この前の続きです。
しばらくたった頃、私の事務所に手紙が来ました。私あてのようで、こう書かれていました。
「渡したい物があるので、来て下さい」
ここによく来るファンレターに混じっていて、最初はマナーを守らないファンのいたずらかと思ったけど、書かれた住所の下の方に、サインが描かれていました。
「ああこれ、八十亀ちゃんからのや。また会う時のために秘密のサインを決めていたんや。消印も名古屋やから間違いない」
「まるで花押ね」
そして、海老田と一緒にその場所へ行ってみました。
JR千駄ヶ谷駅の近くにあるアパートまで来て、手紙に書いてある番号の部屋に行ってみました。そこにある表札には見知らぬ苗字が書かれていました。
そこへ、誰かがやって来ました。
「あ、あのう、もしやあなた達でしょうか」
管理人でした。その部屋は少し前まで老婆が住んでいて今は別の人が入っているという事でした。そして、目の上にメガネをかざしている女性か帽子を被っていてやたら元気な女の子のどちらかが来たらある物を渡してくれるように頼まれていました。
「ていうか、何で私が子供みたいに言われるのよ」
「どう見てもそうやろ、海老田」
そしてそれは、パソコンでした。
前の人がこれを部屋に置いていって、もし別の人が入居してきたら、管理人から受け取るように手紙にも書かれていました。
「そやけど、パソコンぐらいうちにもあるで」
一方、田金高校写真部部室では、八十亀最中が何かを持ち出してきて設定をしている様子であった。
そして・・・。
「さあ準備ができたがや。映し出してみよや」
そこにあるパソコンの画面に何かが出てきた。それを陣界斗が見ると・・・。
「あ、これは・・・おーい、笹津、来てごらん」
その時眠っていた笹津やん菜は無理矢理起こされて、そのあと画面の所に来て、見てみた。
「あーっ、あか先輩」
「どや、すごいやが。うちが東京にいたばっちゃとこれで通じてたがや。やからばっちゃに頼んで家にあったのを持ってきたんや」
すなわち、八十亀が小さい頃に東京に行ったお婆さんからパソコンを通じて話しかけてきていて、それで、東京の下宿に置いていった方をあか先輩に引き取ってもらい、いつでも話ができるようにしてあげたという事である。
「だけど、アドレスがわかってたら、どのパソコンでもできるんですわ」
只草舞衣が突っ込もうとして思いとどまった。
そして、笹津やん菜は画面にいる水瀬明南と会話を楽しんだ。
そのあと・・・。
「ああ、あか先輩と久々に話した」
「笹津先輩は、あか先輩と一緒にいる時が一番充実してますわ」
「そやけど、あか先輩はモデルの仕事で忙しいし、私も学校の授業を受けてるから、いつでも話しするわけにはいかんや。そやからうちらが互いに時間がある時を見つけてアクセスする事にしようとさっき決めておいたし。それから平日は1時間な」
「そうですわ。長電話は時間の無駄ですわ」
「そうだな。それから、笹津が眠ってたらどうする?」
「時間が来たら起きるわい」
「じゃあ、もし起きなかったら無理にでも起こしてやるし」
「いらんお世話や」
「ふふ」
「だ」
こうして、笹津やん菜は、水瀬明南と時折話していきました、とさ。
このイラストには元になった画像があります。それについていずれお教えします。