『HIROTO、出かけようよ。』
つぐみが、そう言ってきた。
『どこに・・・』
俺は繋ぎ繋ぎの自分自身で聞いてみた。
『宛てもなく・・・だけどね!それが一番、楽しそうだしさ。』
宛てのない・・・
そうだ。
初めて、つぐみと旅行に言った時の事。
『あぁ、いいよ。でも・・・』
この頃、俺は、手の痺れと胸の痛みで着替える事が
一番大変な状態だった。
『着替えよう。』
それを察した彼女は、そう言った。
小さな体の、つぐみが俺を着替えさせるのは大変な作業なのだ。
汗をかきながら、必死に着替えさせてくれる。
俺は、申し訳ないという気持ちと自分の情けなさに落胆した。
これも初めての経験ではない。
しかし、忘れてしまう。
感謝の気持ちは忘れないが、細かいことは忘れている。
人間って、そんなもの・・・
いや、俺がそういう人間なのかもしれない・・・
そして、着替えが終わり、いよいよ玄関から外へ出た。
何日ぶりの太陽だろう?
そして、その日の外出は俺にとって忘れられないものとなる。