高嶺の花だと思っていた塾の2つ年上の先輩。

しかし、なんとある時思いもかけない言葉が彼女から発せられた。


塾の帰りにいきなり呼び止められ、

『一緒に帰ろう』

と言い出したのだ。


言い出したという表現は本来使いどころが間違っているだろうが、こちらとしてはそれくらいの驚きだった。

しかしまさかこんな急な展開になるとは思ってもいなかったので心の準備が出来ていなかった。

帰り道、家はお互い塾からそう遠くないため、10分くらいしか話す時間もなかったのだが、まさに夢のような帰り道だった。

いつだってそうなのかもしれないが、恋愛とは、これくらいの時が一番楽しいのかもしれない。

辛い時間も含めて、だ。


そして予断だが、友人達からこういう恋の相談を受けるのも当時から大好きだった。

ひそかに、別名『行列のできる悩み相談所』でもあった。

社会人になってからは例えば家庭の悩みだったり、仕事の悩みだったりも増えてきたが、高校時代は専ら恋愛相談が多かった。

話を聞いては、

『お、それは絶対チャンスやん!いっとけって!』

と言う瞬間が特に大好きだった。


まぁ言い換えるならば、玉砕させまくっていたわけだ。

恋愛に限りはないわけだから、早く次のステップへ移るのに損はない。


ちなみに僕はあまり他人に悩みを打ち明けたりしない方だ。

良くも悪くもあるとは思うのだが、例えどんなに悩んでいたり落ち込んでいたりしようとも表面には出さない。

幸いマイペースなのが功を奏してストレスがたまりにくい性質というのもあると思うのだが、死に直面しているだとか、よっぽどのことじゃない限りは他人に言及したりはしない。

しかし、こと恋愛に関しては少し事情が違うのか、ある種『話のネタ』としても楽しめる要素があるためによく相談したりもした。

そんな話の中で盛り上がるのもやはりこれくらいのタイミングの時だろう。


話を戻すが、一緒にいた時間よりもむしろ帰ってきて一人になった時間や、この話を友達に話してあれやこれやと盛り上がる時間がまた楽しかったりもした。

ましてや高嶺の花という存在でもあり、校内や地元も含めた周りの評判もよく、最初は手の届かない存在だと思っていたのでなおさらだ。

結論から言うと、この人とはこの後数回のデートを重ねたあと付き合うことになり、短い間だったが初の彼女として存在感を残す人ともなった。


全てを話しだすと本当に一冊の本になってしまうほどのボリュームになってしまい、キリがないので要点のみを書く感じになってしまい申し訳ないが、高校時代の恋愛としては、この後二人の人と付き合うことになる。

それに関してはこの先どこかで話の流れに含まれる機会があれば書くとしよう。



さて、いよいよ高校二年生になる。

この二年生というのが自分の中で大きな分岐点にもなった年でもある。


進級当初、運悪くクラス替えの結果知らない人達ばかりのクラスになってしまった。

クラス数や学校の規模にもよるのだろうが、普通は最低でも一人ないし二人くらいは仲の良い友達と一緒になり、そこからさらに輪が広がるという感じなのだろうが、見事に一度も話したことすらない人達の中に紛れてしまった。


授業中はまぁいいのだが、休憩時間になるとやはり浮いてしまうので他クラスの仲の良い友達がいるところへばかり顔を出していた。

そのまま1ヶ月近く経った頃だろうか?


薄々感付いてはいたのだが、クラスに明らかに自分と良く似たオーラを放つ男がいた。

見たところどうやら彼もクラスに知り合いがいないようで、自分と同じように授業中以外は教室にいないのだ。

ちなみに彼はKくんといい、当時は全く面識もない男だった。


そうこうしてるうちに、ある時席替えか何かで席が前後になったことがあった。

すると、またある時彼の方から話しかけてきたのだ。


『そういや自分、ギターやってるん?』


『おう、やってるで』


とりあえずはこれだけだったが、逆に言えばこれだけで意思は疎通した。


当時の心境を後から聞けば、なんと二年生になってから僕と全く同じことを考えていたという。

新しいクラスに知り合いがいなく、休憩時間ごとに外出していたこと。

そして自分に良く似たオーラを放つ男の存在を確認していたこと。

向こうも向こうでいずれ話しかけてみたいと考えていたようだが、こちらのオーラがあまりにもアンダーグラウンドでなかなか近寄りにくいものがあったらしく、なかなか機会を見つけれずにいたようだ。


Kくんは今や伝説に残るベーシストで、当時もとあるバンドでベースを弾いていたのだがその時ちょうどギターを探していたのだった。

その頃は個人的にはSKID ROW やメタリカ、そして相変わらずエックスをコピーしていたのだがその辺りの趣味も合い、予想以上に早く打ち解けることができた。

同じロッカーとはお互い通じ合うものがあるのだなと初めて認識した瞬間でもあった。


彼とは今でも一番の親友で、今や妻子ある身なのでなかなか会う時間は無いが、それでも唯一無二の親友としての存在は変わらない。

そんなK君との出会いにより、高校生活はより深みを増す。

何より大きかったのは初めて本格的にバンドを組めたことだろう。

直接は関係ないが、一番驚いたことは、当時外国マフィアのような風貌で、明らかに番長的な存在であったN君がそのバンドのドラマーだったということだ。

ちなみにモヒカンであった。


それ以来、付き合い出す友達にも変化が現れる。



筋金入りのワル共と盗んだバイクで走りだす…



ことはなく、K君が当時つるんでいた人達とも気が合い、そこから卒業までほとんど一緒に過ごすこととなるグループに出会う。

その中で一段と異才を放っていたやつがある。

Y君だ。


こいつは今まで出会ってきた人の中でも最も最低で最高な奴だ。

ここまでのバカは本当に見たことがない。

今でもこの3人で会うことがあるのだが、まさしく汚れ芸人である。

一つ例を挙げるならば、週に四度も大便を踏んでしまう奴は恐らくいないと思う。

しかもそのうちの一回は自らのものであることを付け加えておこう。

ネタとして面白い件に遭遇するという、所謂笑いの神が舞い降りる機会の多さは僕もたいがいだが、奴はその比ではない。

書ききれないほどの様々な伝説を残してくれた。


この3人でつるむようになってからというものの、ほとんど学校へ行かなくなってきた。

K君の家を根城にし、この頃から大人気だったウイニングイレブンや麻雀、そして当時大流行していた自作『コント』に明け暮れていた。


しかし、タバコは吸ってはいたものの、この年ごろにありそうな『不良の道へ』というようなことは一切なかった。

もちろん悪い誘惑があったり、周りにそういう友達がいたりはしても、あくまでも自分は自分というスタンスは変わらなかったようだ。




高校二年生の主な学年行事というと、やはり修学旅行だろう。

この年は長野の志賀高原へのスキー旅行だった。

スキー自体は楽しかったのだが、この時も2つほど誤算を生む結果となった。


一つは、移動中の車内で行われた『クイズ大会』。

クラス内で男女合わせて5~6人のグループに別れていて、そのグループごとに得点を競い合うというような催しだったのだが、出題される問題というのがたまたま自分が得意とする分野が多かったためにほぼパーフェクトな解答を同じグループの女子連中にアドバイスしていた。


ちなみに同じグループの男友達はもちろんK君だ。

付け加えておくが、二人ともアンダーグラウンドなキャラクターなので、こういった行事や、クイズ大会のような催しに積極的に参加するイメージは微塵も無い。


しかし、そのパーフェクトな解答が災いし、少し恥ずかしい思いをするハメになる。

その夜、宿泊先のミーティングスペースにて、車内のクイズ大会の成績発表会のようなものが行われた。


周りの連中は、もちろん表彰されたいがためにクイズを頑張っていたようだ。


しかし、パーフェクトな解答を残してしまった自分らが一位で表彰されてしまうのは当然の報いだ。


いや、別に今となってはただ表彰されるくらいは何てこともないのだが、当時のキャラクターというものがある。


つまり、そういう表彰などを決して受けてはいけないアンダーグラウンドなキャラクターだったのだ。

当然会場内はザワつく。


『なんであの人らが…?』

のオンパレードである。


たいしたことない誤算のように思えるだろうが、クラスのクイズ大会に優勝するロッカーがどこにいよう。


そしてもう一つだが、就寝は男女別の7~8人ずつのグループに別れて部屋割りされていて、さらにかなり厳しい就寝時刻設定がなされていた。

部屋内に一人でも就寝時刻を過ぎて部屋から出てる者がいると、連帯責任として部屋内全員が朝まで正座、そして翌日のスキーは部屋内での謹慎という事だった。

しかしロッカーに就寝は無い。


同じ部屋のK君と共に、他の部屋に混じって遊んでいたのだ。

だが先生方はそう甘くない。


すぐさまそれを暴き、自分らと同じ部屋の人達も呼び出され、やはり正座させられた。

いかにロッカーといえど、他者様に迷惑をかけてはいけない。

そこで僕とK君は先生方に直訴し、僕ら二人以外の子らは関係ないので許してあげてほしいと頭を下げた。

もっとも、許すもなにも彼らは悪いことは何もしていないのだが。

その甲斐あって自分達二人以外は許されることになった。

だが、不幸中の幸いというべきか、翌日のスキー実習の日は辛くも超の付く悪天候に見舞われ、スキーどころではない吹雪きようだったのだ。

それを尻目に僕とK君は暖かい部屋の中でお茶をすすりながら音楽の話をし、のんびり足を伸ばしていたのは言うまでもない。


そしてこの修学旅行、前述のY君も様々な伝説を残していたのだが、R指定にひっかかってしまう恐れがあるので胸の内にひっそりとしまい込んでおくことにしよう。


次回予告。
卒業!?留年!?


続く。

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↑授業中