夢のタイムマシン、ひとつだけ、行きたい時代に行かせてやると問われたら、今は、あの日かな?
父と母が出会い、私がこの世に生まれたのだが、その出会う、1日前のその日を覗いてみたい。
それは、1960年、自分が生を受ける2年前のことだ。場所は福島県
郡山から鈍行(各駅停車)に乗り換えてひとつめの駅 安積永盛
そこに、東京から出張に来ている男がいた。
そう、後に私の父となる人です。
彼はその頃、水道工事を請け負う工務店に勤めていた。ある大学がそこにあり、その工事担当として派遣されてきたのだ。
宿泊場所は、駅の近くの小さな旅館 その隣に饅頭屋があり、そこの三女が後に私の母になる美代が住んでいた。
私は、二人が出会う前日の旅館前に降り立った。
時間は夜9時すぎ、
『ついに来たぞ‼』
そう呟いて、旅館の受付を尋ねた
『すみません、こちらに工藤知宏という人が泊まってると思うのですが、どちらの部屋ですか?』
当時は今のように、個人情報もない時代だ。
すぐに教えてくれた。
階段を上がり、案内された部屋の前にきた。
トントン!
ドアをノック、『はい!』ドアの向こうから声がした。
父だ!間違いない!
扉が開き、立っていたのは、アルバムでみたことがある若い頃の父だった。
まだ若い、、、おそらく、22歳くらいだろう。こちらは、当時の父より30も上だ。
『誰ですか?』
わからないのも当たり前だ。あなたの息子ですなどと、言えるわけもない。
『あ、あの~、』
『あの~、今、困ってませんか?』
立っている男は物憂げな表情を浮かべ、怪しい人間でも見るように、『何が?』
私は若い父に会った興奮が押さえきれず、一気に捲し立てた。
『あの~、聞いて驚かないでください。あなたは、明日、東京へ帰らなければならないのに、電車賃がないんじゃありませんか?』
すると父が、『どうしてそれを?』
私が続ける『明日、隣の饅頭屋さんへ、お金を借りようと考えてますね!』
『な、なぜそれを? 会社の人?』
…今日は、ここまでです。続きはまたかきます!お楽しみに~✴