第十三話 ボランと3中心2電子結合
どうも、泣く子も泣き続けるサイエンス中野(炭素)です。今回はボランと呼ばれる水素とホウ素の化合物について話したいと思います。
まず、モノボラン(BH3)という物質があります。この物質は単独では不安定で、二量体のジボラン(B2H6)という形で存在します。その物質がこちらです。
薄橙色の球がホウ素原子、白色の球が水素原子です。この球棒モデルを見て、不思議に思う人が居るかもしれません。基本的に水素原子は1つ、ホウ素原子は3つまでしか結合できません。でもこの球棒モデルでは水素原子は2つの結合、ホウ素原子は4つの結合をしていますよね。
通常の化学結合は2つの電子で2つの原子が結合する「2中心2電子結合」というものです。ですがジボランの不思議な結合は、2つの電子で3つの原子が結合する「3中心2電子結合」です。この結合により、本来よりも多い結合をすることができます。
他にもトリメチルアルミニウム(Al(CH3)3)の2量体(Al2(CH3)6)という分子もこの3中心2電子結合のある構造をとります。
そして、この結合のある構造をもつ物質で「カルボラン酸」という物質があります。それがこちらです。
これがカルボラン酸の球棒モデルです。緑色がホウ素、黒が炭素、白が水素、黄色が塩素です。ホウ素原子と炭素原子同士が6つの結合をし、正20面体を形づくっています。
そして、このカルボラン酸という物質は単独分子の酸としては史上最強の酸だと言われています。単独分子ではないものだとマジック酸などさらに強い酸はあります。が、それでも相当強い酸です。
ではなぜカルボラン酸が強い酸なのでしょうか。それは、周りの塩素原子が結合しているホウ素原子の電子を強くひきつけます。そのしわ寄せが炭素原子にきて、炭素原子の電子が周りのホウ素原子の方へ引っ張られます。その結果、炭素原子と水素原子の結合が弱くなって、水素原子が水素イオンとして離れやすくなるからです。
さらに、水素イオンが離れて生じる陰イオンは負電荷が偏りなく存在するようになり(非局在化)安定するのも、カルボラン酸が強い酸である理由の一つです。
今回は3中心2電子結合のある構造をもつ物質についてかきましたが、他にもこの結合がある物質はあります。それに、特殊な結合はこれだけではなく、3中心4電子結合などもあります。興味のある方は是非調べてみてはどうでしょうか。

