きらびやかでもないけれど
            この一本の手綱をはなさず
            この陰暗の地域を過ぎる!

            その志明らかなれば
            冬の夜を我は嘆かず
            人々の憔懆のみの愁(かな)しみや
            憧れに引廻される女等の鼻唄を
            わが瑣細なる罰と感じ
            そが、わが皮膚を刺すにまかす。



          

                中原中也「寒い夜の自我像」より

                             (一部抜粋)















蒼く深い海のように 夜は広がっている


遠くの彼方に ひとつの星


波間に浮かぶ舟のように


雲の隙間に 見え隠れしている





冷たい空気は 冬を鮮やかに


すべてのものを 研ぎ澄ませてしまう


静寂が 見えない天の川に流れ


地上に降りてくるような 風の凪・・・










望みがあるとすれば 


それはささやかなこと


ほのかな明かりの中に 


零れてやさしくひかる





外灯の色はぼんやりと 


周りの景色を映し出しているけど


遠くのネオンの 


街を照らして動く色が見える









揺らぎ、とは・・・ 




美しいものなのだ・・・ と思った。


曲線を描きながら明かりが


波のように燻らせて 暗闇に色を滲ませているのを見ていると。









見上げれば・・・




あいたい人にあえない心のような月が


今夜も空に 浮かんでいる・・・