「入ってきたらいいのに」
男がかえってからしばらく、ヨンは細木のそばでたたずんだままでいた。
ときに鬼剣の柄をみつめ、巻かれた額あてを撫でた。
「さっきからそこにいたの、わかってたけどどうしたの?」
ウンスがヨンのそばに立ち、袖を引く。
部屋に入って、というように。
「どうぞ。来てくれて嬉しいわ」
引かれるままに、部屋に入る。誰かが見たら、噂が立つだろう。
困るのは、この人なのに。
ウンスは気にするふうもなく、先刻の茶器をかたしている。
目で追っていると視線が合った。
「なんだかいつもと違うわね。憂い事でも?疲れてる?」
「なにも、ございません」
それでもウンスが額に手をあてようとして、ヨンはとっさに手首を掴んだ。
引き寄せて一寸、刻がとまる。
「・・・くだんの文官の男がイムジャのもとに参ったときき、うかがいました」
「あぁ。心配してくれたのね、なにかあるんじゃないかって」
「無体な真似をするのではないかと、」
「ありがとう」
素直な謝に、戸惑う。柔らかな笑みがヨンに向けられていた。
「じゃぁ、少し外にでない?歩きたいわ」
***
並んで歩いて良いものか、いささかの躊躇がヨンの歩みをウンスから遠ざけている。
数歩前をあるくウンスの、亜麻色の髪が揺れていた。
さらってきた時はもっと赤い色だったことをおぼえている。徐々に地上に染まり、髪色も変化してくことに瞠目した。
まさしく、天人だと。
「ここらへんで、座ろうか」
「は?」
「そこ。欄干に座ろう。風も気持ちいいし、あんまり日差しも強くないから楽ね」
よいしょ、とウンスは欄干に腰かけヨンを手招きする。
「・・・さっき、あの文官さん、焚きつけちゃったのよね」
ヨンがゆっくりとウンスの隣へと、欄干の縁に身を預けた。
鬼剣の鐺が橋の敷石にあたると下緒が震える。
「聞いてたんでしょ?あれで良かったのかなぁって悩んでる」
ウンスは空を見ていた。
「忘れることはない、って辛いな」
あの男と娘、どちらが、だろう。
気掛かりそうに、ヨンに笑んだ顔にはため息がみえる。
「ね?」
たずねてみたいことが、ある。どうしても。
「イムジャがその娘でしたら、どうなさる。「落としてみよ」とおっしゃっておいででした」
ウンスの顔から、目が離せない。
(俺はどんな顔をしている、いま)
あの男のように、こうような目をしているのだろうか。
「私だったら、か。・・・そういう男の人をすごく好きになったら、そうね、きっと、・・・あやまるだろうな」
詫び。
「男の人の亡くなった奥様や恋人に。あなたのいるべき場所に、私がいてごめんなさいって。微笑みをくれたとき、抱かれたとき。頭をよぎる気がする」
返す言葉が、みつからない。ヨンの目に、巻き付けたメヒの額あてがうつった。
メヒのことを、ウンスに知られたくない。そんな浅ましいことを浮かべる日がくるとはおもわなかった。
けれど、いつかは知るのだろう。
苦しめるくらいなら、恋心は捨てよう。得意なはずだ、心を消すのは。
「チェ・ヨンさん?」
名を呼ばれただけで、胸が高鳴る。
「でも、好きになっちゃったら仕方ないよね?それが恋だもの」
その幾日か後。
ヨンは鬼剣の柄から、額あてをはずした。
*************
※ この後に《赤月https://ameblo.jp/eka-ponpoko/entry-12407259326.html》へ続きます。
✿puyonの呟き✿
傾慕への「いいね」「コメント」ありがとうございます。
とってもありがたく、嬉しいです^^
いつも幸せです。
・・・ちまたで噂になっておりますが、Netflixさん。シンイが配信終了なんですね。
いや。いいんですよ?PCのなかにシンイ入ってるのでみれるんですよ?困んないんですけど、・・ラクだったのに。
リモコンひとつでみられたラクさが、なくなっちゃうんですね・・。
しかし、次から次へと新しいドラマが配信されるなか、『十年一昔』のドラマをずっと配信してくれていたことに感謝もしてます。
ありがとうございました。
さて。puyonは制服着てる男には堕ちず、スーツを着た男に堕ちる女です。
とくにジレ(スーツベスト)を着ている(スタイルいい)男は、まずい。
それは十代からはじまり、現在にいたる。・・・なぜだろう、自分が怖い。
puyon父もジレを着る人だったので、父ですらもカッコいいと思っていた。
puyon祖父も(モノクロ)写真をみるとジレを着ているので、惚れる。
黒髪・黒い瞳・ジレ。・・前世でなんかあったんだろうか。
んで。
ポール&ジョーのリップで『紅い月』という名のリップがあるのをご存じでしょうか?
puyon、そのネーミングのためだけに、数年前、購入しました。(←ここまでくるとどうなの?)
たしか、No.205だったと思う。
真っ赤かと思いきや、そうでもなくて使いやすいです。


