脳には脳関門があるため、TKI以外の抗がん剤については脳内に移行しにくく、効きにくいと聞きます。
なのですが、本当か?という疑問もあります。

肺癌診療ガイドラインを見ると、脳転移に対する薬物療法の効果がまとめられています。


この中で、分子標的薬のTKIに加えて、細胞傷害性抗癌薬、血管新生阻害薬、免疫チェックポイント阻害薬についても効果が示されていて、ある程度効いているようにも見えます。

これらの薬は脳関門は通らないと考えられてますが、例えば、シスプラチン+アリムタ療法の頭蓋内奏効は、奏効率が41.9%、PFSが5.7か月とあり、頭蓋内以外(脳転移がない場合)の数字と遜色ないように見えます。

どう考えたらいいのか?と疑問に思っていたのですが、ある文献を読んで大体理解しました。

井内俊彦ほか「分子標的薬時代における転移性脳腫瘍に対する治療戦略」


脳転移は、血管を流れるがん細胞が脳内の細動脈に補足されて、脳関門を破壊して、血管外に移動して成立するとのこと。
その後、血管周囲を取り囲むように移動し血管を捕捉しつつ成長し、脳関門を破壊するVEGFを分泌して新生血管を引き込みながら成長するとのこと。

また、CTやMRIでは造影剤の投与がされますが、この造影剤は本来は脳関門を通過できないそうです。
しかし、脳の腫瘍部位では脳関門が破壊されているため造影剤が漏出し、造影病変として画像上描出されるとのこと。

見方を変えれば、造影病変として写っているがん細胞には、抗がん剤が到着するということを意味します。

なので、必要以上に悲観的になることはないのかも、と今では考えています。