成人向けアダルトDVDなどの自主審査機関「日本ビデオ倫理協会」(ビデ倫、東京都中央区)がヘアなどの審査基準を大幅に緩和した06年、審査本数が前年比約2800本も落ち込んでいたことが分かった。これに伴い審査料収入も減少しており、警視庁保安課は、審査本数の急激な落ち込みに危機感を抱いたビデ倫が基準緩和に踏み切ったとみて経緯を詳しく調べている。

 逮捕されたのは、ビデ倫の小野克巳審査部統括部長(51)や、いずれもビデ倫会員のDVD制作会社「h・m・p」の五郎川(ごろかわ)弘之社長(46)と「アットワンコミュニケーション」役員の梅沢幸雄(49)=大田区東雪谷5=ら5容疑者。五郎川容疑者はビデ倫の理事も務めていた。この2社の作品について、十分な審査を行わず、わいせつ性の高いDVDを流通させた疑いが持たれている。

 ビデ倫によると、年間の審査本数は00年以降右肩上がりに増えていたが、04年の9171本をピークに下がり始めた。05年は8643本、06年は5890本で6年ぶりに6000本を割り込んだ。

 背景には、ビデ倫の審査を受けない「インディーズ」と呼ばれる業者の台頭があるとみられ、ビデ倫は04年から06年に3回「会員から要望があった」などの理由で修正基準を緩和した。06年はヘアの撮影について原則認める決定を行った。

 警視庁は、ビデ倫の審査を通した会員メーカー作品の売り上げ低迷を受け、ビデ倫が基準を緩めた可能性があるとみている。

 ビデ倫は昨年8月に警視庁の捜索を受けた後、審査制度や組織の在り方について見直すための有識者会議を設けている

 ◇審査者逮捕は問題

 ▽田島泰彦・上智大教授(メディア法)の話 悪質なわいせつDVDの規制に関してはそもそも制作者の罪が問われるべきで、それを審査した者が逮捕されるのは表現の自由の観点から座視できない問題だ。わいせつの線引きは市民社会が時代状況に応じて自主規制すべきもので、権力が基準を作るような行動は避けるべきだ。

 ◇関係者の萎縮懸念

 ▽インターネット上の違法・有害情報に関する総務省の研究会座長を務める堀部政男・一橋大名誉教授(情報法)の話 研究会では業界関係者が情報の違法・有害性の基準を作り、審査する第三者機関の設置を進めている。こうした第三者機関の責任を問う今回の逮捕について、警視庁は表現の自由に十分配慮した上で判断したのだろうが、業界関係者の自主的な取り組みの萎縮(いしゅく)につながるのではないかと懸念する。