りですか?』
本八幡まで帰るとのこと、ワタシは八千代までと簡単に二言三言を交わして信号が変わり、再び走り始めた。
そんなハナシのなかで、自分がショップ勤め(ホントは経営だよな・・・)であるとも話していたので、易々とユルい走りをするワケにも行かないような気がしていた。
『頑張りたくは無いのヨネ・・・』
せめての走りで先へ進んだ。
途中、彼とは経路が異なり別れることになったようだ。
靖国・京葉道路から蔵前へ抜け自宅を目指すワタシの前に新たな自転車通勤者の姿が。
変に刺激しない様にかわしたつもりでいたが、やはり気になるものだ、真っ白なロングスリーブジャージで走る彼がワタシをかわす。
正直、知れない走者を前に公道上で列車を組みたくは無い―。
お互い様だが、予想外の危険性が付きまとう。
再度彼を交わし、先に行かせてもらおうとすると、追走する様子が判った。
普段なら危険なので一気に逃げをうつところだが、生憎そんな元気も無い。
かわせられるなら、先に行かせようと信号待ちをしていると、
『お速いですね・・・』
と先に声を掛けられ、再度二言三言の会話を交わす。
先の反省を踏まえ、止せば良いのにショップを営んでいるとも。
断っておくが、ワタシは決して速いライダーでは無い、ある程度でしかないのだ。
彼の会話に出ていたが、
『ここを走る人達は速い方が多くて。』
・・・マッタクだ、確かに走りが達者な人をよく見かけるが、ワタシは違うのだ。
―ヤレヤレ、余計な事を話したものだから、不甲斐ない走りを見せる訳にも行かなくなっていた。
『あー、せめて普段の勢いにするか・・・』
先に書いたようにワタシは空腹感を感じ始めた『ハンガーのりお(ハンガーノック)』寸前の状態なのだ。
幸い、彼は市川までと道中は短く済みそうだ。
期待感を背中に感じながら走り始めた。
江戸川を越えた交差点で
『後は軽く流して行きます、有難うございました。』
なんて清々しい、ワタシこそアリガトウ。
時計を見ると、予定していたより早く帰りつきそうな時刻だった。
西船を過ぎ、船橋に入った頃から視界に違和感を覚え始めた。
どうも少し離れた俯瞰のような視界に思えた。
『イカンなー、脳みそに酸素が足りとらんかなぁ・・・』
いよいよハンガーのりおになってしまうのか。
念のためにと店を出る前に飲んだエネルギー系のドリンクでは足らなくなっていた。
『アカン、血中濃度も高くなっとるな、コリャ。』
ボトルに手を伸ばし水を補給しようとしたが、ボトルの中には思っていたほどの水が無かった。
『・・・こ、コリャいかんで。』
カラダをecoモードに切り替えた。
脳の活動を危険を回避する最低限の活動状態を意識し、当然運動量も継続走行可能なレベルまで落とした。
『お、思っていたより消費させられる走りをしてたんかなぁ。』
若干、意識朦朧状態になりながら無事帰宅した。
・・・ほんと、ツーキニストの皆さんは達者な方が多いのだ。
ただ、中には前走者を抜かすことを楽しみにする様子の方(パスハンター※本来は峠越えのスペシャルバイクのこと)も少なく無く、決まって信号無視等の行為を披露されることもしばしば。
ワタシは大した走力は無いのだが、そういう行為を見逃したくは無いと、ついつい追ってしまう。
『大丈夫?信号機が在るからね?』
などと声を掛け、注意を促す。
当然、不快に思われるだろうが、更に速度を上げて走り去ろうとするサイクリストもいる。
―せっかくそれだけ走れるのなら、それこそ見本になる様にしてもらえば良いのに。
ワタシはまだまだ走力不足、だがそんな輩に負かされている場合でもないのだ。
競争をするつもりは無いが、力を示す相手にしか従うつもりが無いなら努力を続けねばならないのだろう。
正直、危険だし、しんどいのだが。
無駄なんかね、とも思いつつ、小さな変化を及ぼせることを信じて日々走っています。
具体的なルールよりも、たぶん各自の気持ちが重要なんだろうケドね、交通安全って。

