入社して初の仕事は、先輩社員と同行することだった。
『おい、行くぞ!』そう呼び掛けられ、軽ワゴンの助手席に乗り込んだ。
六本木通りを抜け、高輪方面へ
魚欄坂下を越え、坂を登ったところで左に寄せ、車は路上駐車
その頃は、それが当たり前だった。
道の反対にある建物に入る。煉瓦造りのビルだった。
日本新党本部 国政選挙で勝利し、一躍脚光を浴び、時の政党となった。総理大臣まで輩出したのである。
事務所内は所狭しと誰もが嬉々として働いていた。
これからこの日本を背負って立つ使命感にみなぎっていた。
先輩社員が社名を名乗り、事務所内に入る。
後を追うようにこちらも続く。
当時は今と違い、人の出入りが自由だった。
担当者から矢継ぎ早に要件が飛んできた。
必死にメモをとる先輩、こちらもただ立っているわけには行かず、わからないながらもノートに書いた。
ただ、細かい所はわからなくても、この先この政党がどうなるか、先輩はどういう道を歩むか、会社はどうなるか、すべてわかっていた。
なぜなら彼は、四半世紀後から来たからである。