第二十二話 宇宙開発新時代 -3Dプリンターでロケットを作る-
どうも、ルールブックⅡに自分の記事が載ってて嬉しかったサイエンス中野(炭素)です。
皆さん、突然ですが3Dプリンターでロケットを作るという構想はご存知でしょうか。2010年過ぎ頃から、公にこの構想が言われるようになりました。2013年にNASAが3Dプリンターで作った部品を使ったエンジンの燃焼実験が成功し、2017年に3Dプリンターで作った部品を利用したロケットの打ち上げに成功しました。
そして2018年4月、NASAがとある計画を発表しました。100以上の部品を3Dプリンターで作ったロケットに乗って、我々人類は再び月を目指そうというものです。アポロ17号以来、月に有人ロケットを飛ばしていません。しかし、約半世紀振りに新ロケットが変えるかもしれません。
2023年に新ロケット「オリオン」は地球を2周し、月を数周してから地球に帰還する予定です。地球に帰還するということは、大気圏に突入する過程を経る必要があります。しかし、3Dプリンターに使用するのはプラスチックですが、一般の3Dプリンターに使用するプラスチックでは到底大気圏突入には耐えられません。
では、どのような材料を使うのでしょうか。結論から言うと、やはりプラスチックです。ただ、大気圏突入に耐えられる特殊なプラスチックを使います。
オリオンの部品を担当する3Dプリンターメーカーであるストラタシス社は極端な熱や力にも耐えられる「Antero 800」というプラスチックを使うとしています。この新素材はジェット燃料や油に触れても化学反応をしないという利点があります。
更に、Antero 800は宇宙船の電気系統に異常が起こるリスクを最小限にするよう設計されています。宇宙で静電荷が溜まって電気系統に放電し、代替不可能な部品を壊してしまう恐れがあるからです。そしてその設計とは、Antero 800にカーボンナノチューブを添加して、静電荷を逃がすようにしたことです。
さて、少しは化学っぽい話をしましょうかね。このAntero 800。主成分はポリエーテルケトンケトン(PEKK)という物質です。
では、PEKKはどのような物質なのでしょうか。
PEKKとはベンゼン環がエーテルとケトンで直鎖状に連なっています。下の図の分子が延々と繋がっていて、Oがベンゼン環を繋げている部分を「エーテル」、CがOと二重二重結合しながらベンゼン環を繋げている部分を「ケトン」と言います。化学では、延々と繋がっているのを「ポリ」と言いますから、「ポリエーテルケトンケトン」という名前になるわけです。
一般的にはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の方が一般的に広く利用されています。結晶性の熱可塑性樹脂です。このPEEKも高い耐熱性、耐疲労性、耐薬品性、加工性を持ち、航空宇宙関連に利用されています。
そう遠くない未来、プラスチックが航空宇宙工学を進化させ、新たな宇宙開発の時代がやって来るのかもしれません。ひょっとしたら、今がその幕開けかもしれませんね。

