「ああそうだ、あの事件だ。全く不思議だ。何しろ、死体の頭の後ろだけに変な傷がいっぱいあるんだから」
「凶器は判るかな」
「確か、傷の大きさから見て、長さ10インチ、幅3インチ程の、棘というか、牛の角みたいな形のものかな」
「それで刺した?」
「そうだ、何度も何度も」
「違うな」
「え?」
「確かに刺し傷ではあるが、それらは均等に並んでいたはずだ。ほぼ縦2列に」
「ということは、その棘が並んだような物で一度に刺した」
「傷の穴は左右の外側に向いていた」
「だとしたら、縦1列に2回」
「そのような物がこの世に存在するか?」
「作ったんだ」
「それになぜ後ろから刺した?」
「逃げようとしたところを追い詰めたのでは?待てよ、これでは傷が外側を向いていた説明にはならんな。あるいは、東洋では頭の後ろから刺す殺し屋がいるという人もいるとか」
「ナツメ君、どうかね」
「うーん、これは聞いたことないですね」
「第一、まだ殺人と決まったわけではない」
「確かに、だけど、凶器のような物は現場に落ちてなかったから、犯人か誰かが持ち去ったんだ。あ、そうだ、あれ」
私は、包みに入った例の物を持ち出した。