激突! | 続・237号室 無事是A級からZ級映画列伝

続・237号室 無事是A級からZ級映画列伝

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『激突!』

 

 

 

 

 

1971年 アメリカ

 

 

 

 

 

《スタッフ&キャスト》

 

 

監督 スティーヴン・スピルバーグ

 

原作・脚本 リチャード・マシスン

 

撮影 ジャック・A・マータ

 

音楽 ビリー・ゴールデンバーグ

 

 

 

出演 デニス・ウィーバー/ティム・ハーバート/チャールズ・シール/キャリー・ロフティン/エディ・ファイアストーン/ルー・フリッゼル/ルシル・ベンソン

 

 

 

 

 

《解説》

 

 

40トンの殺人トラックに戦慄が走る!凄まじい迫力で追いまくられる車、500マイルのデッドヒート!かつてなき恐怖と衝撃の連続!

 

「地球最後の男オメガマン」などで知られるSF作家リチャード・マシスンの短編小説を当時25歳のスティーヴン・スピルバーグがテレビ用に監督したサスペンス・アクション

 

ごく普通の男が車で走行中ただ追い越したことだけをきっかけに、殺意に満ちた見知らぬ大型タンクローリーに追いかけ回されれるさまをスリリングに描く、日本やヨーロッパでは90分に再編集されて劇場公開された

 

 

 

 

 

《物語》

 

 

セールスマンのデイブ・マンは知人に貸した金を取り立てる為に朝早くから郊外の自宅を出て赤いプリムスを運転し、バリー大通りからサウス・ストリートを走らせた

 

 

ハイウェイを抜けてカリフォルニアを南に向かうと殺風景な一本道が果てしなく続く、すると前方に巨大なタンクローリーがノロノロ運転で走り、ディーゼルエンジン特有の煙を煙突から吐き出している

 

 

道を走るのはデイブのプリムスとタンクローリーだけで対向車もいない、あまりの遅さに痺れを切らしたデイブは思い切ってタンクローリーを追い抜いた

 

 

しばらくするとタンクローリーがデイブの車を抜き返したのだ、そしてタンクローリーはノロノロ運転をして前方を塞ぐように走る、デイブは再びタンクローリーを追い越した

 

 

タンクローリーは怒ったようにクラクションを鳴らし続けすぐ後ろに迫っている、デイブはアクセルを全開にして走らせ、タンクローリーはみるみる小さくなっていった

 

 

ラジオの人生相談で笑いながらガソリンスタンドに入ったが、タンクローリーは追いついてきてデイブの隣に停車、ガソリンを満タンに頼んで電話を借りた、昨夜に妻とケンカをしてしまい謝ろうと思ったが妻の機嫌は直らない

 

 

タンクローリーは先にガソリンスタンドを出たがしばらくすると後方にタンクローリーの姿が見えた、物凄いスピードでたちまち追いつき追い抜いて行った

 

 

タンクローリーは再びノロノロ蛇行運転をし、約束の時間が気になるデイブは本線から脇に外れた道を猛スピードで走り抜けてタンクローリーを抜いてやった

 

 

ざまあみろと思ったがタンクローリーは物凄い勢いで追ってきてデイブのプリムスに追突、恐怖を感じたデイブは通り道のカフェに逃げ込んだ、ホッとしたデイブだったが外にはあのタンクローリーが停車していた

 

 

 

 

 

 

《感想》

 

 

最近日本でも話題となってニュースやワイドナショーなどに取り上げられているあおり運転や危険運転を描いています、ノロノロ運転で後続車の邪魔をしたり、強引に追い抜きをしたりとね

 

はっきり言ってそれだけの内容なのに抜群に面白いんです、スティーヴン・スピルバーグが若干25歳で劇場映画デビューをする前にテレビドラマ用に撮った作品なんです

 

 

あまりの出来の良さに会社側はアメリカ以外の国では追加撮影と再編集で劇場公開となりました、思わぬ形で映画監督デビューとなってしまいました

 

追加撮影は踏切でプリムスがタンクローリーに押されて列車と接触しそうになるシーンと、停まっているスクールバスによって一触即発となるシーンです

 

 

デニス・ウィーバー演じるセールスマンのデイブ・マンは普通に運転をして仕事に向かうだけだったんです、最初は赤いプリムスでずっと道路を映しているんです

 

 

しばらくすると前方に巨大なタンクローリー、これがまるで悪魔のようで地味に怖いんです、その恐ろしさをデイブは気が付かずに強引に追い越すんです

 

 

ここからじわじわと怖い雰囲気になっていくんです、カフェでデイブがこのトラブルをずっと心の声で話しているんです、これがまたリアルでね、犯人が誰かわからない状況での心理描写はさすがです

 

リチャード・マシスンが友人とゴルフの帰りに運転していると帰路の途中でトラックにしつこくあおり運転をされたそうです、この恐怖をドラマ化できないかと各局に売り込むも失敗

 

次に短編小説にしてプレイボーイ誌に掲載されて注目されました、そこで新進気鋭のスティーヴン・スピルバーグの手に渡ったことでドラマ化となるんです

 

 

スピルバーグはもともとセリフの多い小説のセリフをギリギリまで削って会社側と対立、セリフがないことが観客のイメージを刺激すると考えていたからだそうです

 

そしてラストシーンにもスピルバーグはこだわりを持っていて会社側はタンクローリーの大爆発を主張しましたがスピルバーグは静かに動きを止めるタンクローリーを死にゆく悪魔のようにしたかったのかも

 

 

タンクローリーの運転手は最後の最後まで顔は映りません、それはデイブをつけ狙うのが運転手ではなくタンクローリーとしたかったのでしょう

 

 

 

 

 

スティーヴン・スピルバーグの名を一躍世界に轟かせたサスペンススリラーの傑作! それが『激突!』です。

 

 

 

 

 

1973年の第1回アボリアッツ国際ファンタスティック映画祭グランプリを受賞、いまだにスピルバーグは本作を観るそうです