奥から出てきた白衣の医者は、間違いなく偉い(医院長)だと分かった



主治医:『医院長』


焦りながら、緊張しているのが分かる。


ゆったりと優しい口調で、医院長は話し出した。


医院長:『何があったの?』



主治医:『いえ、ちょとした手違いで・・・』


医院長:『君に聞いていなよ』


常に冷静さを保ち、声色は実に優しい。


医院長は主治医のPCを覗き込み、話し出した。


医院長:『〇〇君・・・ごめんね。患者さんが多くて君の名前を知らなかったんだよ』


俺   『・・・・』


医院長:『かなり腹の立つ事があったみたいだね。』


俺   『・・・・』


医院長:『何があったか教えてくれないか?』


俺:  『おいつに聞いてくれ』


医院長:『彼に聞いても本当かどうか分からないよ。気分を悪くしてるのは〇〇君なんだから』


僕の仕事は営業の仕事だが、営業の仕事の原点とは相手の気持ちを察して、どう対応するかだと思う。

そこにきて、医院長の言っていることは的を得ている。




俺:  『あいつが俺の事をダメだと言いやがったんだ』


医院長:『そうか。それは腹を立てて当然だね。ごめんよ。』


俺:  『あんたが誤る事じゃない』


医院長:『イヤ!彼を指導している私の責任だよ。ゴメンよ。』


人間というのは、よほどのことがない限り、相手に頭を下げらえれば10分も怒っていられない。
これは、僕が仕事をしている中で起きたクレーム対してもひたすら頭を下げていた事に似ている。


ある本で読んだことがあるが心理学からいってもそうらしい・・・


俺:   『病院を変えてくれ。大学病院に紹介状を出してくれ』


俺が通っていた病院は一般的に言われている『メンタルクリニック』だ


医院長:『それは構わないよ。でもね、大学病院に通う事になればそこは精神科なんだよ。悪気があって言っているわけではないので、ここだけはしっかり聞いて欲しいんだが、大学病院の精神科には、本当に重症な患者さんもいるんだよ。その点、〇〇君はそこまで重症ではないよ。軽症ってとこだね。そういう軽症の患者さんがもし大学病院に行くと重症な患者さんと一緒になる。すると、軽症の患者さんが、重症な患者さんをみて自分もそうなんだと思い込んでしまうんだよ。』


俺:  『俺のどこが軽症で、どこが重症じゃねぇんだ』


医院長:『それはねぇ。〇〇君は私としっかり話をしている。』


俺:  『なんだそれ。それだけかよ。勘で言ってるよりタチが悪いじゃねぇか』


医院長:『そうだねぇ。勘かもしれないねぇ。でも、君の病気を診察する上では勘も必要なんだよ』


おかしなことを言ってやがる。ふざけてんのかよ。


医院長:『君が重症だと判断した時は紹介状でもなんでも書くよ。』


俺:  『何の根拠もなく、診察されてても治らねぇよ』


医院長:『根拠ねぇ~?それはあるよ。私も長いことこの仕事をしている。〇〇君にもあるだろ』


俺:  『なにが?』


医院長:『絶対的な感覚っていうところかな。』



今だ笑顔を作ることのできない俺だったが、フッと思い納得した。

その仕草さを悟ったのか


医院長:『患者さんがいっぱい待ってるから、このままじゃ文句を言われちゃうから今日はここまでにしようか。絶対的感覚が働いたからね。患者さんに怒られるな』


医院長:『点滴を打って帰ろうか。』


医院長が主治医に指示を出し、ベットに横たわり多分、安定剤か何を投与した。



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