創作「少年勇者の旅立ち」37 | 如月エルフのブログ

如月エルフのブログ

セーラー服とマンガと○○と呪われし女装子

それからゼンは、ずっと立ったままでいる巨人のほうに向かって少し歩いていき、そして叫びました。「あのドラゴンと戦って」
すると巨人は、暴れているモンスターのほうへ歩き出しました。そしてその近くまできて、殴ったり蹴ったりし始めました。
モンスターのほうも、それに答えるかのように相手に攻撃をしてきて、そして両者による格闘となりました。
「おお、あの巨人は味方なんだ」先生は驚きました。「しかしどこから来たんだ」
「壷の中からだよ」ゼンが答えました。
「え?」先生はまだ意味不明の様子でした。
「つまり、これが壷の力なんです。おれも最初見たときは驚いたけど、本当すごいです」ディップはまだ興奮を抑えきれないでいました。
「一体何がどうなってるんだか」
まだ理解不能な状態の先生に対し、ディップが説明を始めました。
「おれが洞窟のあるところに行ったとき、ゼンの無事な姿を見たんです。それから町が大変なことになってるのを説明したら、ゼンはあの壷を持ってきて地面に置いて、それから何かつぶやいて、それでしばらくしたら、壷から煙が出てきたかと思うと、突然、その巨人が出現したんです。壷の中から。間違いなく。そのあとゼンが、おれ達を町に連れていくように巨人に命令したら、おれらを手でつかんで飛んでいってくれたんです。ヒャー本当すげえです」
「おいそうなんか。信じがたい話だが。というか、ゼンはどうしてあの洞窟の地下から抜け出せたんだ」先生はゼンの顔を見て言いました。
今度はゼンが話し始めました。
「ぼく、地下6階のあの部屋に閉じ込められて出られなくなって、どうしようもなくなって、そのとき壷を近くに落っことしたのに気付いて、それに向かって、何とかできないかなあと考えたんです。そしたら、突然そこからあの巨人が出てきて、最初は驚いて何もできなくて、それから少し落ち着いたところで、その巨人に対して、ここから出してくれないかなあと叫んでみたんです。そしたら、上に飛び上がって、天井に両手を付いたまま浮いているみたいになって、それで部屋がものすごくゆれて、しばらくしたらゆれが止まって、巨人も床に降りてきて、それから何も起こらなくて、そのあともしやと思って部屋の扉を開けに行ってみたら、洞窟の外になってて、何だかよくわからなくて、するとそこにディップ君がいてて・・・」
「うーん、というか、その地下の扉と地上がどうつながってたんだか」
「言い忘れてましたが、洞窟のあったところにでかい家みたいな箱があって、そこからゼンが出てきて・・・」
「そうか、そのでかい箱とやらは、その洞窟の地下5階と6階にまたがる部屋なんだな。さっき何かが飛び出したのはそれだったんだな」
「そう、そうですよね」ディップが叫びました。
「そう。ゼンが壷から出したという巨人が部屋を中から押して飛びながら地上へ出したんだな。それで謎が解けたぞ。あの洞窟を作った昔の人は、巨人が壷から出てきたとき、そのはずみで洞窟が崩れないように、巨大な部屋を作ってそこに壷を置いたということだな」
「なるほど」ディップが感心しました。
3人の会話がいったん止まったとき、見てみると、モンスターと巨人との格闘がずっと続いていました。
「ようし、あの巨人が味方となれば、怖いものなしだ。ところで、あの巨人の名前は何かね」先生が聞きました。
「そういえば知らないです」「ぼくも」ディップとゼンは答えられませんでした。
「特に名前とかはないか。とりあえず、壷の魔人としとこうか。ようし、魔人、がんばれー」「がんばれー」「がんばれー」3人は応援しました。
モンスターの頭上にいるダギーは、突如現れた魔人に戸惑いました。しかし、「くっ、あいつ、とうとう壷の謎を解きやがったか。だったら、こちらは奮闘してぶっ倒すまでだ」と、気を取り直して、格闘にのぞみました。