その名にちなんで (新潮クレスト・ブックス)/ジュンパ・ラヒリ

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 インドから移住してきた夫婦のもとに一人の男の子がうまれる。インドの風習に従い、祖母から息子の名前が伝えられるの待ち続けていたがインドからの手紙はなかなか届かない。しかし、病院から退院する際、名前を付けることを義務付けられる。そこで父は自分の運命に大きく関わった本の作者からとって、ゴーゴリと名づける。ゴーゴリは不自然な自分の名前と、インド人でありながらアメリカ人という二つの立場について葛藤を抱きながら成長してゆく。

インド系アメリカ人の作家、ジュンパ・ラヒリ(Jhumpa Lahiri)の長編小説。ラヒリは『停電の夜に』ですでに高い評価を得ているけれど、長編小説はこの『その名にちなんで』が初となる。


ゴーゴリという名をつけられた青年というとずいぶん奇抜な設定であるように感じられるけれど、『その名にちなんで』で語られるのは、一人の青年とその家族のつながりの物語だ。奇抜さ、というものは特に感じられない。それよりもしなやかで繊細な筆致で描かれる人物の心情や光景に目を奪われる。

しかし、家族の物語であると同時に移民の物語でもある。第一世代と第二世代の価値観の食い違いは移民が抱える大きな問題だ。アメリカで生活しながらもアイデンティティとしては本国にある親世代と生まれたときからアメリカで育つ子世代とではライフスタイルも価値観も全くと言って良いほど違う。『その名にちなんで』でもゴーゴリと彼の両親とのすれ違いの原因はほとんどそこにあると言っていい。この二つの世代の違いを的確に捉え描き出していることからは、作者の目の確かさが伺える。


長編小説ではあるけれど物語が進み、著者の筆致に慣れていくにつれ時を忘れる。しっかりと芯がありながらも、ほんのりと心が温まる話が読みたいという人にはぜひおすすめしたい。

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