御主人は考えている。
その顔を見れば一目瞭然。
追い詰められている。
営業は、お客から笑顔を頂き、感謝され、喜ばれるものだという人がいる。
でも、それは、偽善だ。
デパートに行って、『これ、似合いますよ～』と言われ、買ったのも気に入るかもしれないが、そのスタッフに感謝するかといったらしないだろう。
営業とは、むしろ憎まれることの方が多いんだ。
なにせ、物を売らなければならないのだから、こっちも死活問題だ。
綺麗事ばかり言ってられない。
これが、事実以外の何物でもない事実だ。
『あなた。もう、いるいるな会社の人に来てもらってるんだから、そろそろ決めなさいよ』と、奥さんが、言いだした。
『いろいろな会社？』と、聞くと、
『そうなんですよ。もう、何社来たか分からない位よ。』と、ここでENDだ！
『まぁ、いいじゃないですか。』俺は、あえてそこを触れはしない。肝の部分だから。。。
『分かりました。ご主人！いろいろと決めるのにも御苦労されたようですので、消費税はサービスします。１５万のサービス。１５万っていえば、僕の半分の給与ですよ。月末だし、税込の３００万で、契約しましょう！』と、言った。
ここでは、いかがですか？と言う、必要はない。やる！という押しで十分だ。
御主人は、契約書にサインをし、捺印を押した。
そして、俺は『御主人、奥さん、ホントにいい買い物しましたよ。サービスの１５万はないものと考えて、二人で美味し物でも食べに行かれてはいかがですか？』
『今日は有難うございました』と、頭をさげると、
御主人、奥様、共々、深く俺にお辞儀をした。
俺は、車に乗り込み、家の前から少し離れた場所に車を止め、さっきから鳴っている電話を見た。
メールだ。
『お疲れ様です。今、２７０万の契約を頂きました。会社に戻ります。』
『ご苦労様です。お電話に出られないので、メールで失礼します。１８０万の契約頂きました。』
『お疲れ様です。３６０上がりました。以上です。』
と、３通のメールが入っていた。
合わせて８１０万かぁ。。。俺のと合わせると１１１０万！
疲れた～～
その一言に尽ききる。。。
俺は、あまりの疲れで、ハザードランプを付けながら、眠ってしまった。。。
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