陽剛居正、まさに陽剛の徳を発揮するべき時で、その昔高宗が国内を平定したのち、さらに鬼方の蛮族の征伐に向かったことがその事例にあげられる。しかし3年かかってやっとこれに打ち克つことができたように、成功をおさめるのは容易なことではないのだから、小人を用いて事を誤まることがあってはならない。苦労して憊れはてる事である。陰柔不中正で、まだ坎険の中から脱することを得ないから、事いまだ済らず、積極的に前進して事を済そうとするのは凶であるが、上九の正応があるから時機がくれば大川を渉るような大事に踏みきって利よしい。その地位が不当だからである。山を管理する役人の道案内もなく鹿を追いかければただ林の中に迷い込むのと同じである。故に君子は危険の兆しを見てとったなら往くのをやめる方が良い。強いていけば吝つまりあまり良いことはない。一人上九の陽に応ずるのであるからかえって上下の陰から自分をはぎ取って上九を剥害することをせぬ。このようでなければ咎なきを得る。仲間付き合いを捨て去る。