コロナ騒動で「中国に無力な政府」を目の当たりにした韓国民の悲しい現実
3/22(日) 9:02配信時事通信
コロナ騒動で「中国に無力な政府」を目の当たりにした韓国民の悲しい現実
防護服を着て消毒液をまく兵士=2020年3月4日、韓国ソウル【AFP時事】
ジャーナリスト・崔 碩栄
3月4日現在、韓国で確認された新型コロナウイルス感染者の数が5200人を超えた。2月16日の時点で28人だったが、わずか半月余りの間に180倍以上に爆増したのだ。今、韓国社会は「パニック」に陥っている。
【写真】大邱市の医療機関を訪問し、関係者を激励する文在寅大統領
理由として、多く指摘されているのは水際対策、すなわち、入国管理の失敗や、感染者を一気に拡散させてしまった教会の集団礼拝、医療機関に診察を断られる「たらい回し」などだ。
◆10倍に高騰
韓国社会が感染への恐怖、そして、政府の対応に対し、不安を感じている中、今回のコロナ騒動で突き付けられた現実がある。
それは「中国」という存在の前に、あまりにも無力な「韓国」という現実だ。中国に対する政府の忖度(そんたく)を目の当たりにして、やるせなさが込み上げてきたのだ。
その代表的な事例が、深刻なマスク不足についてだ。
朝から晩まで繰り返されるコロナ感染情報は、多くの国民に極度の不安を与え続け、国民は自衛策として、マスクの確保に躍起になっている。
だが、今では、一般的な商店でマスクを目にすることはない。日本と同様、欠品状態が続いているのだ。
インターネットのショッピングモールでも、マスクは品切れ状態。ネットオークションでは、通常の10倍に高騰、1枚当たり2000~3000ウォンで取引されている。
ある日、スーパーの前にできた数百メートルにも及ぶ長蛇の列を撮った写真が報道され、話題になった。これまで韓国内であった、どのスーパースターの公演でも、ワールドカップや五輪などの大型イベントでも見られなかったような長い行列だった。
コロナ騒動で「中国に無力な政府」を目の当たりにした韓国民の悲しい現実
マスクを求めて行列をつくる人たち=2020年3月3日、韓国ソウル【EPA時事】
◆中国人が持ち帰る
大型スーパーに新しいマスクが入荷されたという、うわさが流れたためにつくられた行列だという。転売行為も横行していた時期で、1人当たりの購入量が制限されていたことも、長い行列がつくられた理由の一つだ。
だが、同じ日のニュースで報道された、もう一枚の写真で、多くの韓国人は怒りを通り越して、虚無感に襲われた。
マスクが詰め込まれた大きな箱を持った人たちが、仁川空港から出国するための長い行列をつくっている写真だ。
それは、中国人たちが国に持ち帰るために、韓国のマスクというマスクを全て集めたのではないか、というほどの量だった。
これは、個人商人によるマスクの運送だったのだが、正規のルートを通した輸出も爆増している。昨年12月に比べ、今年1月の対中マスク輸出量は、100倍近い増加であった。
コロナ騒動の発生地であり、死亡者数も3000人に近い中国が、韓国よりもはるかに深刻な状態であることを知らない人はいない。
しかし、自国内でも極度の不足状態にあるマスクの箱が、列を成して運搬される様子を見て、嫌な気持ちにならない人は少ないだろう。