◎件 もの言う牛 | DOCROMANCE - EKPUAのブログ

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 格闘技とエクプアの活動……

 2020年12月15日に発売された田中啓文氏の新作を読んだ。タイトル通り、人頭牛身で凶事を予言する妖怪、件が登場する話である(といっても、この作品の件は人面ではないのだが)。裏表紙によれば、書下ろし伝奇ホラーということになっている。伝奇小説というのは要するに空想小説の意だからよいとして、ホラーかといわれると微妙な内容だった。

 

 平凡な大学生が旅先の牧場で一夜の宿を借り、異様な事態に巻き込まれる。その大学生と殺人事件の捜査中に面識ができた刑事、更に政治記者、牧場の一人娘。この四人が国家規模の闇を暴くために奮闘する。件を抱える宗教組織と政治家は殺人も辞さず四人を食い止めようとする……という話である。

 

 序盤は面白く読めるのだが、徐々にスケールが大きい割にはのんびりした展開に気付き始めてしまい、散漫になる印象だ。人の死に方もなんだか間が抜けているように感じた。斬新な設定なのだろうが、話は弛緩気味。

 

 初めて作品を読んだ作家の方だが、今はあまり次も読みたいとは思わないかな。 †