人のペースに合わせる事を、もっとも苦手としている俺。
でも、つぐみにはペースを、いつも握られる。
そう思うと自分が可笑しく思えて、思わず苦虫を噛み潰したような顔になっている。
はい。と、運転手さんにお金を払い二人はタクシーから降りた。
目の前には山下公園。
海が広がっている。
なんで、ココなんだよ。
海だから。
なんで、海なんだよ。
あそこの海までは遠いから行けないでしょ。
そういう事か。こいつも忘れてはいなかったんだ。そう思うと自然に言葉が出た。
あの時は、ありがとな。それから憶えててくれて。
あんたさ、忘れる訳ないでしょ。あんなに大変な事は、人生の中で、なかなか経験できないよ。
ゴメン。大変な思いをさせて。
なんで、ゴメンとか、ありがとうとか、そんな言葉しかでないのよ。
悪い…
また!いい加減にやめて!
ゴメン… あっ!
今日は謝ってばっかりだね。
そういうと、つぐみは微笑みを浮かべ海の方へ目線を送った。
この船だけだね。かわらないのは。
氷川丸。
山下公園の番人のように俺が生まれる前からここにいる。
そうだなぁ。
HIROTOは小さい頃から見ていたんだよね。
あぁ、そうだね。
HIROTOが子供だった頃は、どんな子供だったかのか、みて見たかったなぁ。
普通の子供だよ。オモチャが欲しくて、ダダこねて泣いてた。
そんな感じだよ。
ふ~ん。
ふっ。
病気。どうなの?
自分では分からない。こうやっている時は普通なんだろうけど、周りからみれば違うんだろうな。
無理してる?
いや、そんな事ないよ。
あまりにも突然だったから
ゴメンね。
今度は、お前かよ。ゴメンって。
……
どうした?
実はね。結婚しようと思うの。
えっ!
俺は突然の告白に戸惑いながら、次の言葉が見つからなかった。