名城大が連覇で学生2冠!
  5区で逆転! 危なげない横綱相撲!

 

 今年最後の駅伝である。
 おりから、そぼふる冷たい雨……。残念ながら、真っ白な雪におおわれた富士を背景にして、ひた走る女子ランナーたちの姿をみることができなかった。
 冷たい雨に打たれて走るランナーたち、だが第1区から熱気ほとばしる闘いがくりひろげられた。
 1区(4.1㎞)は浅間大社をかこむように市内をめぐる。高低差20mの上り下りのあるコースである。
 1㎞の入りが3:19、ハイペースのツバ競り合いで幕あけた。名城大の荒井優奈、大東文化大の秋山祐妃、そしてゼッケン番号23の全日本大学選抜・金光由樹(東海大1年)らが先頭で24チームはひとかたまりになってすすむ。
 2㎞の通過が6:46、このあたりで京都光華女子大、関大外大、鹿屋体大などが集団からこぼれ、だんだんとタテ長になりはじめる。トップ集団で勢いのあろそうなのは全日本選抜の金光である。
 金光は2.8㎞あたりで飛び出した。全日本選抜チームが編成されるようになってから、前半はこのチームが前半をひっぱるようになっているが、今回も、レースをリードしてゆきそうな予感……。
 金光のスパートに反応したのは日本体育大の赤堀かりん、拓殖の佐野英里伽あたり、名城の荒井優奈、松山の小松優衣あたりもついてくる。……
 金光のラストのスパートもするどく、みるみる後続をちぎって、そのまま中継所にとびこんていっだ。
 1区は全日本選抜がトップ、6秒遅れで拓殖大、日本体育大、名城は10秒遅れの4位、立命館大は20秒遅れの8位につけたが、候補の大東文化大は今年も出遅れて、37差の14位発進となってしまった。

 

 2区(6.8㎞)は高低差98mの長坂道を一気に下る。
 全日本選抜は1区の金光の勢いそのまま2区は五島莉乃(中大4年)がぶっとばした。単独トップで今年も後続をひきちぎってゆく。後ろからは8位発進の立命館の佐藤成葉がじりじりと追ってくる。強豪立命館をひっぱってきた佐藤成葉、今回がラストランという意気込みが全身からみなぎっていた。
 3㎞では五島がトップを独走、2位には日体大の中村朱里、拓殖大、松山大をとらえてそして名城大の高松智美ムセンビが3位に浮上してくる。名城にしては予定通りの展開か。だが後続、佐藤の追い上げが急だった。3.9㎞で高松、中村をならぶまもなく抜き去って一気に2位に浮上したのである。
 だが五島のトップはゆるがず、佐藤の追撃をしのいで、昨年を上回る区間新記録で2年連続でこの区間を制した。
 2区を終わって全日本選抜がトップをまもり、立命館が2位に浮上して32秒差、名城が3位で58秒差、大東は6位まで順位をあげてきて、ライバル名城とは13秒差となった。

 

 3区(3.3㎞)、4区(4.4㎞)はともに平坦なコースである、いわばつなぎの区間で、存在感を発揮したのが、立命館大学である。 
 全日本大学選抜の樺沢和佳奈(慶大3年)がゆうゆうトップを独走。だが位立命大の御崎舞がその差をじりじりとつめてきた。テレビに映らなかったそのすがたが、次第にくっきり影をなすようになり、終わってみれば16秒までに詰まっていた。
 トップは変わらずに全日本選抜だが、2位の立命館との差は16秒、3位は名城大で48秒差、大東文化大はその名城から38秒遅れとなり、いまひとつ勢いを欠いていた。
 3区で御崎の区間賞で勢いの付いた立命館は4区の松本美咲が全日本選抜の仲野由佳梨(神戸大)を懸命に追い、1.6㎞でとうとうとらえてしまう。だが3位にやってきた名城の山本有真(1年)も区間新の走りで、立命館大とは22秒差まで追ってきていた。

 

 5区(10㎞)は最長区間で、しらす街道、田子の浦港、富士市の中心市街地、吉原商店街を駆けぬける。だがランナーたちもテレビ観戦者も、そんな風景に目をとめる余裕もない。(笑)
 4区でエンジンのかかったのは名城、ここはエース加世田梨花の起用である。加世田は早くも2.9㎞で全日本大学選抜の杉浦穂乃加(中京大4年)をとらえ2位までやってきた。もう目の前にトップの立命の三浦佑美香がいる。3.9㎞でその三浦をとらえると、ギアチェンジして一気にその差をひろげてひとり旅である。
 5㎞通過は加世田梨花がトップ独走、2位には全日本大学選抜の杉浦穂乃加があがり13秒差、20秒遅れで3位は立命大の三浦佑美香、大東大の関谷夏希はペースがあがらず1:22も遅れていた。むしろ大健闘の城西大・福嶋摩耶にあおられるしまつであった。
 かくして名城の連覇、大学2冠の道筋、ここで視界良好になってしまったのである。


 6区(6㎞)は、ながい直線の平坦な道である。
 名城大の小林成美(1年)はトップを独走、追ってくるものは誰もいない。なんと区間賞の独走である。ライバル大東文化大との差を1:52にまで開いてしまったのである。そうなれば名城のアンカー・和田有菜はもうタスキをゴールに運んでゆくだけである。

 7区(8.3㎞)は3㎞すぎから、4.6㎞で169m上る激しい坂がある。3.8㎞地点からの源太坂は急激な下りになっている。ゴールとなる富士総合運動公園陸上競技場の手前が標高の最も高い174mだという話である。
 ランナーたちは登る、ひたすら登る。トップを独走する和田はけんめいの腕振りで、あえぎなながら、それでも確かな足どりでのぼってゆく。追っかける大東文化大の鈴木優花も区間記録ホルダーの意地にかけてハイピッチをきざんでゆく。二人のランナーが息を切らせながら見えない相手と渡り合っているさまがおもしろかった。
 鈴木は1.3㎞で全日本大学選抜の大東優奈(兵庫大)をとらえ2位浮上したが、最後まで和田の姿をとらえることはできなかった。
 かくして和田は最後まで独走で、ゆうゆうと急がず2連覇のゴールにとびこんでいったのである。


 2連覇達成の名城大は区間賞3つ、他のランナーも全員が区間5位以内で、危なげない圧勝であった。昨年は4年生のふんばりがポイントになっていたが、今シーズンは4年生はひとりもいない。それでいて異次元の走りをみせた。当分は名城大の時代がつづきそうである。
 大東文化大は最後は2位までやってきたが、このチームはいつもどこかでボーンヘッドをやらかしてしまう。今回も前半で遅れをとって流れにのりそこなった。力のあるチームだが、同じ失敗を繰り返していては、優勝のチャンスが遠のいてゆく。今回は最後まで優勝争いにもからめなかった。そういう意味で完敗である。
 大東とは逆に3位の全日本選抜は前半で完全にリズムに乗ってしまった。力のあるランナーを選りすぐったチームゆえに、額面通りの力を発揮すれば、ここまでやれる。
 立命館大は最後は4位に終わったが、中盤ではトップに立ち、名城ときわどくトップ争いを演じていた。じわっと復活の気配をかんじさせてくれた。
 大健闘は5位の城西大である。全日本での健闘も光っているが、今回も好位をきっぷして全日本の5位がフロックではなったことを印象づけた。最後は立命館ときわどく4位をあらそっていたのをみると、確実にチーム力は強化されている。次のシーズンは上位チームとっても驚異の存在になるだろう。
 富士山駅伝とよばれるこの「全日本大学女子選抜駅伝」、今回で7回目だが、いまや年末の風物詩となった。これがおわると、今年もゆっくり暮れてゆく。いよいよ正月か……という気分になるようだ。


◇ 日時 2019年 12月30日(月) 午前10時00分 スタート
◇ コース:冨士・富士宮市
 富士山本宮浅間大社~富士総合運動公園陸上競技場 7区間 43.4㎞
◇ 天候:(午前10時)小雨 気温:08.0℃ 湿度:86% 風:北0.1m
◇名城大学(荒井優奈、高松智美ムセンビ、井上華南、山本有真、加世田梨花、小林成美、和田有菜)
◇公式サイト:https://www.fujisan-joshiekiden.jp/
◇結果:https://www.fujisan-joshiekiden.jp/press/result.pdf