第二話 フラーレン -ナノカーボン研究の幕開け-
どうも、りんとらから「不定期じゃなくて週一更新にして」と絶望的な通告を受けたサイエンス中野(炭素)です。今回はフラーレンという物質をテーマに記事を書いていこうと思います。
フラーレンは1985年に発見された物質です。炭素原子が60個サッカーボール状になった物質で、Element Creatorsでは工業化学のカードとして収録されています。発見当時、ダイヤモンド、グラファイト(黒鉛)に次ぐ第三の炭素の同素体として名を知らしめました。ちなみに同素体とは原子の結びつき方が違うけど構成している原子の種類は同じ物質のことです。
この物質は化粧品などに使われていて、光学部品、電子部品への使用が期待されている物質です。このようなフラーレンの応用について話したいのは山々なのですが、今回のテーマではないので別の機会にお話しするとしましょう。
さて、本題に入ります。このフラーレンを発見したのは、クロトー、カール、スモーリーという三人の研究者です。彼らはもともと星間物質(恒星の間の宇宙空間に存在する物質)について研究していました。その研究の過程でC₆₀という分子を発見しました。そして彼らは1996年にノーベル化学賞を受賞しました。
しかし、このフラーレンの発見直後はあまり研究が進みませんでした。なぜならフラーレンを合成する機械がかなり高級なうえに、十分に物性評価するのには採れるフラーレンの量が不十分だったからです。かみ砕くとハイコスト・ローリターンだったということです。
打って変わって、世界中でフラーレン研究ブームがやってくるのは1990年のことです。それはある学会にてクロトーが行った発表です。当初は炭素ではないクラスター(微粒子)についての研究発表の予定でした。しかし、クロトーは予定していた内容の発表をでっち上げ、C60の話をするといって壇上にある男を呼びました。そしてクロトーは「彼がC60の大量合成法を発見した」と言いました。それを聞いた皆が釘付けです。しかも今までの合成法より安価で単純なものでした。講演が終わる頃には会場に殆ど人が残っていませんでした。皆我先に確かめたいと自分の研究室に帰ってしまったようです。この後、この大量合成法を発見したクレッチマーとホフマンは高く評価されました。
この合成法を簡単に説明しますと、炭素に電気を流して高温にして気化させます。そして気化した炭素が“すす”になります。この“すす”にフラーレンが含まれています。特にフラーレンは陽極側にあるすすに含まれています。
この大量合成法の発見に多くの研究者が熱狂し、世界中でフラーレンの研究ブームが起こりました。これによってフラーレンの様々な特性が明らかにされました。この時の研究者は文字通り放電し、陽極のすすを採り、研究を進めていました。皆、陽極のすす“のみ”を研究していました。
大量合成法発見の翌年、世界でひとりだけ陰極のすすについて研究した研究者がいた。彼の名は飯島澄男——カーボンナノチューブの発見者である……

