人は何かを諦めた時、誰かに託したくなるものだと初めて知った様だった。

目の前に、つぐみがいる。


もう、どれくらい時間がたったのだろう?

いつ以来の再会だろう。


再会の理由は、つぐみに預けていた通帳だった。


悪いなぁ。


そんな事ないよ。痩せたね。


ああっ。


そうだ。最初に返しとくね。中身は変わってないよ。お母さんに言ったら、それには手を付けないでも大丈夫だから、つぐみちゃんが持っててって。


そうか。


俺は、お袋らしいなと思った。我が子は自分で守る。そんな、母親だから。



病院からは出れるの?



退院の事?


それも聞きたいけど、今、外出とか?


出来ない事は無いだろうけど、こんな格好でイヤだよ。


格好なんていいよ。病院だと暗い感じがするからさ。


当たり前だろ。病院が明るい感じの方が気持ち悪いよ。



もうイイから、行こう。



チョット待て!手続きしないと。


そんなのいいから。


そう言うと、つぐみは俺の手を取り病院の外へと連れ出した。


相変わらずの、つぐみだった。



どこ、行くんだよ。俺、サンダルにパジャマだぞ!


早く!



そういうとタクシーに俺を無理矢理、押し込んだ。


なんなんだ、お前は相変わらず!


そんな言葉は聞きもしない。

運転手さんに●●まで、お願いします。

と言っている。


●●?お前なに考えてんだ!こんな格好で行ける訳ないだろ。


完全に無視している。


おい!こんな格好で行ける訳ないだろ!


もう、格好、格好ってウルサイなぁ!
運転手さん、どこかその辺の洋服屋さんに止まってもらえますか。



金も持ってきてねぇよ。


お金なら私がある!


そんなやり取りの中で、俺は取りあえず、普段着に着替えタクシーに戻った。


格好、格好って対して変わらないよ。


しかし何で●●なんだよ?


俺はそれが気掛かりだった。



何であそこなんだろう・・・