~美しき彼方より~-1








 

~蜃気楼~



いつだったろう


薄日の滲む沖に


白く濁った倦怠の息と


僅かばかりの光の欠片を


見たような気がしたのは




風は凪ぎ 波は静むころ


浅緋(うすきひ)に染まる水平線の奥に


陽炎のようにゆらゆらと


あてもない心をさがしていた





人はなぜ生きるのだろう




地平に浮かぶ蜃気楼のように


夢とも現ともつかず



理想という名の祈りも


希望という糧も


儚い幻であるというなら


あるいは美しさが


潜んでいるのかと




砂の熔けるあやうさのように


答えのない問いを


置き去りにした日・・・








       


        (2009・4・7)