深夜特急 | Perfumeって何?オルタナティブ

深夜特急

--------------------------------------
「なぜたった1日で会社を辞めてしまったのか。
理由を訊ねられると,雨のせいだ,といつも答えていた。
私は雨の感触が好きだった。雨に濡れて歩くのが好きだったのだ。
雨の冷たさはいつでも気持ちよかったし,濡れて困るような洋服は
着たことがなかった。
ところが,その入社の日は,ちょうど梅雨どきであり,数日前から
長雨が降り続いていた。
そして私の格好といえば,着たこともないグレーのスーツに黒い靴を履き,
しかも傘を手にしているのだ。
よほどの大雨でもないかぎり傘など持ったこともないというのに,今日は
洋服が濡れないようにと傘をさしている。
丸の内のオフィス街に向かって,東京駅から中央郵便局に向かう信号を,
傘をさし黙々と歩むサラリーマンの流れに身を任せて渡っているうちに,
やはり会社に入るのはやめようと思ったのだ,と。この話に嘘はない。」

   (沢木耕太郎 深夜特急2より)
--------------------------------------

サンケイ新聞の夕刊で「深夜特急」の連載が始まったのは1984年6月17日からである。
この,会社を辞めたくだりは,初出ではないと記憶している。
確か,雑誌の見開き2ぺージの中に書いてあった。なんの雑誌だったか…

”雨が降ったら困るような服を着なきゃならない。
 そう思って,僕は会社をやめた。”

こんな風に記憶している。
そして,そのずっと後,僕も会社を辞めることになる。