もう七年は経つだろうか・・・

私は週末に予定された旅行を楽しみにしていた。
毎度の事、家族には言っていない。


旅行が三日後に迫った朝、
父は挨拶のように軽く私に言った。
「お前の部屋片付けておけよ?」

失礼な。私の部屋は常に片付いている。
私には意味が解らなかった。
無論私は聞き返す。
「へ?どして?」と。


父は言った。
「土曜日解体するから。」

・・・?

私は一瞬混乱した。
家を立て替える事は知っていたが、工程などは知らなかった。

考えをまとめ、
渋々私はタメ息と共に吐き出した。
「いや、わかった。片付けるわ。旅行行く前に。」


!?

予想に反し父は困惑の表情を浮かべた。
「旅行?お前旅行行くのか?じゃあ誰が解体するんだよ?」


・・・?
・・・何を言っている?


私は悟った。いや、解っていた。

一般的には信じがたい話だが、
父は私に我が家を、
今まさに住んでいるこの家を解体させるつもりだったのだ。


しかし私にだって用事はある。
「もうお金払ったし見逃して下さい・・・」

私は下手に出つつ自分の正当性を訴えた。
そして三日間で部屋を綺麗サッパリ片付けて、
旅行に出掛ける事に成功した。



ここで片付けのエピソード。
当時、私の部屋は二階に在り、階段は武家屋敷の様に急勾配だった。
私は部屋にある「大物」を移動する為、こうちゃさんを頼った。
弱みなどは握ってないが毎度手伝ってくれるいい人だ。

なかでもブラウン管のTVが50kgもあったが、
こうちゃさんの信じがたい腕力なら問題ない。

急勾配の階段を私が上からロープで吊るし、
こうちゃさんが下でキャッチする算段だ。



・・・まあ、
大方の予想通りロープははずれた。


下で「オーライ」なんて余裕綽々なこうちゃさん目掛けて落下した。

ゴシャッ!!
「ッウォ!?」

下からなんか聞こえた。



私は何故か笑っていた。


続く・・・