芝居空間侍エレクトリカルパレードぶろぐ部 -2ページ目

芝居空間侍エレクトリカルパレードぶろぐ部

東広島で活動中のエンターテイメント時代劇集団「芝居空間侍エレクトリカルパレード」のブログです。

本番まで10日を切りましたが続々と参ります!

 

*侍TTP旅のしおり*

 

ブログ限定企画第3弾は……

 

とりつく島にも花が咲く
脚本・演出の小池悠実にインタビュー!



*目次*
①脚本について
②演出について
③キャストについて
④こだわり
⑤最後に

 

 

①脚本について
井:元々お笑い畑の小池くんが書いた脚本は、2018年4月1日、小学校の同窓会で30年ぶりに再会した「くろやん」「さのっち」「スケベ」の3人が繰り広げる会話劇ですね。
    
小:殺陣なし!ダンスなし!イケメンなし!かっこいい台詞なし!侍らしからぬ地味な脚本です。かっこいいキャラとか台詞、書けないんですよね。

確かにアクションや決め台詞のようなわかりやすい見せ場があるのではなく、何気ない会話の中に笑いが散りばめられている、4作品の中でも異色の作品となっています。

そうですね。僕は小林賢太郎やTEAM NACSが大好きなんですが、彼らの作品は何か劇的なことが起こるのではなく、キャラクター達がただ喋ってるだけで状況やキャラクターの気持ちが大きく動いてしていくんです。だから僕も脚本の構成そのものでお客さんを楽しませたい、という気持ちが強いですね。

また、イケメンなし、とのことですが、今回の登場人物は全員平凡なおじさんですよね。

元々「流れる時代」をテーマにしたかったので、昭和から平成、平成から令和という時代の移り変わりを二度経験した世代を書きました。実は彼らの思い出話の舞台は1989年、昭和から平成に変わる年なんですよ。
あと単純に「おじさん」が好きですね。特に、ちょっとかっこわるかったり、ダメだったり、変だったりする“持ってない”おじさんに惹かれます。


今回は「ぐっさん」というホームレスが登場しますが、その“持ってない”人ということですか?

そうですね。でも“持ってない”のは「ぐっさん」以外のキャラクターも皆そうなんですよ。この脚本は、“持ってない”人の、他人からすれば何でもないようなことだけど、本人からしたら深刻な大問題。それを解決する物語……“マイナスの人をゼロにする話”です。

ゼロにする、というと?

過去が変わることはなくても、出来事の捉え方が変われば救われることってあるじゃないですか。
ないと思っていた希望が、未来が、実はそこにあったんだよって見せることで、プラスは無理でもゼロになる。またイチからスタートできるようになる。そうやって救われる作品を書きたいと思っています。


救済のストーリーを「笑い」に包んで見せるのが小池くんならではという感じがします。こういったコントや漫才のような掛け合いを書くのは楽しいですか?

楽しいですね。笑いを詰めて詰めて詰め込みたい。お客さんに飽きる暇を与えたくない。そうして書けばかくほどネタが増えるし、前半で深く考えずに入れた小ネタが後半でどんどんつながってきたりする。

書き手が一番気持ち良い瞬間じゃないですか。

でもそしたら脚本が長くなり過ぎるんですよ!つながっちゃったら片方切るわけにもいかないし……

ジレンマですね。

 

 

 

②演出について

演出として力を入れていることは?

限りなくコントに近い演劇なので、とにかくお客さんを笑わせるために全力を尽くしたいですね。
演者自身の外見とか学力みたいなコンプレックスで笑いを取ることについては賛否がありますけど、僕はネタにする=マイナスをプラスに転換する行為だと思うんです。
たとえば「ぐっさん」はちょっと頭のおかしいホームレスというキャラクターですけど、僕はそういう人たちを馬鹿にしたくてやってるわけではなくて、振り切れた人の魅力、愛すべき部分を見てもらいたい。親しみを感じてもらいたいんです。


それはかなり繊細な演出が必要ですね。

はい。笑ってもらえるよう、でも誤解や嫌な感じを与えないよう、皆のプラスになるようにギリギリのラインを模索しながら取り組んでます。

 

 

 

 

 

③キャストについて

今回の出演者について聞かせてください。いい感じですか?

最初は男手不足でどうしようかと思いましたが、なんだかんだいい感じに収まりましたね。
 

*黒やん*小池悠実

 

黒やんは大人しくて周りに合わせるタイプの所謂バランサーです。
今回のように笑いの多い舞台は、お客さんの空気を読みながら役者も演技を変えないといけないから、双方の様子をみて演技を調整するバランサーって結構重要なんです。
重要な割に地味な役どころですけど、僕の性格に合ってるのか、意外と楽しんでやれています。


*さのっち*佐藤伸哉

さのっちは勢いがある役でもわかりやすいツッコミタイプでもないので、面白く演じるのが結構難しいキャラです。「ここは面白いシーンですよ」ってお客さんにわかりやすく示すテクニックが必要なんです。
さとしんさんはスベリ芸の印象が強いですが、元々「おもしろ」にすごく敏感で、かつそれをちゃんと演技で示せるんですよ。
ただネタ自体が面白くないとスベることになるんですけど……“ネタ”と“ネタを演じる技術”は別物ですからね。


*スケベ*住吉拓海
スケベは勢いよくツッコんで勢いよくイジられるキャラクターです。
拓海はすごいですよ。存在が面白いって言うんですかね。
脚本の性質上、台詞を覚えて舞台で喋ればそれなりに面白くなる代わりに、想像を超えた面白さを出すことは難しいんですが、拓海はそれをやってくれるんですよ。
僕にできないことをやってくれる男です。
まあ、ノッてきたらたまに台詞トぶのが困りものなんですけどね。


*ぐっさん*小林達矢
ぐっさんは出番は少ないですが重要な役です。
かなり振り切れた役なので、僕自身試行錯誤する中、失敗を恐れずいろんな形で演じてくれる、こちらから投げかける以上に色々試してもらえるのはありがたいです。
ホームレスの胡散臭さとかアブない・近寄り難い空気を醸し出せるのはすごいなと……いやこれ褒めてますからね。

 

男手不足、とのことでしたが、今回の4作品で唯一キャストが全員男性の作品なんですね。

 

はい。男だらけでむさく楽しくやってます。

 

 

④稽古場では

さっき少し話しましたが、お客さんを笑わせるには、演技力と別で“ネタを演じる技術”が必要ですから、それを鍛えるためにコントエチュードに取り組んでます。
ネタの良し悪しは関係なく、自分の役割(ボケ/ツッコミ)に沿って見せたいもの=笑い所をわかりやすく示すテクニックやリズム感を身につけるための練習です。
この作品は純粋な演劇では決してないし、かといって新喜劇みたいなコテコテのコメディというわけでもない。
バランスをとるのに苦労してますけど、その中で僕の見せたい「笑い」を真摯に突き詰めていきたいと思います。


「お笑い」ってシリアスな演劇より気楽なイメージを持ちがちですが、同じようにストイックな世界なんですね。

ですね。あ、けど稽古場は楽しいですよ。稽古を楽しむようにしてます。
だって、やってる本人が楽しくないとお客さんだって楽しくないんです。
お笑いもそうですから、演劇だってきっとそうなんですよ。

 

 

 

 

 

 

⑤最後に

ごちゃごちゃ言いましたが、何も考えずに笑って楽しめる作品です!
2回目も観てもらえるように頑張ります!!

 

 

 

 

以上、侍TTP旅のしおり第3回「とりつく島にも花が咲く」編でした~!

次回は「00-reiwa-東広島妖械機録-」編!お楽しみに!

 

 

--------------------------------------------------------

 

■公演概要

芝居空間侍エレクトリカルパレード番外公演
「侍タイムトラベルパレード」

「時は流れ、人生は続く」
今回の侍は「時代」をテーマにした4作品から成るオムニバス公演!
切なく、激しく、そして熱く、4つの時代を生きるものたちの姿を鮮烈に描き出す!
過去と未来を繋ぐ"タイムトラベルパレード"へようこそ!!

【演目】
『空海夜行風流談~人魚姫の章~』
『平賀源内奇談』
『とりつく島にも花が咲く』※上演回:①③のみ
『◯◯-reiwa-東広島妖械機録』※上演回:②④のみ

【日時】
8月24日(土)  ①13:00 / ②18:00
8月25日(日)  ③11:00 / ④15:00
(開場は開演の30分前、上演時間は120分を予定)

【場所】
東広島芸術文化ホールくらら 3Fサロンホール

【料金】
前売り(事前精算) 1,500円
前売り(当日精算) 1,700円
当日券 2,000円


【キャスト】
森新太郎
小池悠実
佐藤伸哉*
柳ヶ瀬祐規
宮﨑香陽子
吉原愛莉

小林達矢(フリー)*
中野歩(プロ和太鼓奏者)
大原伊織 (フリー)
住谷拓海(フリー)
爲政茉佳 (広島大学演劇団)
松原浩子(広島大学演劇団)
宝子丸ゆうか (フリー)
*佐藤伸哉・小林達矢は「空海夜行風流談」Wキャストです。
 添付の演目早見表をご参照ください。

【SNS】
○Twitter
@elekisamurai
○Instagram
@elekisamurai

こんにちは、ブログ担当の井手口です!

今回もいきますよ!

 

*侍TTP旅のしおり*

 

第2弾は……

平賀源内奇談

脚本・演出の森綾子にインタビュー!
 

 

 


*目次*

①脚本について
②演出について
③キャストについて
④こだわり
⑤最後に

 

①脚本について

井:本作は江戸時代、平賀源内の話ですね。「大江戸ばっくとぅざふゅーちゃー」(以下「大江戸BtF」)を始め、侍では源内を主人公とした作品がいくつかありますが、綾子さんが本作を書いたきっかけを聞かせてください。

綾:着想を得た時期としては、第十一陣「大江戸BtF」の頃ですね。源内が登場する森新太郎作の短編作品「平賀源内えれき伝」を広島市内で上演することになって。
その脚本を森新太郎が書いている時に、その作品について話したり、源内に関するエピソードを個人的に調べる中で、これは自分の解釈でも書きたいと燃えてきたんです。


燃えたエピソードというと?

源内は晩年、殺人の罪で投獄されて安政8年に獄中死したわけですけど、罪人だから、幕府から遺体を返してもらえなかったんです。
そんな中、私財を投じて墓と碑を建て、碑銘を撰文したのが友人・杉田玄白だった。
このエピソードと、実際の碑文を読んで、これは書きたいと!


  ≪碑文≫
  「嗟非常人、好非常事、行是非常、何死非常 」
  (ああ非常の人、非常の事を好み、行ひこれ非常、何ぞ非常に死するや)


なるほど。本作のストーリー自体は「狼人」騒動を解決するために平賀源内と杉田玄白が奔走する姿を描いたものですが、構成としては2人の別れに焦点を当てて作られています。

そうですね。あ、ちなみに、この作品では彼らの今生の別れを描いてますけど、これは悲劇ではないです。別れて、二度と会えなくなっても、理屈抜きで信頼し合える関係を描きたかったんです。

平賀源内の物語ではなく、平賀源内と杉田玄白2人の物語

そうですね。「大江戸BtF」や「えれき伝」と登場人物やストーリー展開で重なる部分がありつつ、キャラクター像やテーマは趣の異なるものとなりました。

 

 

②演出について

今回、演出するにあたってどんなことを意識していますか?

年輩の方も楽しめる作品にしたいです!
普段の侍は子ども~若者を主なターゲットで、勢いがあってテンポが早くて、わっと盛り上げる作品が中心ですよね。そういうのも勿論大好きだけど、この作品は、大人たちの目に見えないけど強い繋がりを静かにしっとりと描きたい。

年輩の方にもじっくり見て楽しんでほしいです。

じっくり見てほしいというと、具体的にはどんなところですか?

たとえば、今回はあえて登場人物の表情を見せないシーンがあるんですね。
普段の侍の作品だと、表情ははっきり見せて、この人物はこういう気持ちだとわかりやすく示すじゃないですか。
今回は明確に表情に出さない、出せない。辛い言葉も、辛そうに言わない、言えない。


大人の複雑な心情、ということでしょうか。

わかりやすく表に出さないけど、秘めている情熱とか信頼とか、隠している想いとか。そういう部分をお客さんの想像に任せたい。
オムニバスだからそういう普段と違う姿も見せていけたらいいなと思ってます。

 

 

 

 

 

③キャストについて

今回の出演者について聞かせてください。いい感じですか?

(力強く)いい感じです!!


森新太郎*平賀源内


源内役に森さんを選んだ理由は?

ず、ビジュアルですね。デカくて細い感じとか、「っぽい」というのがあります。

確かに「っぽい」ですね。天才?奇才?「っぽい」雰囲気。

あと内面的なとこで、源内は凄くひねくれたじいさんって感じイメージなんです。
ひねくれた大人なのに子供っぽい。人間嫌いだけど懐に入れた人間に対しては情に厚い。
森さんも相反する要素を内包してるとこがあると思っていて。繊細だけどおおらか。神経質だけど大雑把……。
そういう共通点があるので、森さんなら源内のひねくれた部分を表現してもらえると思ってます。



栁ヶ瀬祐規*杉田玄白

栁ヶ瀬くんを選んだのは、優しい柔らかい、学者っぽい空気を持ちながら、それだけじゃない秘めた毒と熱意があると思っているからです。

そうですね、凄くそんな感じですね。

玄白は結構人間が好きだったり、源内と対照的なイメージがあるんですね。
栁ヶ瀬くんという役者のイメージがそれにぴったりで。あとビジュアルもそれっぽい(笑)。


目元とかのまるいイメージが、するどいイメージの森さんと対照的ですよね。

あと、今回の見てほしいポイントとして「おじさん2人の会話」があるんです。性格が全く違う2人の、皮肉だらけだけど噛み合う、付き合いが長くないと、信頼関係がないとできない会話。
この2人ならそれが表現できると思っています。



爲政茉佳*おみつ

爲政については、ヒロインらしい可憐さと獣のような殺陣、両方できるのはコイツしかいないと。

け、獣のような殺陣……

彼女は元々ヒロイン経験あまりないらしくて、当初は弱々しいシーンでも動きがすごく鋭くて面白かったりしました。今はどんどんヒロインらしくなってますよ。
また、今回の見てほしいポイント②として、
「ヒロインが年上の男性へ恋焦がれる様子」があります。向こう見ずな感じ、若いからこそできる演技に期待してます。

 

 

④こだわり

今回のこだわりとして、まず基礎でマイナスを出したくないんです。
滑舌悪かったり台詞忘れたりしたせいで話が伝わらないとか、筋力不足で殺陣の迫力が伝わらないとかって凄く勿体ない。
だから普段大人数でやる時は、なかなか皆揃って取り組めない基礎練習をがっつりやってますね。
滑舌、筋トレ、スタビライザー、最近はヨガも。


おお、耳が痛いです……(10年近くまともに筋トレしてない)

個人的には毎回筋トレだけで1時間くらいやりたいんですよね。現実問題、時間的になかなか難しいところではあるんですけど。
今回、期せずして体育会系のメンバーが揃ったので、体鍛えて、それでできることが増えていくのが楽しい!みたいな。割と楽しくこなせているので良かったです。

 

 

⑤最後に

お客さん達に最後のアピールをお願いします。

おじさんに燃えたぎる芝居です!!
ぜひご覧ください!




以上、侍TTP旅のしおり第2回は「平賀源内奇談」編でした~!

 

次回は「とりつく島にも花が咲く」編!お楽しみに!

 

 

--------------------------------------------------------

 

■公演概要

芝居空間侍エレクトリカルパレード番外公演
「侍タイムトラベルパレード」

「時は流れ、人生は続く」
今回の侍は「時代」をテーマにした4作品から成るオムニバス公演!
切なく、激しく、そして熱く、4つの時代を生きるものたちの姿を鮮烈に描き出す!
過去と未来を繋ぐ"タイムトラベルパレード"へようこそ!!

【演目】
『空海夜行風流談~人魚姫の章~』
『平賀源内奇談』
『とりつく島にも花が咲く』※上演回:①③のみ
『◯◯-reiwa-東広島妖械機録』※上演回:②④のみ

【日時】
8月24日(土)  ①13:00 / ②18:00
8月25日(日)  ③11:00 / ④15:00
(開場は開演の30分前、上演時間は120分を予定)

【場所】
東広島芸術文化ホールくらら 3Fサロンホール

【料金】
前売り(事前精算) 1,500円
前売り(当日精算) 1,700円
当日券 2,000円


【キャスト】
森新太郎
小池悠実
佐藤伸哉*
柳ヶ瀬祐規
宮﨑香陽子
吉原愛莉

小林達矢(フリー)*
中野歩(プロ和太鼓奏者)
大原伊織 (フリー)
住谷拓海(フリー)
爲政茉佳 (広島大学演劇団)
松原浩子(広島大学演劇団)
宝子丸ゆうか (フリー)
*佐藤伸哉・小林達矢は「空海夜行風流談」Wキャストです。
 添付の演目早見表をご参照ください。

【SNS】
○Twitter
@elekisamurai
○Instagram
@elekisamurai

こんにちは、ブログ担当の井手口です。
 
大変お待たせいたしました、番外公演「侍タイムトラベルパレード」のブログ限定企画がついに始動!
題して……
 
*侍TTP旅のしおり*
 
今回は個性豊かな「侍」の正団員たちが、自分らしさ全開で演出した4作品を、「時代」オムニバスとしてまとめ上げ上演します。
演出へのインタビューを通じて各作品とその演出・キャストたちの魅力に迫る、必読の企画です!
 
それでは早速参りましょう!初回を飾るは……
 
空海夜行風流談~人魚姫の章~
演出・佐藤伸哉にインタビュー!
 

*目次*

 

 

 

①脚本について

 

井:「空海夜行風流談~人魚姫の章~」は川崎隆志さん(月鯨団※1)の脚本で、侍でも森新太郎の演出で2回ほど上演したことがありますね。
 
伸:すごく魅力的な脚本ですよね。森さんが何度も上演したくなるの分かりますし、僕も大好きです。
 
どういったところが魅力だと思いますか?
 
ストーリーと登場人物ですね。
中国での修業時代に出会った人魚を巡る、愉しく妖しい思い出話。シンプルな物語が、綺麗でかっこいい台詞で紡がれているんですよね。
わかりやすくて、面白くて、かっこいい。それってすごく魅力的だと思います。
 
続いて、登場人物の魅力と言うと?
 
川崎さんの描かれる脚本は登場人物全員が「主役」なんですよ。
「皇帝陛下の料理人(※2)」がわかりやすいですが、「空海」もそうだと思います。
人魚に惹かれ、日本へ連れて行こうとする空海。人魚を慕い置いて行かないで欲しいと縋る少女。そして、人魚は空海と少女2人共に愛着を感じている。登場人物が皆エゴイストなんですよね。
 
それぞれに譲り難い想いを持っているというか。
 
自分を押し付けてばかりじゃ人と生きていけないん一方、エゴがないと人は生きていけないと思うんです。だから僕にとって、自分と人との間で葛藤する彼らは、皆“生きている”主人公になれる人たちなんです。
 
なるほど。“生きている”登場人物達が本作のもう一つの魅力ということですね。
 
 
②演出について
演出としては、登場人物全員がお客さんの記憶に強く残るようにしたいと思っています。
それぞれの見せ場で、それぞれの存在をしっかりお客さんにアピールしたい……あのー、僕って結構目立ちたがりじゃないですか。
 
目立ちたがりですねー。
 
だから“どうすれば自分が一番かっこよく見えるか?”ということを常に考えてるんですね。それを演出に活かしたい。全員が目立てて、全員がかっこいい作品にしたいなと。
あと今回、全体的には脚本の雰囲気を活かしたスマートな舞台にしたいんです。ただ、それは淡々と芝居をするというわけではなく、シュッとしてる中に感情の揺らぎが迸って、それが鮮烈に印象に残るようなものにしたい。
 
揺らぎですか。
 
揺らぎって、葛藤から生まれると思うんですよ。3人のエゴが、お互いの気持ちが迸りぶつかり合う様を激しく、それでも美しく描けたらいいなと思ってます。
 
迸らせたいんですね。
 
迸らせたいんです。(頷く)
 
 
③キャストについて
今回の出演者について聞かせてください。いい感じですか?
 
いい感じです!
 
佐藤くん自身も出演しますが。
 
僕含めていい感じです!いや、僕は……どうだろう(笑)
 
空海*佐藤伸哉
 
さっきも話しましたが僕は「かっこつけ」なんで、シュッとした空海を演じられるんじゃないかと思ってます。一方で激しい感情をどれだけお客さんに伝えられるかっていうのが課題です。
 
今回特に感情にこだわるのはなぜですか?
 
空海という役については、自分の気持ち……具体的には人を救いたいとか人魚を幸せにしたいという切実でぎらついた欲求なんですけど、それでお客さんの心を動かしたいんです。そうじゃないと人魚の心を動かすなんてできないと思うんですよね。
 
空海*小林達矢
 
佐藤くんとWキャストで空海役を務めるのは小林さんですね。
 
小林さんは僕と反対に、生々しい、味のある演技をされる方なので、それを活かしてぎらぎらとした感情を見せつけてほしい。スマートな作品の中で激情をほとばしらせてほしい。それができる方なので、今回2度目の空海役をお願いしました。
 
 
人魚(沙羅)*吉原愛莉
小林さんに期待するのが“激しさ”なら吉原に期待するのは“美しさ”です。不老故の見た目の若さと、不死故に積み重ねた経験、人ならざるもののあどけなさが複雑に混じり合った美しさ。
 
不老不死の生きものを演じるって、かなり難しいように思います。
 
そうですね。けど、彼女は演じている人物のことを考えて表現することにすごく思い入れを持っているので、それを活かして、身体と感情を目一杯使って表現してもらえると思います。
 
少女(花陵)*松原浩子
 
広島大学演劇団・3年生の松原さんは侍初参加ですね。
 
松原は侍に興味を持ってくれてるという噂を聞いて、声をかけさせてもらいました。僕が目指しているスタイリッシュな雰囲気にも、純粋な少女と言う役柄にも、とてもマッチしていると思います。人魚とはまた違うかわいらしさを見せたいですね。
 
演劇団でも精力的に活動しているニューフェイスの活躍が楽しみなところです。

 

④稽古場では
メリハリのある芝居をするための基礎練習はきっちりやってますね。
その上で、自分が伝えたいことを想像どおりに表現できているか、自己を客観視できてるか、意識して取り組んでいます。
 
独りよがりにならないよう、観客と目線を揃えるということですね。
 
ですね。観客に何を伝えたいか、何を見せたいかという点を言葉にして共有することで、バラつきがあった役者の演技にも一体感が出てきたと思います。
 
キャスト同士がちぐはぐだとお客さんの気持ちもノリ切れないですからね。
 
顕著なのは「おもしろ」のシーンでしたね。
以前は役のテンションが地続きの、リアルめな芝居でやってたんですが、今は「おもしろ」のシーンでは3人全員スイッチを「おもしろ」モードに切り替えてもらってます。
演じる側はリアルめの方がやりやすいんですが、それだとお客さんが笑いづらいと感じたので、キャストと話し合い、シーン練習を繰り返すことでキャスト達も納得してくれました。
 
対話とシーン練習を繰り返すことでどんどんブラッシュアップしているんですね。
 
はい。演技だけでなくチームとしての一体感も増したと思ってます。
 
 
 
⑤最後に
お客さん達に最後のアピールをお願いします。
 
ちょっと疲れたり落ち込んでしまってる人が前向きな気持ちになれるようがんばります!
元気になりたい方、ぜひ観にきてください!
 
 
以上、侍TTP旅のしおり第1回は「空海夜行風流談~人魚姫の章~」編でした~!
 
次回は「平賀源内奇談」編!お楽しみに!
 
 
※1 月鯨団
広島で活動していた、川崎隆志脚本と福本睦美演出による少年漫画のようなまっすぐで熱い展開が持ち味の劇団。
当時学生だった代表・森新太郎をはじめ侍メンバーが多数参加していた。
 
※2 皇帝陛下の料理人
中華史上最高の料理人を巡る人々を描いた川崎隆志による長編脚本。
月鯨団による初演は平成17年度。昨年、侍の平成30年度番外公演として上演し、好評を博した。
 
 
 

--------------------------------------------------------

 

■公演概要

芝居空間侍エレクトリカルパレード番外公演
「侍タイムトラベルパレード」

「時は流れ、人生は続く」
今回の侍は「時代」をテーマにした4作品から成るオムニバス公演!
切なく、激しく、そして熱く、4つの時代を生きるものたちの姿を鮮烈に描き出す!
過去と未来を繋ぐ"タイムトラベルパレード"へようこそ!!

【演目】
『空海夜行風流談~人魚姫の章~』
『平賀源内奇談』
『とりつく島にも花が咲く』※上演回:①③のみ
『◯◯-reiwa-東広島妖械機録』※上演回:②④のみ

【日時】
8月24日(土)  ①13:00 / ②18:00
8月25日(日)  ③11:00 / ④15:00
(開場は開演の30分前、上演時間は120分を予定)

【場所】
東広島芸術文化ホールくらら 3Fサロンホール

【料金】
前売り(事前精算) 1,500円
前売り(当日精算) 1,700円
当日券 2,000円


【キャスト】
森新太郎
小池悠実
佐藤伸哉*
柳ヶ瀬祐規
宮﨑香陽子
吉原愛莉

小林達矢(フリー)*
中野歩(プロ和太鼓奏者)
大原伊織 (フリー)
住谷拓海(フリー)
爲政茉佳 (広島大学演劇団)
松原浩子(広島大学演劇団)
宝子丸ゆうか (フリー)
*佐藤伸哉・小林達矢は「空海夜行風流談」Wキャストです。
 添付の演目早見表をご参照ください。

【SNS】
○Twitter
@elekisamurai
○Instagram
@elekisamurai