『どこに行ってたんですか?』
と、坂田が聞いてくる。
『散歩だよ』
と、答えた。
『たまには、早起きして散歩するのもいいもんだよか』と、言うと、
『そうですか。』と、興味無さそうに生返事をしてくる。
坂田とは、長い付き合いだ。俺が生まれた町は商人の街で、俗にいうボンボン育ちが多い。
だからかしらないが、こいつは、あまり考え込んだり、喜怒哀楽があまりない。
俺とは正反対だ。俺も商人の子供だが、職種の差があるのかもしれない。
こいつが、店でヤンチャな奴に、絡まれてしまい、俺のとこに電話をかけて来たのが、キッカケで急接近した。
どちらかといえば、気の小さい、人のいい奴とでもいうのだろうか。いずれにしても、憎めない奴だ。
『おはよう』といい、家の中に上がった。
『で、保険屋って、なんなんだい?あんたのせいで、気になって寝れやしなかったよ』と、いってきた。
『そんなに愛されてるとは、知らなかったよ』というと、ティッシュの箱を投げてきた。
『あのさ、うちの会社、ガタガタなんだよね。倒産一直線って感じでさ。』
そういうと、『そんな会社、潰しちゃいなさいよ』と、人の話をへし折って言ってきた。
『やっぱり、そうだよな!潰した方がいいよな』というと、
坂田は目が点になっている。
『俺も社長に言ったんだけど聞かないんだよ』
『バカだねぇ~あんたも!』
『俺にも責任があってさ。ここにきた訳』と、いい
医者から出してもらった診断書と、処方箋の紙をテーブルに出した。
それを手に取り見ている。
『そうは見えないけどね。』
『世間様には理解していただけない病気でね』と、間髪いれずにいうと、
『で、なにを頼みに来たんだい?』と、言う。
『そんなこんなで、色々と考えたんだけど、潰れそうだけど、潰れないという結論になったんだよ。でも、つなぎ資金がショートするかもしれないんだ』
『いくら?』
『700!』と、いうと
『それっぽっちも、用だてできないのかい』と、いってきた。
坂田はまたまた、目が点になっている。
『だから、用だてしに、こんな田舎まで来たんだよ』
『担保は?』
『無し!』
『信用貸しかい』
『ああっ』
そういうと、外へツカツカと出で行った。
頼む!と、俺は、心の中で呟やいていた。
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