第十話 北川マジック -現代の錬金術-

 

どうも、ネタ切れが刻一刻とせまりつつあるサイエンス中野(炭素)です。今回は北川マジックというものについて記事を書きたいと思います。

 

皆さんは、錬金術とはどのようなものかご存知でしょうか。簡単に説明しますと、ありふれた金属から金を作ろうという試みです。あいにく、錬金術は失敗に終わりましたが、錬金術の研究により化学の発展が加速しました。仮に錬金術がなければ現在ほど化学は発達していなかったかもしれません。

現代の産業では金だけでなく他の価値の高い金属(ロジウム、パラジウム、白金など)も使われています。それらの貴金属は携帯電話やパソコン、自動車などに使われ、微量ながら欠かすことのできない資源です。

 

もし、これらの貴金属の代わりに安価な材料で同じ役割を果たせるとしたら。大幅なコスト削減につながりますよね。

 

それを実現してくれるかもしれない技術があります。それが北川マジックです。

 

北川マジックとは元素αと元素γを混ぜてその間の元素βの性質をもつ物質を作り出すことです。正式には元素間融合という技術です。

北川マジックの発端は、水素吸蔵合金の研究です。パラジウムという金属は、中に水素を貯めるという特徴があります。しかし、水素を原子の状態でないと貯められず、分子を原子にするという作業をしなければなりません。その作業をしてくれるのが白金です。パラジウムの周りに薄く白金をつけることで水素を貯めることができます。

この実験を繰り返している内に、この研究をしていた北川研究員はあることに気づきます。だんだんと吸収する水素の量が増え、パラジウムと白金が混ざっているのです。これまで、パラジウムと白金は水と油のように相性が悪く、決して混ざり合わないというのが通説でした。しかし、この合金を調べてみると原子レベルで混ざり合っていることがわかりました。

 

その後、次の実験ではロジウム(原子番号45)と銀(47)を混ぜてパラジウム(46)を作ろうとします。この実験は成功するまで2年半かかりました。パラジウムは前述した通り、水素を吸収します。ロジウムと銀にはそのような能力はありませんが、本来混ざり合わないはずのロジウムと銀の合金には水素を吸収する能力がありました。流石に天然パラジウムには劣りますが、確かにロジウムと銀からパラジウムの特徴を持った物質を作り出すことに成功しました。

 

 

今回の話は日本の国家的施策の「元素戦略」が始動したきっかけとなる研究です。この「元素戦略」は研究の話だけでなく、産業、科学者、技術者、政府などが絡む大きなスケールのお話です。「元素戦略」について書きたいのは山々なのですが、どうもここに収まる気がしません。とても興味深い話なので、皆さんと共有したいのですが、この場ではできません。なので、中山智弘氏の書籍「元素戦略」という本をお勧めします。ネットでも「元素戦略」についてさまざまなことが書かれています。もし、時間があれば「元素戦略」についてしらべてみてはどうでしょうか。