デリカテッセン | 続・237号室 無事是A級からZ級映画列伝

続・237号室 無事是A級からZ級映画列伝

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『デリカテッセン』

 

 

 

 

 

1991年 フランス

 

 

 

 

 

《スタッフ&キャスト》

 

 

監督・脚本 ジャン・ピエール・ジュネ/マルク・キャロ

 

脚本 ジル・アドリアン

 

撮影 ダリウス・コンジ

 

音楽 カルロス・ダレッシオ

 

 

 

出演 ドミニク・ピノン/マリー・ロール・ドゥーニャ/ジャン・クロード・ドレファス/カリン・ヴィアール/ティッキー・オルガド/アンヌ・マリー・ピザーニ

 

 

 

 

 

《解説》

 

 

肉躍る世紀末の巴里へようこそ

 

摩訶不思議な異次元空間を見事に創りあげ、イメージの錬金術師フランスのテリー・ギリアムとの異名をとったジャン・ピエール・ジュネ&マルク・キャロ監督による長編デビュー作

 

終末戦争後、世界が荒廃し、食糧難に陥っていた近未来のパリにたった一軒残った精肉店を舞台に展開するひねりのきいたブラック・ユーモア

 

 

 

 

 

《物語》

 

 

路地裏にある肉屋デリカテッセン、ある日、店主が店の掃除をしているとルイゾンという男が新聞の求人広告を見たと言ってやって来た、しかし店主は求人を出していないと言う

 

ルイゾンは住所を間違えたかもと帰ろうとしたが、店主はルイゾンを引き留めて体格と肉付けを見て、住み込みで働かせる事にした、仕事は建物の管理、雑用、全てが仕事

 

 

ある日、ルイゾンが電球の交換をしていると、郵便屋がやって来た、上の階で暮らす店主の娘ジュリーに荷物を届けようとするがその荷物が食べ物だと気付いた住人が郵便屋から奪おうとするが、それをルイゾンが守りジュリーに渡された

 

 

ジュリーは一緒に味見しないかとルイゾンを誘う、郵便屋は店主に近所で射殺された者の話しをした、全て食い尽くす奴らだと壁に貼られたトログロ団のポスターを睨んだ

 

花束を持ってジェリーの部屋を訪ねたルイゾンは眼鏡を外して対応するジェリーに振り回されながらも、ジュリーは最近はみんな自分の事ばかり考えていると嘆き、ルイゾンは食糧難なので仕方なく、根は良い人だと

 

 

嫌気がさしているジェリーは一緒に引っ越さないかとルイゾンを誘うが、引っ越してきたばかりのルイゾンは断り、その後に一緒に楽器を演奏するがルイゾンは眠ってしまう、ジェリーは睡眠用ハーブを飲ませてしまったのだ

 

 

その夜、ジェリーはルイゾンが店主や住人らに殺される夢を見た、店主の愛人に頼まれてベッドのスプリングの修理をしていたルイゾンは新聞記事を見てトログロ団を知った、話しでは無法者集団だという

 

 

ジェリーは店主がルイゾンを食べるつもりで雇った事を知っていて、ルイゾンに好意を持つジェリーは彼を逃がして欲しいと懇願するも聞き入れてもらえない

 

ジェリーは真夜中に下水道から地下に入り、そこに潜んでいるトログロ団にルイゾンの救出を依頼、肉屋の倉庫にトウモロコシがあると伝えるとトログロ団は依頼を引き受けたのだが…

 

 

 

 

 

 

《感想》

 

 

荒廃した近未来が舞台なのですが、もちろん食糧難なのですがその肉屋には肉が売られているんです、オープニングで肉屋から逃げようとした男が包丁で殺されるのです

 

 

肉屋は繁盛していてお客は物々交換だったり綺麗な女性はツケだったりね、もちろんツケは体で払うのですけどね、それを嫌味に言う中年女性もいるんです

 

 

本当に独特の作品で初めて観た時は驚きでしたね、それにハリウッド映画や邦画にはないシニカルでダークなコメディで観ていて混乱してきましたもん

 

主人公のルイゾンを演じるのはドミニク・ピノンで、芸人でノコギリで音楽を奏でるのです、相棒がいなくなった事で仕事を探して肉屋に住み込みで働くのです

 

 

ルイゾンを雇った肉屋の店主を演じるのはジャン・クロード・ドレファス、見るからに迫力がある正に肉屋の店主ブッチャーって感じです、雇った人間をバラバラにして食肉として売っているのです

 

 

ルイゾンと一緒に音楽を奏でる店主の娘のジェリーを演じるのがマリー・ロール・ドゥーニャ、目が悪いのにルイゾンを眼鏡を外して対応するのでお茶をこぼしたりとおっちょこちょいなんです

 

 

ジェリーは父親の店主が雇った人を殺して肉屋に商品として並べている事を知っているのです、ルイゾンに惹かれるジェリーは彼を助けようと無法者集団に助けを求めるんです

 

この無法者集団トログロ団は菜食主義者の地下に住む者たちなのです、地上に住む者たちは肉を食べるのでトログロ団こそが悪って感じです

 

 

一階に肉屋があるアパートに住んでいた監督のジャン・ピエール・ジュネは毎朝、肉屋が肉切り包丁を擦り合わせる音で目覚め、恋人が近所の人を切り刻んでいると言ったところからアイデアが出来たそうです

 

それとジャン・ピエール・ジュネがアメリカに旅行した時にホテルの食事が人肉のようにまずかった事からこの作品のアイデアが思いついたという説もあります

 

オープニングのカメラワークのセンスも抜群で、ガラクタのような小道具も素晴らしくて、ブラックなユーモアも面白くて、店主と愛人のベッドでの軋みがアパートの住人がシンクロしていくのは笑えます

 

 

この色っぽい愛人を演じたのがカリン・ヴィアールで、コメディをサラッと演じている感じがまた良くてね、ツケで肉を買って行く時もお尻を振って見せ付けます

 

 

とにかく観た事ないタイプの作品でその独特の雰囲気で善悪の境界線も曖昧ですが、何か不思議な魅力のある作品でしたね、ラストに色々と壊れていくのも好みでした(笑)

 

 

 

 

 

 

世にもおかしな近未来ファンタジー! それが『デリカテッセン』です。

 

 

 

 

 

やはりフランス映画ってハリウッドなどとは違いますね。