秋。
一番好きな季節。
私が生まれた季節。
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外に出た瞬間、
ひんやりとした空気に体が触れ、
すっと息を吸い込む。
日に日に冷たくなっていく空気を
すっと吸い込んで、
光と匂いとともに、
私の体全部でこの季節を感じる。
こうしていると、
かつての記憶の断片から紐づく
あれこれが、
頭の中、
心の中、
いっぱいに広がっていく。
私の頭と心に残る秋は、
そのどれもがぼんやりとした
赤や黄色をしていて、
射すようなギラギラではなく、
きらびやかなピカピカでもなく、
穏やかで、
柔らかな光の線の集合体。
その幾重の光線の中を、
たまたま通り抜ける。
足を止めて、顔をあげて、
赤や黄色の木々を眺める。
そこには、
いつでも変わらずに、
何気ない、秋の風景がある。
案外、そんなものの方が、
記憶に留まるのかもしれない。
手繰り寄せられた
かつての記憶の断片と、
新たに作られる記憶とを、
重ね合わせながら、
一番好きな季節を、
静かに過ごしていく。
「感傷」なんかじゃない。
傷なんて、痛むものなんて、
本当は何ひとつないのだ。
