ヴィデオドローム | 続・237号室 無事是A級からZ級映画列伝

続・237号室 無事是A級からZ級映画列伝

タカによるA級からZ級映画まで、榮級は絢爛豪華な超大作、美級は美しい女優や映像美、死級は禍々しい阿鼻叫喚、出級はあのスターの意外な出演作、イイ級は耽美なエロティシズム、Z級は史上最悪なクソ映画、その全てをレビューと少しの競馬予想と日常の出来事

 

 

 

 

 

『ヴィデオドローム』





1983年 カナダ





《スタッフ&キャスト》


監督・脚本 デヴィッド・クローネンバーグ

撮影 マーク・アーウィン

音楽 ハワード・ショア



出演 ジェームズ・ウッズ/デボラ・ハリー/ソーニャ・スミッツ/ピーター・ドボルスキー/レイ・カールスン/ジャック・クレリー





《解説》


気もちいいほど、気もち悪い、ヴィデオには近づくな!

カナダの鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督の異色ホラー、「スキャナーズ」以来のチームに特殊メイクアップの名手リック・ベイカーを迎えて放つ近未来ホラー

異常な恐怖心をかきたてる謎のビデオ・プログラム“ビデオドローム”に魅せられ、製作の実体を追い掛けているうちに、ビデオが作り出す幻想と現実の境界が分からなくなり、ついには人生を見失ってしまう男の物語





《物語》


カナダのトロントにある83チャンネル・シビックテレビはハードな暴力ものやポルノを売り物にしている弱小テレビ局、若き社長のマックス自ら、より刺激の強いビデオを求めて業者を訪ねて回っている

 

 

そんなある日、部下の技術者ハーランのスタジオでピッツバーグが発信地とみられる謎の電波をキャッチ、そのプログラムであるヴィデオドロームにすっかり魅せられてしまう



それは拷問と殺人が果てしなく繰り返されるビデオで、フィクションとは思えないほどリアルなものだった、その後にテレビの暴力性についてラジオDJのニッキーとオブリヴィオン教授と対談を行った

 




その後マックスの恋人となったニッキーもこのSMビデオのヴィデオドロームを見て、異常な興味を示して私も出演してみたいと言い残して姿を消してしまう



こうしてビデオドロームの怪しい世界に引きずり込まれたマックスは、恐ろしい陰謀の罠にはめられることになる、すなわちヴィデオドロームを長時間見ていると、頭の中に幻覚を見せ自在に心をあやつる脳腫瘍が出来るというのだ



ビデオを製作したのがオブリヴィオン教授と知ったマックスは彼のところに行き、娘のビアンカに数本のビデオテープをもらう、それを見ているうちに幻覚に襲われ、腹部が裂けそこに拳銃を突っ込んだりした




更にこのヴィデオドロームを使って人々を洗脳しようと企む一派があり、彼らはマックスを操って83チャンネルを乗っ取ろうとしていた、それに教授は既にヴィデオドロームの世界に取り込まれてていた



その恐ろしいイメージはマックスにも現れ、単なる幻覚とは説明のつかない現象が起こり、やがて体までも変貌させてしまったマックスの反撃が始まる



幻覚の世界にさまようマックスはヴィデオドロームの人間を射殺、全てを終えて、波止場の廃船に逃げ込んだマックスはTVに映るヴィデオドロームを見つつ拳銃を自らの頭にかまえた







《感想》


デヴィッド・クローネンバーグ監督が油の乗っていた頃の凄まじい傑作作品です(笑)、アメリカではあまりにも難解でコケたようです、暴力と官能の世界の恐怖なんです

1番の見どころはマックスに起こる幻覚症状、手に持ったビデオカセットが唸るように震え、グニャリと動いたり、そのビデオカセットがマックスの縦にパックリと口を開けた腹に入っていくシーン



腹から取り出したピストルからネジやボルトが延びて肉に食い込み、ピストルと手が一体化したりとさすが「狼男アメリカン」の特殊効果のリック・ベイカー、見事な出来です



マックスの恋人役ニッキーに扮するのはロック・バンド“ブロンディ”のデボラ・ハリー、ものすごく色っぽくてアバズレ感が良かったです、彼女の出演もカルト化に大きかったですね



マゾの性癖を持つ女性でマックスに耳たぶに針を刺させたり、自ら乳房にタバコの火を押し付けたりします、これが恍惚の表情でマゾなんです



それにマックスとのハードなセックス・シーンを見せてくれます、異様な雰囲気を漂わせる役を印象深く演じています、本当にエロいデボラ・ハリーでした



オープニングで日本髪の女性がこけしを使って自慰に耽るビデオが流されますが、これはクローネンバーグが日本から取り寄せた裏ビデオで本物の裏ビデオ女優の田口ゆかりが出ていた作品です



この作品は何でもかんでもビデオで、あまりテレビばかり見てると頭が壊れるよと、クローネンバーグの忠告かもしれませんね(笑)、クローネンバーグはそれまではカルトな監督といった印象でした

前作に「スキャナーズ」を監督、この作品でクローネンバーグの名を世界に知らしめました、特殊効果が凄まじく、各方面から大絶賛されました

その後に製作されたのが本作です、勢いそのままにエロとグロが融合する大傑作だと思いますが、公開当時は製作費の半分も回収出来ずに惨敗しましたが、後にソフト化されてカルト映画となりました



ビデオ発売時は「ビデオドローム」だったんですけど後に日本劇場公開されてタイトルは「ヴィデオドローム」となりました、元のままで良かったのにね

 







観る者を得体の知れぬ恐怖へと誘い込む、ビデオが人を操り人間そのものまでも変貌させてしまう、現代文明が生み出した悪魔のような衝撃的作品 それが『ヴィデオドローム』です。





DVDは劇場公開当時カットされたシーンを復元したディレクターズカット版です、ホラー映画が好きな人は観るべき作品です