『どうしたんだよ。ばあさん?』と、俺は聞く。
『なーに。たいしたことはない。』
というと、起き上がろうとする。
『いいよ、調子悪いんなら寝てろよ』
『平気だよ。お茶入れてやるから・・・』
『平気だよ、そんなの自分でやるから・・』
『なに、バカなこと言ってんだい。人が来てんのにお茶も出さないなんて』
ホントに凄い人だ。。。
吉川の妻か・・・分かるような気がするよ。
『ほれ、飲め!』
『ありがとう。』といい、お茶を飲む。
ふと見ると、池に鯉がいない。
この家には、大きな池がある。そこに、俺は詳しくないが、鯉が何十匹もいて、よく餌をやらされた。
その鯉が一匹もいない。
『ばあさん、鯉がいないじゃん?』と聞くと、
『ああ!〇〇のところにやったんだ。』
〇〇とは、この家で初めてあった有名な方だ。
『なんで?』
『私が居なくなったら、誰が餌やるんだ。可哀想だろ。そんなことも分かんないのか。』
俺は、何も言えなかった・・・・
無神経というか、なんというか、ばあさんの言葉を聞いて自分が恥ずかしくなった。
『病気はどうだ?』と、聞いてくる。
『そんなことより、ばあさんは、どうなんだよ?』
『お前の事を聞いてるんだ。』
『変わらないよ。ばあさんは?』
『見ての通りだ!元気にしてる』
気丈な人だ。ホントはツライだろうに・・・こんな時間に布団にいるなんて子は今迄に無い。
でも俺は、『そうか!よかった。』と言った。
『病気をなんとかしないとな、お前の・・・』
『大丈夫、変わってないんだから、付き合っていかなきゃいけないものかのしれないし・・・』
『そういうものか・・・いや、なんとかしなきゃいかんな』
いつでも、この人はそうだ。
自分のことより人の事・・・
こういう人を昭和の女っていうんだろうなぁーと思った。
すると、ばあさんが、『おまえ・・・・・
つづく
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