『劇場』
２０２０年 日本
《スタッフ＆キャスト》
監督 行定勲
原作 又吉直樹
脚本 蓬莱竜太
撮影 槇憲治
音楽 曽我部恵一
出演 山﨑賢人／松岡茉優／寛一郎／伊藤沙莉／上川周作／大友律／井口理／三浦誠己／浅香航大
《解説》
一番会いたい人に会いに行く、こんな当たり前のことがなんでできなかったんだろう
「火花」で芥川賞を受賞した又吉直樹の２作目となる同名小説を、主演・山﨑賢人、ヒロイン・松岡茉優、「恋愛がわからないこそ、書きたかった」と又吉直樹自身が語る恋愛小説は恋愛純文学として異例のベストセラーとなった
監督を務めるのは「ＧＯ」「世界の中心で、愛をさけぶ」「ナラタージュ」など、時代ごとに日本映画界に新しい風を送り続けてきた行定勲監督、恋愛における幸せと背中合わせのどうしようもない葛藤や矛盾を真っ向から描き、令和の時代に新たな恋愛映画の風を吹かせる
《物語》
「いつまでもつだろうか」、不安に苛まれていた永田は街の画廊にふと目を奪われた、その隣で同じように絵を見ていた女性・沙希と目が合った
沙希は会釈して立ち去ったが永田は彼女の後ろを歩く、永田を恐ろしく感じた沙希は早足で道路を横断するが後ろに永田がいた、永田は同じスニーカーを履いていると言って声を掛けた
最初は知らない人なのでと断っていた沙希だったが一緒にカフェへと入った、沙希は青森出身で高校卒業後に服飾の学校に通うために上京してきた、中学から演劇部に所属していて女優を夢見ている
永田は高校で行われた演劇はやるのも観るのも苦痛なものばかり、その頃に出会ったのが野原だ、彼は音楽や映画に文学や格闘技にも詳しく永田は野原に刺激されて創作欲が一気に弾けた
自分でシナリオを書いて完成すると野原に感想を聞いた、東京の小劇団の舞台を観に行き、そこで衝撃を受けた、上京後に２人は劇団「おろか」を立ち上げるも客足は重く、公演をするたびに酷評の嵐
そんなことをコーヒーをおごってくれている沙希には話す気にはならない、「いつまでもつだろうか、次に不安が押し寄せてくるのはいつだろうか」
ある日、永田は野原に呼び出されて行くと、そこには３人の劇団員も一緒にいた、酷評ばかりの永田にもうついて行けないとの事だ、自分の演劇を作りたい欲求は趣味と言う言葉で片付けてもいいのかもしれない
野原にアドバイスをもらって沙希を誘ってデートを繰り返した、新しいシナリオが出来上がったが女優がいない、そこで永田は沙希に声を掛けてみた
最初は無理だと言っていたが沙希は思った以上に演技が出来た、中学から演劇部なのだから関わっている時間は永田や野原より長いので当然か
それに沙希は客を退屈させない演技を見せ、劇場関係者も彼女の芝居や存在感を褒めた、ささやかながら公演は評判となり客足も伸びた、公演を定期的に出来るようになり、稽古の時間が増えて日雇いバイトに行けなくなり金がなくなった
その結果、沙希の部屋に転がり込んだ永田、理想と現実との間を埋めるかのように演劇にのめり込んで行くのだが…
《感想》
コロナの影響で劇場公開がままならないこの状況でなんとアマゾンプライムで配信となりました、これは本当に嬉しい決断です、でも映画関係者としてはやっぱ劇場での公開が理想ですよね、行定勲監督もよく決断しましたね
原作は「火花」に続いての映画化で、あまりしてこなかった恋愛の作品なのでどんな話かと思っていたら主題は劇団が芝居に恋愛が絡んでくるという感じですね
本作の主人公の永田は人を見下すような本当に嫌な奴なんです、その前衛的すぎる演出は理解されずに酷評ばかりだと劇団員の女優の青山に言われて、傷ついたと言うと青山は、「傷ついたなら謝ります」と軽く言われるんです
すると永田は「謝るなら何言ってもいいのか、お前の容姿に関する事と、自分はイイ女だと思ってる勘違いとどっちがいい？」と青山に迫るんです、その後に他の劇団員に夜道で襲われるんですけどね
この永田を演じるのが「ヲタクに恋は難しい」の山﨑賢人、いつもの作品は割と奇麗な格好をしているのですが今回の山﨑賢人は最初は特に汚い感じです、ちょっと近寄りがたいくらいですね
永田の彼女の沙希を演じるのが松岡茉優でこれがとても素敵な女性なんです、怒る事もあんまりなくていつもニコニコしているんです、それでいて永田には特に甘いんです
そして永田と同級生で一緒に上京してきた野原を演じるのは寛一郎で実は彼の役回りが良く分からなかったです、一緒にシナリオを書くわけでなく役者なのか、共同製作者みたいな存在かな？
劇団の元女優の青山を演じるのが活躍目覚ましい伊藤沙莉、たしかに美人ではありませんがすごく必要な女性で存在感ありです、劇団は辞めても永田のことは気にしているんです
自分には才能があるとおそらくみんな思って芝居の世界にいるのでしょう、でも永田と野原の前に同い年で演劇のホープと呼ばれる演劇人の存在でそれを認めてしまうんです、沙希が誰かを褒めると永田は機嫌が悪くなるんです、それがクリント・イーストウッドでもね
おいらは山﨑賢人も松岡茉優も客を呼べるだけの役者かと思っていたら、本作の山﨑賢人も松岡茉優も素晴らしかったです、特にラストシーンは鳥肌物でした
又吉直樹の異例の大ヒット恋愛小説、山﨑賢人×松岡茉優×行定勲監督が贈る観た者の心に永遠に残る恋愛映画 それが『劇場』です。
新作の配信って嬉しいですけど、あれもこれもとなると劇場の意味がなくなってしまうので痛し痒しですね
